アルチンボルド:「だまし絵」の先駆者
ルネサンス期以降のマニエリズム画の時代にイタリアで活躍したジュゼッペ・アルチンボルド(1527−1593)は、いわゆる「錯視」を絵の中に取り入れた先駆者として名高い画家です。特に、野菜・植物を組み合わせてそれを人間の肖像画にした作品が、特に有名です。その一つを以下に挙げます。(黒い帽子を被っていることに留意してください。)
どうでしょう?知らずに見ると、確かに人物画のように見えますが、実際は野菜の集合体なのですね。更に、この絵を上下ひっくり返すと、こんどは人間の顔が消え、「植木鉢に積み上げられた」野菜のようにしか見えなくなります。二重の意味で、かなり手の込んだ「だまし絵」です。「帽子」は、「植木鉢」でもあったわけです。ひっくり返した絵は以下。
この絵は「図説アイ・トリック 遊びの百科全書」(種村季弘・赤瀬川原平・高柳篤:河出書房新社)の75ページからもってきました。
この特異な画家、経歴をwikiから拾ってきますと、
アルチンボルドは1527年にミラノで画家の息子として生まれた。1549年よりステンドグラスのデザインを始め、ミラノのドゥオーモに作品を残した。1556年、Giuseppe Medaと共にモンツァ大聖堂のフレスコ画を制作する。1558年には聖母マリアを描いたタペストリーのデザインを手がけたが、そのタペストリーは未だにコモ大聖堂に飾られている。
1562年、アルチンボルドはウィーンにて フェルディナント1世の宮廷画家となり、後にその息子の マクシミリアン2世や孫にあたるルドルフ2世にも仕えた。アルチンボルドは画家としてだけでなく、宮廷の装飾や衣装のデザインも手がけた。また、祝典や馬場槍試合の企画、水力技師などで非凡な才能を発揮した。ハープシコードのような楽器、,噴水、廻転木馬等も発明した。
アルチンボルドが描いた伝統的な宗教画は現在では忘れ去られてしまっているが、野菜や果物、木の根といったもので構成された独特の肖像画は、現在でも多くの人を魅了し続けている。ある評論家達は、こういった作品は気まぐれで描かれたものか、それとも精神の錯乱から来ているものなのか議論している。しかし多くの学者たちは、アルチンボルドの作風は謎やパズル、風変わりなものに魅了されていたルネッサンス期を反映しているもので、彼が精神的に不均衡であった訳ではないという見方をしている。
彼の経歴を見ますに、その多様な才能は、レオナルド・ダ・ヴィンチにも匹敵するように思います。絵画・音楽・衣装・室内装飾・土木技術など。でも、今ではおおくの作品とか発明品は散逸し、わずかに残った「だまし絵」が私たちの目を楽しませてくれるように感じます。
今日のひと言:「だまし絵」と言えば、現代美術ではM.C.エッシャーが有名ですが、エッシャーもおそらくアルチンボルドから大いに影響を受けたと思われます。

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今日の一品
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弟作。あり合せの素材をドッキングさせた感。案外美味しい。仕上げに胡椒を振りました。
(2016.06.18)
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