幻の琵琶湖大運河:土建屋的発想の極致
私は大学の専門が、土木・建築系、とくに衛生工学などの上下水道(土木工学の一部)だったのですが、むしろこの分野には嫌悪感を持っています。たとえば某ゼネコンが「地図に残る仕事」と、本四架橋について自画自賛しているのがとても僭越な物言いだな、と思っていました。
さて、図書館から借りてきた本が、土木・建築関係の本で、「あったかもしれない日本幻の都市建築史」(橋爪紳也:紀伊國屋書店:2005年初版)にざっと目を通していたら、琵琶湖を介して太平洋と日本海を大運河でつなぐというプランがあったのには驚きました。戦前のこと。
なにより、淀川=琵琶湖水系の形を決定的に変え、また琵琶湖から敦賀湾(日本海)までを巨大な水路を掘削して、いわゆる閘門(こうもん)を使って、水位を調整しつつ、かなり大きな船が太平洋⇔日本海に自由に運行できる、としています。
その際、琵琶湖の水位は30mないし40m下げ、琵琶湖の貯水量が半分になっても、プランナーは気にも留めていないようです。さらに湖を干上がらせた跡には、分譲住宅を建てるという心積もりだったようです。
ただ、このトンデモない計画は、予算の関係で(当然ですが)取りやめになったそうです。
もちろん、このプランは、自然の生態系については、なんの考慮もしていません。土建屋、建築家というのは、「箱物」としての施設には関心を持ちますが、生態系をほんとに考慮できる人は少ないのでしょう。土建屋だったら、自然にある地形を変えて、球とか六面体、直線などに還元してしまうのですね。
後期印象派のセザンヌが「全ての物は、球・円錐、円柱に還元できる」としていたのとは、少々意味合いが違うようです。セザンヌはあくまで対自然の認識論として言っただけでしょうが、土建屋は意図的に自然を壊すのですね。
環境問題についても、私が思うに、土木・建築畑の人は、問題の解決にも、「箱物」が一番だと考える傾向があるようです。ほんとは護岸工事より、水辺の葦などのほうが効果的であり、またいろいろな動植物が育つという事実に頬かむりするのですね。
今日のひと言:ある意味、私は専門の選択を誤っていたのかも知れません。大学入学当時の志望は数学科、そしてフランス文学科、そして都市工学科・衛生コース。衛生コースは大・小便を扱うので、人気がなかったのです。ただ、ソフトな味わいの「環境科学」と呼ばれるようになると、途端に世の人気学科になり、新設する大学も多いですね。悪いけど、そんなところを卒業しても、環境問題の核心は見られないよ、と私は言いたいです。

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