虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

2016-01-01から1年間の記事一覧

歯科と一般医科の違いはどんな点か?やはり混合診療か?

明治政府は医療の近代化を進めていた。明治7年(1875)に医制を発布、以後医師となる者には開業医免許の試験を行うことになり、英之助もこの試験を受けることとなった。当時は「歯科」とは呼ばずに「口中科」「口科」、あるいは入れ歯だけを扱った「入…

安井曽太郎(画家):お菓子のように甘そうで堅牢な建物

私が大学に入学し、日本人の画家で、初めて素晴らしいと思ったのは、安井曽太郎で、彼の「承徳の喇嘛廟(らまびょう):1937」を見た時からでした。背景はほとんど緑色なのに、廟にはたっぷりとピンク色の彩色を施し、ただ廟の真ん中は再び緑が支配的な…

森田療法の驚異:「あるがまま」の実践

私の職場の同僚で、精神的に不安定な人が多い中、極めて安定している人がいて、その様子に感じるものがありましたので、お話をしたところ、彼には波乱の過去があり、なんでも大学生のころ、付き合いでやっていた麻雀の最中に、牌がどうしても切れなくなり、…

アルチンボルド:「だまし絵」の先駆者

ルネサンス期以降のマニエリズム画の時代にイタリアで活躍したジュゼッペ・アルチンボルド(1527−1593)は、いわゆる「錯視」を絵の中に取り入れた先駆者として名高い画家です。特に、野菜・植物を組み合わせてそれを人間の肖像画にした作品が、特に有名です…

聊斎志異(りょうさいしい):中国清代の怪奇小説集

この本は、唐代から延々・綿々と伝わる怪奇な事柄を綴った書物です。宋の時代には「剪燈新話:せんとうしんわ」という書物があり、明の時代には、愛欲や怪奇現象を読むのは士大夫がするべきことではないとこの本、禁書扱いされましたが、中国人はもともと愛…

私がこれまで作った、変わった野菜:イロイロあるぞ。

私は植物大好き人間で、これまで野菜、ハーブ、多肉植物などを栽培し、野草も食べて「野草を食べる・滋味(JIMI)!!」という本を上梓しています。そのなかで、今回ブログでは栽培してきた変わった野菜を、栽培時の順不同で列挙したいと思います。野菜ごと…

天地玄黄:千字文(せんじもん)の小宇宙的文字空間

図は、最近描いた絵を絵葉書にしたものです。題して「玄黄図」。もとはカラスが秋の苅田で、落ち穂拾いをしているあたりから着想しました。それを絵にしたわけです。「玄」は「黒」、カラスや天を示す色で、黄は、水田、地を示す色です。易経ではそのように…

カラス・烏・鴉:私は鴉が好き。壁紙に使っている。

羽毛が黒一色の鴉、「不吉」だと嫌う人も多いでしょうが、私には中々素晴らしい鳥のように思えます。一つに、秋、稲穂のこぼれダネをスズメとともに啄ばむ姿は絵になります。黄金色の切り株と、鴉の黒が調和して、この風景はなかなか素晴らしいと思っていま…

孫悟空と釈迦:世界の果てと非ユークリッド幾何学

西遊記の主人公・孫悟空は、自分の持つ力量に慢心し、天上界で暴れまわったことがあります。斉天大聖と名乗り、天上界の実力者たちをなぎ倒し、一回捕まって太上老君(老子)の「八卦炉」で焼き殺されかけましたが、炉の弱点を突き、この難も逃れます。 最後…

剪燈新話(剪灯新話:せんとうしんわ):中国のしゃれて・お色気たっぷりな怪談集

いまの若者にはピンと来ないかも知れませんが、夏になると、ぞっとさせることによって涼を取らせる目的で、怪談がよくテレビで放送されたものです。そのなかでも、スタンダードなのが「牡丹灯篭:ぼたんどうろう」です。日本で初めて話題にしたのは、江戸時…

スクナヒコナ(南Q太)〜等身大の女の子の恋愛遍歴(マンガ)

以前、記紀神話にでてくるスクナヒコナノカミを取り上げた際、参考文献として挙げたマンガですが、表紙がなかなか魅力的だったので「ネットオフ」で注文し、超格安で入手しました。値段は一冊1000円のところ、一桁は低い値段でした。全4巻です。第一巻…

ワラビ、ゼンマイ、コゴミ:おなじシダ類でも個性が違う

以下は、私の過去ログの一節です。 @ワラビたまり漬け 古代中国で、殷を倒して周の国が出来たとき、「不正な王朝だ」と周の飯は食わぬ、と首陽山にこもり、ワラビやゼンマイを食べて餓死した伯夷・叔斉兄弟の逸話は有名ですが、実際ワラビやゼンマイは毒を…

猫に関する言い回しと犬のそれはどっちが多いか?

このようなテーマが与えられたとき、どう考えるでしょう。私は、猫に関する言い回しのほうが犬に関する言い回しより多いと思ってきました。それは、猫に取っては、「不名誉」な言い回しが多いこと。たとえば「猫に小判」「猫糞:ねこばば」「猫背」「猫舌」…

「図解雑学 美術でたどる日本の歴史」:日本絵画史の表裏

この本は並木誠士・著、ナツメ社2002年初版・本体価格1400円の本です。類書に「図解雑学 美術でたどる世界の歴史」蜷川順子・著、ナツメ社2004年初版・本体価格1420円というのがあり、同時に図書館から借りてきました。それで、「日本の歴史…

「午後の曳航」(ごごのえいこう:三島由紀夫)〜恐るべき子供たち

恐るべき子供たち その2 13歳の登は、ある船乗りを尊敬して、英雄と思っていました。その船員・竜二は、登の母・房子と懇ろな関係・・・肉体関係を結び、お互いに自分のパートナーであるとの確信を抱くに至っていました。それは夏の横浜の出来事で、竜二…

「恐るべき子供たち」:魔の4角関係(コクトー作)

恐るべき子供たち その1 原題:Les Enfants Terribles は、ジャン・コクトーがアヘン中毒に陥っていたときに書いた小説です。フランスの文学者には、天才肌を持つ人が多いように思います。コクトーにとっては、天才小説家レイモン・ラディゲが切っても切れ…

デロリンマンとオロカ面:ジョージ秋山の怪作(マンガ)

漫画家のジョージ秋山さんは、奇想天外なマンガを描くことで有名です。「デロリンマン」は、初期の作品で、週刊少年マガジンに2回シリーズで連載されました。私が手にしているのは2シリーズ目です。「巨人の星」や「あしたのジョー」などが連載されていた…

糖質制限ダイエットの可否:まさかでしょ?桐山さん!

ここ2、3年、新聞広告に「糖分を摂らないで健康体に!」のような書籍の情報があふれるように存在することが目についていました。糖質は自然からの、人間に対する最大の贈り物なのだから、随分非科学的な運動だな、と思っていました。 ところで、2016.…

尾崎豊と中原中也〜青春のいらだち

尾崎豊(1965−1992)は、その印象的な諸作品から、「カリスマ」と称されたミュージシャン&シンガーソングライターで、彼の衝撃的な死のあとでもいわゆるフォロワーが生まれる稀有なミュージシャンだったようです。ようです、というのは、私は彼の活…

幻の琵琶湖大運河:土建屋的発想の極致

私は大学の専門が、土木・建築系、とくに衛生工学などの上下水道(土木工学の一部)だったのですが、むしろこの分野には嫌悪感を持っています。たとえば某ゼネコンが「地図に残る仕事」と、本四架橋について自画自賛しているのがとても僭越な物言いだな、と…

アメリカザリガニ:それなりに可愛い。(散文詩)

エビガニの ハサミ挙げるや 居丈高 その実彼は 臆病者か アメリカザリガニはカニの仲間ではなく、エビの一種です。この生き物は「ウシガエル」の餌として昭和5年に輸入されたのですが、100匹いたところ、多くが死んでしまい、残った20匹が日本全国に広…

第一印象の正しさは何%の確率か?:数学と易経による解析

私が以前考察したことなのですが、表題のようなことを考えました。まあ、「当たるか・当たらないかの2つしかないのだから、それは50%であろう、と考察の結果にイチャモンをつけてきた人がいましたが、私に限って、そんな当たり前のことを発表するわけが…

肘(ひじ)と膝(ひざ)の語源的関連性とは

この2つの言葉は、それぞれ身体の一部を指し、四肢を形成する部分です。「ひ」だけ共通で「じ」と「ざ」で区別されています。これはどう言う語源なのか、という興味が湧きますが、実際のところどうなのでしょうか? ベネッセ古語辞典とか広辞苑(第4版)を…

哲学者・ショーペンハウエル〜「読書について」

以前私がエントリーしたブログのコメント欄に書いたことなのですが、天才の天才たる由縁について、ドイツの哲学者・アルトゥル・ショーペンハウエル(Arthur Schopenhauer:1788−1860)の逸話が面白いのです。なにやら、彼の主著である「意志と表象…

「試験あらし」と「東大一直線」:演歌vsロック

この2つは、マンガの題名で、ほぼ同じ頃(私が高校生だった、かれこれ40年くらい前)の「カビの生えた」マンガです。「試験あらし(てすとあらし)」(作者:聖日出夫)は週刊少年サンデーに連載された作品で、東大合格者数では西の「灘高校」とならび称さ…

「無名の人生」(渡辺京二)の“言いも言ったり”(書評)

2014年8月22日の朝日新聞に紹介されていた本が目にとまり、図書館に蔵書のリクエストをして、それが叶えられ、読んでみました。その本は「無名の人生」(文春新書)でした。キャッチフレーズは「「成功」「出世」「自己実現」などくだらない!」・・・…

脚気と森鴎外:軍医として彼最大の汚点

脚気(かっけ)という病気は、現代人が罹ることは希ですが、明治時代、日本の近代的軍隊が生まれると同時に、大問題になりました。この病気に罹った結果、死ぬ兵士が続出したからです。これは大問題であるということで、陸軍でも海軍でも調査がなされました…

土田麦僊〜日本絵画と西欧絵画の融合を目指して

土田麦僊(つちだばくせん:1887−1936)は、明治、大正、昭和期を生きた日本画家。出身地は新潟県の佐渡島であり、1904年に大家・竹内栖鳳に弟子入りします。そして早くも頭角を現した彼は、「罰」という作品で、第二回文展に入選し、3等賞を受…

もっとも進化した茶器はどれか?――それはね・・・

お茶を淹れる容器・・・茶器にもいろいろありますが、もっとも進化した茶器はどれかと考えてみました。もっとも複雑なのは、豆をミルにかけて、サイフォン式かドリップ式かは問わず、淹れるコーヒーが一番手間が掛かります。これはさすがにもっとも進化した…

グラム・ロックの光彩〜デヴィッド・ボウイ、ロキシー・ミュージック

故・デヴィッド・ボウイ氏に捧ぐ 表題に挙げた2つの音楽ユニット、デヴィッド・ボウイ(個人)とロキシー・ミュージック(グループ)は、いわゆる「グラム・ロック」に分類されます。でも、その「グラム」という言葉の意味は不明確です。Wikipediaで調べてみ…