虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

三浦一郎の「世界史こぼれ話」〜これぞ教養の源泉

私は大学には理科系として入ったのですが、入学間もなく理科系というものに疑義を感じ、文科系、人文系の教養の足りなさを実感していました。その分野に詳しくなる近道として、私が道しるべにしたのが、三浦一郎さんの『世界史こぼれ話』でした。貪るように読んだものです。これは角川文庫のコレクションであり、全部で8巻くらいあったと記憶しています。今手元にその1巻目がありますので、引用してみましょう。


喰わされた


ルネサンス当時の食卓では骨などは足もとに捨ててよいことになっていた。「神曲」を書いた詩人のダンテを食事に招いたある男が、詩人の足もとに自分の食べかすもみな足でそっと押しやって置いた。そして食事が終わった時ダンテの足もとを指していった。
「詩人にしては健啖ですな」
詩人はあわてず主人の足もとを指していった。
「なにそれほどでもありませんよ。貴方のように骨まで食べません。」

 P5 ここに「健啖:けんたん」とは、大食らいのことです。当意即妙なダンテの面目躍如です。一時期、このような境地を「非真面目」「水平思考」とか呼びました。


ここで三浦一郎さんのプロフィールをwikiから。

三浦 一郎(みうら いちろう、1914年6月6日 - 2006年3月13日)は、日本の西洋史学者、エッセイスト、上智大学名誉教授。

東京帝国大学西洋史卒業、戦後茨城大学助教授、教授、1970年上智大学教授、1980年特別待遇教授、1985年退職。古代西洋史を専門とするが、『世界史こぼれ話』が角川文庫に収められて人気を博した。

著書
@古代文化の驚異 偕成社 1955(新百科)
@世界史こぼれ話 正続 学生社新書 1955-1956 のち角川文庫
@クリオの微笑 はみだした世界史 学生社新書 1962
@ユーモア人生抄 社会思想社 1965(現代教養文庫
@年号記憶術 世界史を俳句で覚える本 光文社 1968(カッパ・ブックス
ギリシア人 神話と文明のふるさと さ・え・ら書房 1973(この民族が歩いた道)
@続・ユーモア人生抄 社会思想社 1974(現代教養文庫
@秘められた世界史 情報センター出版局 1979
@世界史のなかの女性たち 社会思想社 1985(現代教養文庫
@西洋の故事・名言ものしり辞典 知っているようで知らない文化の再発見 大和出版 1989
@珍税・奇税世界の税金物語 PHP研究所 1994
@世界史のなかの自分を賢くみせる笑い話 これであなたはその場の主役 PHP研究所 1995
@西洋の故事名言ものしり辞典 PHP文庫 1997

夥しくて、興味が湧くような本のオンパレードですね。共著も多数あります。

もう一つ、この広汎な著作で忘れられない逸話があります。

http://d.hatena.ne.jp/iirei/20160303#1456950507 に書いたのですが

なにやら、彼の主著である「意志と表象としての世界」を書き上げたショーペンハウエル、ちょっと席を外したあと、その原稿を読んで、叫んだのですね。「これは、素晴らしいインスピレーションに導かれて書かれた傑作に違いない、誰だ、こんな文章が書ける天才は!」冗談ではなく、ほんとにそう思って発言したのです・・・凡人では、とても真似できない言行です。この一件を以って、私は彼、ショーペンハウエルが天才だったと断言します。(この逸話は、三浦一郎さんが編集した「世界史こぼれ話」に出ていました。)


何巻目に出ていたかは失念しました。素晴らしい認知症の罹り方かも知れません。(←この表現、ちょっとまずいかも知れませんね。私の父は認知症で亡くなっていますので、認知症患者を茶化すつもりは微塵もありません。)



今日のひと言:当初の狙い通り、このシリーズに付き合うことにより、私は人文的な教養をある程度ですが、自分のものに出来たと思っています。



世界史こぼれ話 1 (角川文庫)

世界史こぼれ話 1 (角川文庫)

世界史おもしろこぼれ話―3時間で歴史ツウになれる本 (知的生きかた文庫)

世界史おもしろこぼれ話―3時間で歴史ツウになれる本 (知的生きかた文庫)





今日の一品


@茹でモヤシ



立派なスプラウト、モヤシ、一袋28円の品が15円で売られていましたので、即買い、エゴマエンダイブとともに茹で、ポン酢を掛けました。

 (2017.11.03)



@鶏モモ肉の塩麹焼き



鶏モモ肉に6時間くらい塩麹をまぶし、レンジでチンしてオレガノで香り付けしました、肉が柔らかくて美味しい。

 (2017.11.04)



@厚揚げと大根のおでん風



手許にあったこの2品を煮こむことにして、コンソメ1個、早煮こんぶ、塩を適量水に加え、保温調理鍋で煮こみます。火から降ろして保温1時間しましたが、まだ味が沁み込んでいなかったので、再び鍋に戻して再加熱、ひと晩置きます。汁そのものは「おでん出汁」の味わいです。

 (2017.11.06)



@牛細切れ肉とニラ炒め



弟作。最近高い牛ステーキ肉はそれほど買えないので、細切れ肉が多くなります。エバラ焼肉のタレに1時間ほど漬け、漬け汁と一緒にコチュジャンと炒め、最後にニラを加えて炒めます。

 (2017.11.07)





今日の詩(散文詩)


@さらば、だるま食堂


いよいよこの日が来た。長年親しんできた大衆食堂、「だるま食堂」が店を畳んだのだ。麺類一式、ご飯もの一式がメニュー。ここ最近、10日ほど連続して休業していたので気に病んでいたのだが、やはり、大将の体の具合が悪化 したのだ。この店、300円の中華そば(ラーメン)が目玉商品で、300円と言えどもチャーシュー、麺は手作りで、「ああ、醤油ラーメンって、こんなに美味しいのだ」と認識させてくれる味だった。昨今の変に手の込んだラーメンに慣れた人にとっては昔ながらの、あえて手を加えないこのラーメンは、多分目から鱗の一品だったと思う。


この店、60年超の歴史があり、それは大将の歴史でもあった。お疲れさま。

 (2017.11.07)





今日の一句


紅も落ち
ひとり佇む
ホウキグサ



以前、この植物の紅葉について書きましたが、色褪せても風格があります。

http://d.hatena.ne.jp/iirei/20170909#1504889402

 (2017.11.04)