恐るべき子供たち その2
13歳の登は、ある船乗りを尊敬して、英雄と思っていました。その船員・竜二は、登の母・房子と懇ろな関係・・・肉体関係を結び、お互いに自分のパートナーであるとの確信を抱くに至っていました。それは夏の横浜の出来事で、竜二は大海原に出航してしまいます。さて、お互いにとって大事な人だったので、竜二が冬に戻ってから再び出航しないことをきめてからは、結婚するまでのこまごまとしたことを解決しなければなりませんでした。
その大きな課題の一つが、登に、二人の結婚をどのように納得させるか、でした。その際、竜二がありきたりな・英雄としてではない・説教をするにあたり、その辺は、通常の大人としてはまずまず及第点を与えられる説教だったのが、登にとっては、竜二の堕落を意味する以外の何物でもありませんでした。
こんなとき、登は竜二の「罪科」を日記に書き留めておくのでしたが、これが許容範囲を超えたとき、6人のメンバーのところにいくのでした。それは、首領というリーダー、5人のメンバーを「1号」「2号」と称する集まりなのですが、(このグループは13−14歳で、猫を捕まえては解剖するなど、危険な属性をもつグループでした。)
そして竜二が話題にされたとき、罪科の多さに、首領は「これは処刑するしかあるまい」と決断し、実際、それを実行するのです。年端も行かない子供たちが、検察官や裁判官のように振舞うという異常さです。「恐るべき子供たち」です。このグループに誘われた竜二は、小高い山に連れていかれ、睡眠薬の入った紅茶を勧められ、ちょっと苦いなと思いながら、飲み干すのですね。ここでこの物語は終わります。もちろん、直後に竜二は殺されたと暗示しているのですね。
先ほどの記述に出て来た猫の解剖ですが、この表現から連想されるのは、昔神戸を舞台に世間を震撼させた「酒鬼薔薇聖斗事件」の中学生の犯人の心象風景です。まさかとは思いますが、三島由紀夫は、このように中学生が凶悪事件を起すことを推察していたのでしょうか。
この小説の題名の「曳航」は船を係留して移動させることですが、音が同じ「栄光」とも掛けられているようです。(以前、そのように解説するラジオ番組を聞いたことがあるのです。番組名は失念。)竜二が持っていた「栄光」(英雄性)と、その竜二を山に移動させ(曳航し)、俗な存在になりさがった竜二を殺すことによって、聖なる英雄に戻す行為。このグループの場合、世間と価値評価が真逆なのです。
今日のひと言:三島由紀夫は、フランスの小説家:レイモン・ラディゲを意識して執筆活動をしたそうです。フランスの小説はまるでビリヤードをするように、緊密な構成から成っているのですが、この「午後の曳航」はまさにフランス好みの作品になったようで、舞台、映画と幾度も取り上げられているそうです。前回挙げたジャン・コクトーの「恐るべき子供たち」よりよほど恐ろしさを感じます。
今回ブログは、「午後の曳航 新潮文庫」を読んで書きました。
- 作者: 三島由紀夫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1968/07/15
- メディア: 文庫
- 購入: 4人 クリック: 21回
- この商品を含むブログ (60件) を見る
- 出版社/メーカー: オルスタックピクチャーズ
- 発売日: 2011/01/28
- メディア: DVD
- クリック: 25回
- この商品を含むブログを見る
- 作者: 三島由紀夫
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1991/12/04
- メディア: 文庫
- 購入: 9人 クリック: 56回
- この商品を含むブログ (114件) を見る
今日の一品
@鶏モモ肉のシソ葉炒め
弟作。鶏モモ肉に切れ目を入れて、(私が昨年漬けた梅干しの付属の)赤シソの葉を入れ込み、片栗粉をまぶしてフライパンで炒めました。一種の廃物利用であり、シソの風味も活きました。
(2016.04.14)
@イワシのマリネ
弟との合作。あらかじめ腹を割き、開いてあった小イワシを、かるく塩、山椒し、小麦粉で炒め、酢を中心としたマリネ液に漬けました。(この液は、過去に使った液を保存していて、漬けました。)
(2016.04.15)
@コンフリーのバター炒め
コンフリー(ムラサキ科)は甘い香りを持ち、花が実際蜜が豊富で甘いハーブです。この植物は「ピロリジジンアルカロイド」という毒成分も持つのですが、私はこのハーブが好きなので、春先に蕾を主として1、2回食べています。バターでいため、今回は山椒粉を掛けました。なお、よく似た毒草にジギタリス(ゴマノハグサ科)があり、心臓毒です。違いはジギタリスの葉がギザギザで毛がなく、コンフリーは毛が沢山生えている点。花の特徴はかなり違いますので、花期に見比べれば、まちがえることはないでしょう。
(2016.04.16)
@筍と身欠きニシンの煮物
この前、身欠きニシンと合わせて煮ると美味しいと、教えてもらった食材のひとつが筍(たけのこ)。噂にたがわず美味でした。なお、矯臭のため、庭の山椒の葉も加えてあります。もう一つは、蕗を使った料理で、庭で出そろったところで調味しようと思います。
今日の詩
赤、
白、
ロゼ、
三色揃った
ワインカラーの
花の色。
街路でだぶらせて観ると
桜色。
桜に劣らず美しい。
花に見えるのは、総苞(そうほう)であって、正しくは花ではないそうです。この樹は、太田市とアメリカのバーバンク市が姉妹都市になって、贈られたと言うことです。
(2016.04.19)
今日の一句
鴨が啼く
初に聞きしが
写真無理
動画でない限り、光学機器では音の収録は無理ですね。
(2016.04.15)
現在、ブログの更新はおおむね6日に一回行っています。