虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト:色々な事物を取り上げます。

ロアルド・ダールのミステリー小説:生の深淵

私のブログ友であるcenecioさんに推薦してもらった、ロアルド・ダール(Roald Dahl:1916−1990、元イギリス空軍パイロット)のミステリー短篇集に目を通してみました。「あなたに似た人:SOMEONE LIKU YOU」(田村隆一・訳:ハヤカワ・ミステリ文庫)


実際読んでみると、表題作であろうと思われた「あなたに似た人」は収録されておらず、ほかの15編が選ばれていました。ただ、私は、短篇であれ、それほど読書欲が湧かぬため、その内の3編だけ読んでみました。巻頭からの3作は、ダールの作品でも秀逸らしいので、優先的に読んだわけです。


ここで作者であるロアルド・ダールについてwikiedia より

パイロット
カーディフのランダフ地区にてノルウェー移民の両親のもとに生まれる。シェル石油で働き、タンザニアやカナダにも行ったが、第二次世界大戦が始まってからはイギリス空軍の戦闘機パイロットとして従軍、5機撃墜を公認されエース・パイロットとなっている。1940年9月19日、搭乗していたグロースター・グラディエーター複葉戦闘機がエジプトのマルサ・マトルーフ近郊の砂漠で機位を喪失し不時着、重傷を負うも生還した。しかし、この際に脊髄を負傷した事による後遺症に生涯苦しめられた。後にこの事故はダールが発進前に受けた、誤った飛行ルート指示によるものと判明した。


作家
その後、アフリカでバカ話やパイロット時代の経験を元に小説を書くようになった。作家セシル・スコット・フォレスターが、取材のためにダールの飛行体験についてメモを書くよう依頼したが、ダールは話すより書く方が早いと思ってメモを作った。そのメモ(デビュー作の中の「簡単な任務」)の素晴らしさにそのままダール名義で出版されたことがきっかけでデビュー。1942年にはすでにグレムリンの話を書いていた(これをディズニーが映画化しようとしたが頓挫)。風刺やブラックユーモアに満ちた短編小説や、児童文学で有名。


特に、「奇妙な味」と評されるダールの短編小説は、作家・評論家・翻訳家らへのアンケート結果によるミステリ・マガジン2007年3月号で、ミステリ小説オールタイム・ベストの短編部門第1位に輝いた『南から来た男』の他、『味』、『大人しい兇器』などで、日常的な風景や会話の中に人間の心の奥底に潜む狂気をうかがわせ、高い評価を得た。


007シリーズで有名なイギリス人作家のイアン・フレミングの友人であり、映画『007は二度死ぬ』と『チキ・チキ・バン・バン』の脚本も手がけた。


「おとなしい兇器:Lamb to the Slaughter 」。夫の浮気を嗅ぎつけた妻が、凍ったラム肉のもも肉で夫を殴打して、殺人してしまいます。その時妻は慌てず、また淡々と完全犯罪を目指します。そして彼女の願いは、おそらく達成できそうなところでお話は終わります。ネタバレになるのでこれ以上は書かないことにします。


トリックが中心になるお話なので、例えば妻のこまごまとした感情はオミットされるようなのがちょっと残念です。


「南から来た男:Man from the South 」ダールは「賭博」を好んで取り上げるようです。(巻頭の「味:Taste 」もそうです。)なかでも本作品は、賭博に身を任せて破滅する人間の愚かさを十二分に表現しています。ある老人が、アメリカの水兵相手に賭けを持ちかけます。それは水兵の持つライターでタバコに火が付くかを賭け、もし付いたら、老人の持つキャデラックがもらえ、もし付かなかったら、水兵の「小指」を切り取る・・・これにはびっくりして背筋が寒くなりました。なんとも呆れた老人です。さて、水兵、老人の運命は如何。これもネタバレ回避します。



今日のひと言:現在、SF小説とかミステリー小説はどのくらい読まれているのでしょう。ファンタジー小説のように「緩い」作品は今全盛のような気もします。

なお、飛行機乗りの前歴を持ち、作家として成功する人は案外いますね。この項のダール、フレデリック・フォーサイスサン=テグジュペリ(この人は現役パイロット)などなど。本来頭脳明晰でなければパイロットになれないでしょうし、小説家になるための素養もあったのでしょう。




あなたに似た人 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 22-1))

あなたに似た人 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 22-1))

サキ短編集 (新潮文庫)

サキ短編集 (新潮文庫)

戦闘機パイロットの世界――“元F-2テストパイロット

戦闘機パイロットの世界――“元F-2テストパイロット"が語る戦闘機論

@サキを推薦したのは、サキも「奇妙な味」の作家と呼ばれるからです。@




今日の一品


@黒白赤炒め



キクラゲ(黒)、ハクサイ(白)、クコの実(赤)を炒めるのでこの料理に命名
水で戻したキクラゲを一口サイズに切り分け、ハクサイも同じく切り分け、ゴマ油を熱したフライパンに投入、仕上げにクコの実を入れポン酢で味を整えました。目も舌も喜ぶ一品。

 (2017.12.21)



@炒り落花生の炊き込みご飯



普通の炒り豆を吸水させてふやかしたものを米と炊きます。甘皮から幾分赤い色素が出てきて、色あいも良い。落花生(ピーナッツ)も炒った状態を持ち合わせ、ヒヨコマメ、大豆の炊き込みご飯とはまた違った風味です。

 (2017.12.21)



@チャービル入り卵焼き



密やかに室内で栽培しているハーブ、チャービルを間引いて刻み、卵焼きに入れました。フランスで好まれるハーブで、フェンネルに香りが似ています。ただ繊細なので、さほどに香りは付きませんでした。


チャービル


 (2017.12.22)



@モーカのアヒージョ



モーカはサメの肉。古くなるとアンモニア臭くなるため、扱いは難しい。それでクミンシード、ニンニク、唐辛子を大目に使って矯臭しました。フライパンにオリーブオイルを敷き、クミンをまず炒め(スタータースパイス)、切ったモーカを入れ、塩をして、ニンニク、唐辛子を投入、さらにニンニクに焦げ目がつくくらい炒めて完成。

 (2017.12.23)





今日の詩

@タエコの昇天


2017年12月19日20時30分、
我が家のタエコ(イヌ)が息を引き取った。
老齢による認知症がもとで、
12月に入って急速に衰えた末のこと。


思えば3年前の勤労感謝の日
散歩中に割り箸を食べ、
口中血だらけになったのが発端。
動物病院に連れて行き、念のため血液検査をした所、
重篤な肝機能障害が発見され、
高価な薬を与え続けた。


そして2017年秋には認知症が表に出、
散歩中にしていたウンチを
自宅の庭にするようになり、
日々、それこそ日ごとに運動機能が衰えて行った。


12月09日には、庭で前脚を伸ばしたまま
痙攣していたので急遽動物病院に。
脳の血流を良くする薬が注射され、
幾分か元気になったように見えた。


それから3回ほど注射をしたが
それこそカンフル剤で、
症状のトータルな改善は見られなかった。
幼犬の時入れていた部屋の中で、
寒くはないようにして安静にさせていた。
ときたま鳴くしゃがれ声が哀れを誘った。


だんだん餌が食べられなくなり、
水も飲めず、目も見えなくなり
糞尿の垂れ流しもしなくなった。
そして辛うじて動いていた腹がその運動を止め、
タエコは天に召された。




幼犬のときのタエコ


 (2017.12.19)