虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

2017-01-01から1年間の記事一覧

ロアルド・ダールのミステリー小説:生の深淵

私のブログ友であるcenecioさんに推薦してもらった、ロアルド・ダール(Roald Dahl:1916−1990、元イギリス空軍パイロット)のミステリー短篇集に目を通してみました。「あなたに似た人:SOMEONE LIKU YOU」(田村隆一・訳:ハヤカワ・ミステリ文庫…

『電力改革の争点――原発保護か脱原発か』(熊本一規):書評

これまで私は東大都市工学科の先輩、熊本一規氏(明治学院大学教授)に、4冊の著作を贈呈され、書評を拙ブログにエントリーしてきましたが、最近のこの本については、今年5月に贈呈して頂いたのですが、諸般の事情からつい最近読了しました。不義理でした…

心太(ところてん)、イリコ:老子が推奨(?)するオヤツ

心太(←難読漢字)はシンプルな食べ物です。海草の天草(てんぐさ)を煮詰めて固め、乾燥したものが「寒天」であり、それを再びゲル状にして、型(シリンダー)に入れ、入り口からピストンを突きこむと、寒天が切られて麺状になって出口から出てきます。それ…

AIに仕事を奪われる職業〜これぞディストピア

以下は、AI技術が進歩すると消えていくであろう職業のリストです。 オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン博士によると、 「AI普及で消える職業」は、以下だそうです。 ・銀行の融資担当者 ・スポーツの審判 ・不動産ブローカー ・レストランの案内…

陶芸なんて碌なものではない!:その根拠を示そう。

まず、こんなお話から 御手打? ある日伊達政宗は家宝の名器、天目茶碗をあやうく取り落としてハッと冷汗をかいた。ところが彼は取りとめた茶碗をしばらく眺めていたが、やがてわざわざ庭石にほうりつけて「たかが小茶碗のくせに、わしの心臓をどきつかせる…

キヌアとアマランサス〜スーパー穀物と呼ばれて

この2つの作物は、ここ数年、栄養価が高いと評判で、ネット上での言及も多くなっています。実は10数年前、私はこれらを栽培したことがあります。どっちも難しかったですね。キヌアは標高3000mの高地で栽培されるものであり、海抜数十メートルでは無…

夏目漱石と森鴎外:弟子の育たぬ人、育つ人(あるコトワザ)

http://www.watto.nagoya/entry/2016/12/09/140000 :10大弟子+紅一点という法則または系譜 ( id:watto )・・・という優れたエントリーがあるのに刺激を受け、私も今回のエントリーをしてみました。何人かの「対:ペアー」になる人をピックアップしたいと…

凄い家族の持ち主たち:湯川秀樹からバッハまで(山脈と独立峰)

物理学者の湯川秀樹という人は、中間子理論によって、ノーベル物理学賞を受賞したので有名ですが、漢学者の家に生まれた彼には、家族に優れた学者が多く、以下のような家族がいます:兄:芳樹(冶金学者・東大教授)、貝塚茂樹(東洋史学者・京大名誉教授、…

三浦一郎の「世界史こぼれ話」〜これぞ教養の源泉

私は大学には理科系として入ったのですが、入学間もなく理科系というものに疑義を感じ、文科系、人文系の教養の足りなさを実感していました。その分野に詳しくなる近道として、私が道しるべにしたのが、三浦一郎さんの『世界史こぼれ話』でした。貪るように…

クスっと笑える重たい話:ハシェクの短編小説〜カフカとの類似性?

ブログ友のcenecioさんが言及されていた「兵士シュヴェイクの冒険」を図書館で探したところ、蔵書になかったので、同じ作者の短編集『不埒な人たち――ハシェク風刺短編集』 (飯島周:平凡社)を借りてきて読んでみました。 @劈頭の作品は「正真正銘の見世物…

水素水には効果があるか?:プラシーボ効果だと思うぞ。

最近よく耳にする「水素水」。これを配した健康飲料が持て囃されていることに反感を持ち、少々調べてみました。まずはwikipedia の記述から。(水素水)水素水(すいそすい)は、水素分子のガスを溶解させた水であり、無味、無臭、無色である。水素は水にご…

萬鉄五郎(よろずてつごろう):くすんだ色使いのフォーヴィスム

ここに挙げた絵は、萬鉄五郎の代表作で、よく中学校の美術のテキストに採用される「もたれて立つ人」です。一見、キュービスムの絵のように思えますが、実際そうです。 萬 鉄五郎(よろず てつごろう、萬 鐵五郎、1885年11月17日 - 1927年5月1日)は大正〜昭…

冷酷な法〜諸子百家の一つ・法家の問題点(商鞅の悲哀)

以下の言葉と解説は、諸橋轍次(もろはしてつじ)さんの大著『中国古典名言事典』(講談社)の、法家(ほうか)の代表格の韓非(かんぴ)の主著『韓非子』の一節です。 官を侵すの害は、寒きよりも甚(はなは)だし。 (二柄) 職掌を越えて、ほかの領域にま…

滝廉太郎・山田耕筰・中山晋平:近代日本音楽の旗手達

滝廉太郎と言えば、「花」「鳩ぽっぽ」「荒城の月」で知られる夭折の作曲家で、1879−1903、23歳で結核で落命した不運の人でした。彼はドイツへの音楽留学中に肺結核の症状が発現し、泣く泣く帰国しました。案外作品は残っておらず、30曲あまりの…

断食1週間&断眠1週間やってみた:「ひきこもり」からの生還

ご存知のように、私は映画というメディアへのリテラシーが低いので、SPYBOYさんが熱く語る今回の2作品の凄さ、素晴らしさは、書きっぷりから伝わるくらいです。 ただ、心を閉ざして引きこもりになるという現象は、私は大学初年度、周囲があまりに優秀な人だ…

正露丸と木クレオソート:案外頼りになる止瀉薬

フェノール→ 下痢をした時、また下痢の予防に効果のある正露丸。私もよくお世話になりますが、その主要成分であるクレオソート、相当強烈な化学物質かと思い調べて見ました。なお、今回ブログは http://d.hatena.ne.jp/iirei/20170915#1505459334 :ゲンノシ…

正露丸と木クレオソート:案外頼りになる止瀉薬

硫黄島からの手紙:戦争の狂気〜イーストウッドの映画

かれこれ10数年前、アメリカの俳優&映画監督:クリント・イーストウッドが、日米の小笠原諸島にある硫黄島における激戦の模様を、アメリカ側と日本側の両方の立場から2本の映画を製作しました。この映画「硫黄島からの手紙」は、日本側から見た戦闘の記…

ゲンノショウコ(現の証拠):下痢止めに卓効あり

ゲンノショウコ→ 私はここ数年、朝の下痢に悩まされてきました。仕事に行く前の8時から9時にかけて下痢になるのですね。それで、ヨーグルト、新ビオフェルミンS、消化器科でもらったミヤBM錠、コロネル錠、どれをとっても下痢を抑えることが出来ませんでし…

ゲンノショウコ(現の証拠):下痢止めに卓効あり

武者小路実篤の「愛と死」:一つの残酷な悲恋物語

「人生に恋が与えられていることは個人にとって幸福なことか不幸なことか知らない。」(11節冒頭の文)こう書く男がこの小説の主人公、村岡。彼の小説家仲間に野々村という人がいて、野々村を尊敬して通ううちに野々村の妹・夏子と出合い、彼女と相思相愛…

カレーライス:その具材の絶妙さ(ニン・タマ・ジャガ・豚肉)

私は以前のブログで、複数回カレーについて取り上げていますが、今日もその一環です。@カレーライス 弟作。我が家では、ハウス・ジャワカレーのスパイシーブレンド(辛め)を使います。唐辛子が多めに配合されています。唐辛子は、ビタミンB1の乾燥品の含…

あどけない・あっけない〜「@@ない」言葉の語源

日常生活上、「あどけない」、「あっけない」のような、「@@ない」という形容詞に出合うことは結構ありますね。ただ「あどけ」とか「あっけ」など「@@」に当たる言葉の意味はよく解らないものです。本稿ではこれらの言葉について調べてみます。ここに「K…

「風の聖痕」とライトノベル:アニメ化を前提にした小説

私はこれまで、ライトノベル(ラノベ)というものを3つ手に取ってみました。「狼と香辛料」「僕は友達が少ない」「風の聖痕」の3つです。その内、「狼と香辛料」は、何故だかガッツリ読む気にならずほっぽらかし、たぶんほぼ同時に手にした派生的な漫画の…

『腰痛が治るのはどっち?』(書評)〜腰痛の正しい理解は?

私も歳を取ってきて、ここ数年、腰痛、膝痛を感じるようになり、それなりに策を取っていますが、痛いものは痛い!・・・そこで今回は『腰痛が治るのはどっち? 読むだけで、つらい腰痛が改善』(川井太郎:学研)を読んでみました。 先入観を持つのは禁物で…

太陽への呪詛:若き日・ナルシストだった私・スケッチ紀行

私は、なんの疑いもなく数学科を目指し、東京大学理科1類に入学しましたが、数学にかけても、私よりずっと出来る人がたくさんいて、まあ、鼻っ柱をみごとに折られた感じでした。目標を見失いそうになった私は、絵を描いて歩くことに可能性を見出し、三浦半…

ボブ・マーリーと「No woman No cry」:優しさとは何か

1981年にわずか36歳で一生を終えたジャマイカのレゲエ・ミュージシャンのボブ・マーリーはいくつもの(色彩感が横溢した)名曲を残しましたが、今回取り上げるのもそんな名曲の一つです。 ズバリ、恋人や女の子達に別れを告げ、戦いの場に赴く歌です。 …

寒山詩:高僧でもないパシリの寺男の偉大な境地

寒山・拾得→ 寒山と拾得という2人の寺男(寺の雑務を任された人)は、寒山が詩を書くための筆を持ち、拾得が掃除のために箒(ほうき)を持ち、日夜雑務をこなしていますが、その禅的悟りの境地は、非常に高かったとされます。森鴎外の作品にその名もずばり…

寒山詩:高僧でもないパシリの寺男の偉大な境地

光文社古典新訳文庫と望月通陽:面白い表紙

光文社といえば、「カッパブックス」「カッパノベルス」シリーズが思いうかぶように、このシリーズが必ずしもインテリ層の支持を受けていたわけではなく、どちらかと言うと、通俗的な作品群として認識されていたという感がありました。その光文社が発行する…