虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

太陽への呪詛:若き日・ナルシストだった私・スケッチ紀行

私は、なんの疑いもなく数学科を目指し、東京大学理科1類に入学しましたが、数学にかけても、私よりずっと出来る人がたくさんいて、まあ、鼻っ柱をみごとに折られた感じでした。目標を見失いそうになった私は、絵を描いて歩くことに可能性を見出し、三浦半島、房総半島、秩父などに出掛けました。今回挙げる絵は、マージャン仲間だった文学青年のS君たちの近くにある人造の湖・・・多摩湖にスケッチをしに行って描いた水彩画で「太陽への呪詛(じゅそ:嫌悪・のろい)」という絵です。制作年月日は1978年11月19日とあり、それは大学に入学して混乱していた頃に一致します。


この題名に興味を持ったS君には、どんな絵か、観たいものだと言われて、この絵を見せると、やや期待外れ、と言った表情だったので、説明しました。それは、この絵の中央右よりの小屋のようなものに向って、遠近法が施されていて、一様に太陽から逃げる・離れるというような構図だということです。太陽の高みではなく大地の深奥に至る=下に赴く、という感じの絵だったのです。もっとも、当時の私が遠近法を使いこなせていたかは心もとないです。


「太陽への呪詛」原画



太陽とは何か?それは当時の私にとっては、あんなに憧れた数学科、すなわち太陽にはとても手が届かないという客観的事実に対し、言わば「対象の価値を下げること」、イソップ物語の「sour grapesサワー・グレイプス:酸っぱい葡萄」のようだったものかも知れません。ただ、太陽をそのまま手に入れようとする行為は身を危なくするようにも、今となっては思います。


さて、今回は、上に挙げた原画の他に、画像処理をした絵も挙げることにします。


「太陽への呪詛」画像処理後



原画のほうは、そのインパクトが足りずに、S君が感じたように絵の第一印象が悪かったように考えます。まあ、焦点がはっきりしない水彩画です。どこにも「太陽」、「太陽を裸眼で見る無謀」、「太陽を掴もうとする野蛮な行為」などが読取れないですね。その原画を画像処理したあとでは、むしろ、当時の私の「狂気」が見事に再現されたように思います。絵の中の各要素がお互い、軋み合い、無秩序な自己主張をしているのです。絵全体が太陽に火を放たれ、発狂していると言えますね。


前述したように、この絵も、進路について混乱していた時、何かを求めて苦吟して描いていたわけですね。これもやはりS君の影響で、フランス語を学ぼうという意欲が湧いてきて、第二外国語がドイツ語だったのに、ご大層にも第三外国語でフランス語を学び、フランス文学科に進もうという積もりになり、一応大学入学時の混乱にはピリオドが打たれたのですね。(あとで再び混乱するのですが、「それはまた別のお話です」。)



今日のひと言:私は春休みの1ヶ月で、集中的にフランス語を学習し、アナトール・フランスの「ユダヤの総督」という作品を原書で読めるまでになりました。あと、サークルで「古典ギター愛好会」に入会しましたが、ギターは一向に上達せず、むしろ学園祭の立て看を描くことでお茶を濁すといった感じでしたが、絵を描くならむしろ「漫画クラブ」のほうが向いていると考え、入会しました。ここで混乱があったのです・・・自画像もよく描いていた私はまぎれもなくナルシストだったです。描くマンガには女の子が登場しないことを指摘されたこともありますが、意に介さず、でした。そうしているうちに初めて大人の女性と恋に落ちたのです。




神々は渇く (岩波文庫 赤 543-3)

神々は渇く (岩波文庫 赤 543-3)

異邦人 (新潮文庫)

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呪詛 (角川書店単行本)

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呪術探究〈巻の2〉呪詛返し

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今日の一品



金時草とナスの酢の物



金時草奄美大島あたりが原産の植物、キク科。酢に合わせると抜群の味です。これを軽く茹で、短冊切りにしてレンジで加熱して冷やしたナスとともに、醤油+梅サワー漬けで和えました。納得の一品。

http://d.hatena.ne.jp/iirei/20091007#1254919782

 :金時草はいかがですか?

 (2017.08.05)



@カツオのタタキのオレガノ風味



タレに、製品に付いているタレ、醤油、スリショウガ、オレガノを入れて、一切れづつカツオの切り身を漬けて食べました。オレガノも合うみたいです、

 (2017・08.06)



@擂りエゴマ入り卵焼き



弟作。最近その健康的作用により注目されているエゴマ(荏胡麻)。スーパーで見たので買ってきて、卵焼きに入れました。ちょっと味が変わった?擂り(すり)ごまと同様に使えます。

 (2017.08.07)



クサギと厚揚げ炒め



クサギは葉が食べられる香木で、これまでも取り上げています。今回は厚揚げと炒めて食べて見ました。ほかにクコの実、干しシイタケも入れました。なかなかマッチしています:クサギの苦さを厚揚げの甘さが緩衝するのです。


http://d.hatena.ne.jp/iirei/20130524#1369369540 (クサギの前処理について)

 (2017.08.06)





  
今日の一句



朝顔
楽譜書きつつ
踊りけり


 (2017.08.05)