明治政府は医療の近代化を進めていた。明治7年(1875)に医制を発布、以後医師となる者には開業医免許の試験を行うことになり、英之助もこの試験を受けることとなった。当時は「歯科」とは呼ばずに「口中科」「口科」、あるいは入れ歯だけを扱った「入歯師」と呼ばれており、内科や外科などよりも一段低いものとして区別されていた。明治政府の医制も同じような考え方であったため英之助は憤慨する。自分は西洋の最先端の技術・学問をマスターしているとの自負もあったことだろう。試験を託されていた東京医学校(後の東京大学医学部)に歯科の試験を行うよう頑固に働きかけ、結局、英之助一人のために「歯科」の試験が行われることになった。
ところが、「歯科」の試験をしようにも、英之助以上に「歯科」をマスターした者がいなかった。しかも受験者は英之助ただ一人。このため、試験問題を英之助自身がつくり、自分で受験するという”自作自演“だったと伝えられている。
見事「歯科試験」に合格した小幡先生は、医籍第四号に登録され、日本人初の歯科医術開業免状を受けました。そして明治七年に公布された医制に基づき、歯科医師の第一号となりました。
この後、明治十六年の「医術開業試験規則」によって新たに「歯科医籍」が設けられ、明治三十九年に「歯科医師法」として認可される事で、歯科は医科と離れ独自の道を歩み始める事となります。
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/2383076.html より。ただし、上掲の記述は元ネタがあり、
http://www.pref.oita.jp/10400/viento/vol08/obata/index.htm から参照されているようで
す。私は孫引きをしたわけです。
歯科医は、近代医学の世界では、一段低く見られていたのがわかります。やや違う立場から言うと、
古来、歯、口にかかわる医師を「口中医」と称してきました。日本の律令(養老医疾令)によれば、毎年の医学生20名のうち、現在の内科に当たるもの12人、外科に当たるもの3人、小児科に当たるもの3人、耳鼻科、歯科に当たるもの2人に振り分けて、それぞれの年限で育成していたことがわかります。これは中国(唐)の律令よりのほぼ完全な引き写し(唐令は内科11名で、特殊医療である角科に1人となっている)であり、実際のところ、どこまでこの規定通りとなっていたかは不明ですが、日本の本格的な医療制度の「理念形」と言えます。
ここで、規定されている「口歯科医師」こそ、その後の「口中医」の出発点です。幕末、明治初年まで存在していた「口中医」の仕事は、しかし、現在の「歯科医」の業務範囲とは微妙に異なっていたようです。基本的に硬組織疾患に対しての「武器」を持っておらず、少なくとも、う蝕は放置され、程度によっては適宜、抜歯する程度でした。
「口中医」の伝統をもとにして、現在のように医科と歯科が全く別に存在している状態について「もともと同じ医師であったはず」と、疑問を投げかける声があります。これに対して、近代歯科医学の出発点となったアメリカ・ボルチモアの歯学校が出来た経緯(ハーバード大学医学部が歯科の設置を拒否した)から、「やはり歯科は医科と異なるもの」との見方もあります。
ことは「歯科をどのように見るか」という価値観の問題ですから、あまり踏み込むべきではないと思いますが、歯の保存療法、特に、歯冠う蝕に対して、削る、埋めるという処置を施せるようになった近代歯科医学によって、「口中医」は「歯科医」となったと言えるでしょう。
今回の特集でタイトルとした「口腔内科」は、近代も過去のものとなり、削る、埋めることが歯科医療の主要な仕事でなくなりつつある将来、再び、「歯科医」は「口中医」へと回帰していくのではないか、との漠然とした思いから取材を始めたものです。すでに、中国、韓国では大学の講座の中に「口腔内科」が位置付けられているわけですが、日本も、同じ流れになっていくのでしょうか。(水谷)
(2005年10月号掲載)
http://www.dentalnews.co.jp/ap_column/column_2005.html (日本歯科新聞社のHP)
なお、東大の場合、医学部の中に歯科を事とする部門があるようです。
当科では、顎顔面変形症,顎顔面外傷口腔内炎症,口腔腫瘍など歯や顎に先天性又は後天性異常のある方、重い全身疾患のある方を主な診療対象としております。
また、大学院の講座名は、東京大学大学院医学系研究科外科学専攻感覚・運動機能医学講座口腔外科学分野となっております。
http://plaza.umin.ac.jp/~oralsurg/
さらに、忘れてはならないのが、歯科に広く認められている「混合診療」です。これについては
保険診療と保険外診療が混在する、あるいは保険給付と保険外の患者負担が混在することを混合診療と呼ぶ。現在の日本の健康保険制度では保険診療と保険外診療を併用することは原則として禁止されている。ただし、保険診療と保険外診療が混在することは、次の二点に関して認められている。
(1) 保険外併用療養費制度には「評価療養」と「選定療養」がある。「評価療養」は高度の医療技術を用いた療養その他の療養であって保険適用を評価する必要のあるもの。「選定療養」は患者さんの選択を広げる意味合いで、特別の病室の提供などについて認められているもの。歯科では前歯の金合金等、金属床総義歯、予約診療、時間外診療、小児う触の指導管理などがある。
(2) 歯科通知文 第12部歯冠修復及び欠損補綴 通則21 にて定められた事項
保険給付外の材料等による歯冠修復及び欠損補綴は保険給付外の治療となるが、この取扱いは、歯及び口腔に対する治療体系が細分化されている歯科治療の特殊性に鑑み、当該治療を患者が希望した場合に限り、歯冠修復にあっては歯冠形成(支台築造を含む。)以降、欠損補綴にあっては補綴時診断以降を、保険給付外の扱いとする。その際に、当該治療を行った場合は、診療録に自費診療への移行等や当該部位に係る保険診療が完結している旨が判るように明確に記載する。
なお、従来あった所謂昭和51年管理官通知(「歯科領域における保険給付外等の範囲について」(昭和51年7月29日保文発第352号))は、平成26年度診療報酬改定において廃止された。
日本の保険制度では健康保険でできる診療行為が限定され、医療の一部分しか給付されない。医療技術や医療機器の進歩や新薬の登場も保険制度の種々の制約から保険に直ちには反映されない。そこで混合診療が常に問題となることになる。平成23年10月の最高裁の混合診療原則禁止は適法との判決があったが、TPPでの混合診療解禁問題についてはなお様々な議論がある。
http://www.jdpf.jp/102/ (日本歯科医師連盟)
今日のひと言:混合診療がTPPの一環として一般の医療にも適用されると、日本の医療は崩壊するという説もあります。私も貧乏人の一人として、同じ危惧を抱いています。
なお、今回のブログは引用が多いですが、それは私にとって未知の領域の話題なので、そうなったと思っています。ぎりぎりセーフかと。はてなキーワードの「引用」(←これ)をクリックしてみてください。括弧内のアンダーライン部分をクリックします。引用の4要件が書かれています。
- 作者: 森永泰信
- 出版社/メーカー: 文芸社
- 発売日: 2015/04/30
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログ (1件) を見る
- 作者: 林晋哉,林裕之
- 出版社/メーカー: 三五館
- 発売日: 2014/05/22
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (3件) を見る
- 作者: 渕端孟,祖父江鎮雄,西村康,村上秀明
- 出版社/メーカー: 永末書店
- 発売日: 2016/02/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る
治療ゼロの歯科医療をめざして 「トータルヘルスプログラム」が変える日本の歯科医療 (NextPublishing)
- 作者: 辻村傑
- 出版社/メーカー: good.book
- 発売日: 2015/03/04
- メディア: オンデマンド (ペーパーバック)
- この商品を含むブログ (2件) を見る
今日の一品
@サクサクえびのハンペンフライ
良く行くスーパーの惣菜部にあった商品。厚いハンペンをエビ入りのコロモで包み、揚げた一品。美味しいので弁当のおかずにすることがあります。
(2016.07.07)
@燕麦(えんばく)の和風粥
一度食べて見たかった燕麦(oats)。スーパーで見つけたオートミール(燕麦を圧縮して家庭での処理を軽減するような状態)を買ってきて、手始めにお粥にしてみました(永谷園・お茶漬けの素)。2、3分も茹でると食べられるようになります。癖はなく素直な味わい。ただ、一食分30gとされていて、ちょっと少ないように思います。この食品から、ミューズリー、グラノーラなども作れるそうです。
(2016.07.10)
@アルファルファもやしのサラダ
この前、id:o-uiri さんに教えていただいた永谷園・お茶漬けの素とオリーブオイルを使ったサラダ、再びやってみました。オイルを少な目にして、よく出来ました。
(2016.07.12)
今日の詩
@餌付け
川沿いの鯉
餌を撒くと
飼いならされた彼ら彼女ら
嬉々として
集い来る
ざっと大小15匹
もしも人間の悪意を以って
捕獲され
マナイタの上に並ぶかと
考えることはあるか。
(2016.07.08)
今日の一句
時ならず
飛ぶや秋津の
不釣り合い
秋津(アキツ)とはトンボのこと。生活環はどうなっているのでしょう?
(2016.07.07)