虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

光文社古典新訳文庫と望月通陽:面白い表紙

光文社といえば、「カッパブックス」「カッパノベルス」シリーズが思いうかぶように、このシリーズが必ずしもインテリ層の支持を受けていたわけではなく、どちらかと言うと、通俗的な作品群として認識されていたという感がありました。その光文社が発行する世界の名著、わけても小説叢書であるという光文社古典新訳文庫、あまり光文社の出版物であるという意識を持たずに、これまでの拙ブログではチェーホフの「桜の園」などもこの叢書から選んで読んだことがありました。


その出来栄えは確かに通俗的ではありません。立派な叢書だと思います。それから、ここが重要なのですが、この文庫本の表紙絵を一手に請け負う「望月通陽:もちづき・みちあき」さんの絵が「良い味を出して」います。短いながらもwikiから引用すると


望月 通陽(もちづき みちあき、1953年―)は、日本の美術家、染色家、造形作家、ブックデザイナー。

静岡市出身。県立静岡工業高校工藝科卒。染色、陶芸、ガラス絵、紙版画、リトグラフ、木彫、ブロンズなど多様な手法を用いて独自の作品世界を築いている。「宮本輝全集(全14巻)」など装幀も多く手がけ、1995年講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。画文集「道に降りた散歩家」で2001年ボローニャ国際児童図書賞次席受賞。作品集に『円周の羊』などがある。


そんな表紙絵の一例として、以下の本は如何でしょうか。サン=テグジュペリの「人間の大地」の表紙です。なにやら一筆書きでえいや!と一気に描いたようですが、この人物はたしかに「大地」を抑制・制御しているかのように見え、さあ、どんなお話なのかと読む者の想像力に訴えかけるものがあります。これが岩波文庫では、どの作品の表紙も似たり寄ったりで、とくに魅力を感じないとも思われます。まあ、望月さんの絵は面白いです。この絵について、なにやら数学のトポロジー位相幾何学)のメビウスの帯との類似性をも想起されます。


人間の大地 (光文社古典新訳文庫)

人間の大地 (光文社古典新訳文庫)


光文社古典新訳文庫について。(wiki


光文社古典新訳文庫(こうぶんしゃこてんしんやくぶんこ)は、光文社が発行している文庫本レーベル。2006年9月創刊。キャッチコピーは「いま、息をしている言葉で」。


文学作品から哲学書まで、古典と呼ばれる作品を現代の読者にも読みやすい日本語で新訳するのがコンセプトの文庫シリーズ。表紙のイラストはすべて望月通陽。装丁は作品の言語圏別に5色に分類されている(青色はフランス語・イタリア語圏、赤色はロシア語圏、茶色はドイツ語圏、緑色は英語圏、桃色はその他、スペイン語圏・近代中国語・古典日本語・古代ギリシャ語・ポルトガル語圏)。


2008年にはドストエフスキーカラマーゾフの兄弟』(亀山郁夫訳)の売上が全5巻合わせて100万部を突破したと発表され、社会現象にもなった。一方で翻訳に対しては批判もあり、野崎歓訳『赤と黒』は編集部も交えた論議を呼んだ(野崎歓#『赤と黒』誤訳論争)。




幾つかの作品と表紙を列挙してみます。



黒猫 / モルグ街の殺人

黒猫/モルグ街の殺人 (光文社古典新訳文庫)

黒猫/モルグ街の殺人 (光文社古典新訳文庫)


変身 / 掟の前で 他2編

変身,掟の前で 他2編 (光文社古典新訳文庫 Aカ 1-1)

変身,掟の前で 他2編 (光文社古典新訳文庫 Aカ 1-1)

アンナ・カレーニナ

故郷 / 阿Q正伝

故郷/阿Q正伝 (光文社古典新訳文庫)

故郷/阿Q正伝 (光文社古典新訳文庫)



言語圏と表紙絵の色、たしかに一致していましたか?



今日のひと言:群馬県高崎市に本部を置く「文真堂」は、創業時、某スーパーの一角を借りていたのですが、あっさりそのスーパーを追い出され、一からやり直し、低年齢層に受けそうな漫画とかを置いて売り上げを伸ばしました、そして新展開として、専門書をこそ大いに扱う「ブックマンズ・アカデミー」という店舗を県内に2箇所設け、迂遠だったけど、群馬県第一級の書店に成長しました。この書店の姿と光文社の姿が二重写しになります。





今日の一品


@生ゆばの刺身



湯葉(ゆば)は、大豆製品の一つで、豆乳を加熱し、表面に浮いてきた膜を掬い取って作ります。今回食べたのは、一見豆腐に見えますが、層をなして湯葉が入っていました。美味しくて1パック200円前後というのが良いです。

 (2017.07.17)



バイアムのゴマ和え



これまでも取り上げてきた夏の貴重な葉物野菜:バイアム。淡泊な味が良い栄養野菜です。私は今年、昨年タキイ種苗から買った「イロコイナ:色恋菜=色濃菜」という種類を採取して、今年蒔きましたが、よく育っています。


http://d.hatena.ne.jp/iirei/20160612#1465701611

  :私がこれまで作った、変わった野菜:イロイロあるぞ。(参考過去ログ)

 (2017.07.20)



@マーボーナス



普通豆腐で作る麻婆豆腐のタレを使って、ナスを調理しました。ナスのナス紺が褪せずに、美しいです。(ナス6本100円)で入手したナスを大いに食べるための一品。3本使い、あとは別の料理にします。

 (2017.07.21)



@ゴーヤとナスのチャンプルー


マーボー豆腐で、豆腐とナスを入れ替えても、一品になるのを踏まえ、ゴーヤチャンプルーに入れる豆腐をナスに置き換えてみました。オリーブオイルとゴマ油をフライパンに敷き、ニンニク・七味唐辛子を投入、ゴーヤとナスを炒め、ナンプラーコリアンダーで味つけしました。ゴーヤの苦さをナスの甘さがマイルドにしていました、

 (2017.07.22)





今日の詩


@雲



「私は雲を愛する・・・ほら、あそこを・・・あそこを・・・
過ぎてゆく雲・・・素晴らしい雲を!」


確かに雲は変幻自在
見つめていると、時間を忘れるような雲。


ただ今日は雷雲が黒く輝く、
威圧的な空模様。


私はボードレールほどは孤独でないので
雲を友達と見なす傾向はないのだが・・・

 


冒頭のカッコ内は、「ボードレール全集:阿部良雄訳:ちくま文庫散文詩パリの憂鬱」:異邦人から引用しました。

(2017.07.22)