虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

「試験あらし」と「東大一直線」:演歌vsロック

この2つは、マンガの題名で、ほぼ同じ頃(私が高校生だった、かれこれ40年くらい前)の「カビの生えた」マンガです。「試験あらし(てすとあらし)」(作者:聖日出夫)は週刊少年サンデーに連載された作品で、東大合格者数では西の「灘高校」とならび称される東京の「大竜高校」が舞台です。主人公は「嵐次郎吉(あらしじろきち)」、マジシャンの息子で、本人もその技に熟達していて、カンニングを巧みに行い、「大竜高校」の特待生の扱いを受けています。つまりは超エリート高校の教育を無料で受けられるという立場にあるのです。そして、カンニングを駆使して東大文科1類(法学部進学予定)に首席で合格します。次郎吉の母は、息子の将来の進路を「次は大蔵省(現・財務省)・・・」・にと進むことを皮算用します・・・


もう一つの「東大一直線」(作者:小林よしのり)は、週刊少年ジャンプに連載されたマンガで、ガリ勉ではあるのだけれど、学力が小学生レベルの劣等生・「東大通(とうだいとおる)」が主人公で、あまりにバカなためにいろいろなトラブルを巻き起こすという筋立てのマンガです。毎回、周囲の者が「すぺぺぺ〜」とあまりの東大通のバカさのため、舌を噛み切って飛ばしてしまうというシチュエーションが話の最後を飾ります。マンガの結末では、本当に東大通が合格してしまい、東大が崩壊するという落ちになっています。


実際に連載されていた時には、私は「試験あらし」のほうが好きでしたね。次郎吉は憎めないキャラで、対人的にも害を与える立場ではなく、ストーリー自体、極めて解放的であり、憧れの女性・鬼頭しのぶ嬢にあっさり振られても、どうにか立ち直る強さを次郎吉は持っていたのです。上質の人情話と言っても良いでしょう。


一方の「東大一直線」は、全編ナンセンスなギャグであるだけで、見るべきものはないと思っていたのですね。・・・←この記述、ちょっと可笑しいですよね。私は「ナンセンスなギャグ」と言ったのですが、そう認識するなら、そのように「東大一直線」を読めばいいわけですから。


そのマンガたちがあったころの音楽シーンを思いだしてみると、「シクラメンのかほり」(布施明)とか「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」(ダウンタウン・ブギウギ・バンド)などがヒットしていました。私は両曲を比較して、「シクラメン・・・」の方が良い、と思っていたのですが、同級生いわく「[シクラメンのかほり]は演歌だな」・・・でした。その意味はその後、私も認識しました。「どろどろしていて、むしろ醜い」と言った評価に変ったのです。一方「港の・・・」のほうは、今聴くと、ほとんど語りだけなのに、バックバンドの音が光っていて、当時、だてにヒットチャートで「シクラメン・・・」を抜いたのではないことが解ります。語りで聴かせることにおいては、現在のロックやヒップホップの先駆とも言えるでしょう。


以上の音楽上の比較を2つの受験マンガに適用すると、「試験あらし」=演歌。「東大一直線」=ロック とでも位置づけられるでしょう。人情味を求めたければ「試験あらし」、受験の馬鹿馬鹿しさを笑い飛ばしたいなら「東大一直線」が良いでしょう。



今日のひと言:最近のマンガ・シーンでは、受験そのものを題材にした作品はあまりないように思います。思い浮かぶのは「ドラゴン桜」(作者:三田紀房)あたりでしょうか。学校再建のために呼ばれた弁護士。彼の名文句:「世の中のルールは、東大出のような頭のいい奴が作る、だからお前らも東大へ行け」とかいう半ば乱暴な言葉で、偏差値の低い高校の生徒に発破(はっぱ)を掛けていました。もちろん、講師もえりすぐり、受験生の心理についてもこの弁護士は関与していたのですね。


試験あらし(1) (少年サンデーコミックス)

試験あらし(1) (少年サンデーコミックス)




今日の料理


@モヤシとハコベの卵炒め




以前もこの種の料理を作りましたが、今回は味の要として「味の素のほんだし」(顆粒状)を使い赤穂の甘塩で塩気を付けました。最後に七味唐辛子を振ります。ちょっと塩辛い味付けになってしまいました。

http://d.hatena.ne.jp/iirei/20160113#1452630974


 (2016.02.23)



@カスベのコンソメ





「カスベ:カスペとも」は東北・北海道で取れるエイの仲間で、そのヒレを食べますが、これがコリコリしていて美味です。通常は醤油+ショウガで煮ますが、今回はコンソメ+クミンシード+輪切り唐辛子で煮込みました。

 (2016.02.24)



@ウドの炒め物



弟作。小ぶりで割安なウドを買ってきて、短冊切りにして、ゴマ油ナンプラー、輪切り唐辛子で炒めました。(上部の葉は切ってブリを煮込んだ茹で汁の味噌汁に入れました。

 (2016.02.26)





今日の二句


きかん気の
雄犬一頭
しゃがみけり


完全にはこの犬は飼い主に従わず、我が家の雌犬に「襲いかかろう」というポーズをとります。そのくせ、顔を掻くのを防ぐため、エリザベス・カラーを装着されているのが滑稽です。

 (2016.02.24)




にわか雪
墨絵のごとき
小山なり



日の出前、うっすら積もった雪、青色っぽく映りました。昼前には融けて無くなりました。


 (2016.02.25)