虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

デロリンマンとオロカ面:ジョージ秋山の怪作(マンガ)

漫画家のジョージ秋山さんは、奇想天外なマンガを描くことで有名です。「デロリンマン」は、初期の作品で、週刊少年マガジンに2回シリーズで連載されました。私が手にしているのは2シリーズ目です。「巨人の星」や「あしたのジョー」などが連載されていたころのお話です。


デロリンマン (2)

デロリンマン (2)



まず、デロリンマンとはどんな人かというと、妻一人、息子一人の中流階級で、何不自由なく生活をしていました。ところが急に「自殺したくなり」、実際に飛び降り自殺をしてしまいます。ところが神に一命を救われ、「救世主」となることを神に付託されます。そして、自殺の際、ぐちゃぐちゃになった顔と頭、そのままに「布教」活動をやり始めます。


なんと言っても、そのおどろおどろしい風貌に、人という人は恐れおののき、彼を排斥します。それは家族の妻・息子も同様です。デロリンマンはなんとか自分が夫であり父であることを2人に認めさせたいのですが、たとえ、本来の夫・父が持っていた「ほくろ」などの身体的特徴を見せても、家族はなかなか納得しません。


「愛で世の中」を救う、と息巻いてみても、家族すら救えないのですね。それでも、デロリンマンは世界を救うのが自分であると信じて疑いません。その意味では彼は喜劇の主人公です。ところが、ここにもう一人の怪人・・・オロカ面が登場します。


オロカ面は、常に涙を仮面に流しながら登場し、デロリンマン抜き差しならぬ議論を繰り返します。デロリンマンの論敵です。以下の通り。

オロカ面:むかし 人間の心に愛とよばれるうつくしい女神がすんでいた
     だが しかしその女神は死んだのだ
     人間が人間の手によって暗黒の大海にほうむったのだ
     人間に愛の手をさしのべてもむだだ

デロリンマン:しかし私は魂のふるさととして・・・

オロカ面:きくがいいデロリンマン いま谷底へおちようとする
     人間を見てけおとすときのたのしさ  病気でくるしむ人間に
     さらに毒をもってやるたのしさ
     このよろこびを知っているのが人間ぞ それが人間の本質ぞ

デロリンマン:わたしは信じるね人間を 愛を 誠を 真実を 正義を

        「デロリンマン:第1巻、1976年 62P」


・・・・オロカ面は「女神は死んだ」と言いました。このフレーズはニーチェのいう「神は死んだ」という言葉に一脈通じるものがあります。人間存在を神から解き放ったのが実存主義であるからには、オロカ面も実存主義的な一面を持っていることが解ります。その整然とした論には、デロリンマンもタジタジなのですね。別の機会に、デロリンマンが「オロカ面、あなたは悪魔だ」というと、オロカ面は「いや、魂の勝利者だ」と答えています。キリスト教の立場からすると、確かにオロカ面は悪魔と呼べるでしょう。


ただ、ニーチェ嚆矢とする実存主義哲学者は、やはりキリスト教社会が生み出したものであり、どっぷりその精神風土に浸っていたので、親愛の情があった分だけ、反発も大きいのだと思います。その意味で日本にはニーチェサルトルのごとき実存主義的な哲学者はいないのではないか、と思います。総じて、実存主義哲学は「キリスト教社会の鬼っ子」なのだと考えます。(今回のブログ、敬虔なクリスチャンであるid:hatehei666さんたちを揶揄する積りで書いたのではありません。)



今日のひと言:ニーチェの創造したツァラトゥストラは、いわばニーチェの分身であり、それがオロカ面であってもいいような気がします。実は、コミック第2巻(最終巻)で明かされるのですが、デロリンマンがオロカ面の仮面を破壊すると、デロリンマンその人が現れます。とすると、オロカ面はデロリンマンドッペルゲンゲル(もう一人の自分・影法師)であったことになります。心のなかの葛藤を2人の人物に託し、小気味よく展開しているのは、まさしくジョージ秋山の力量だと思います。それにしても、年端も行かない少年たちが、この「デロリンマン」のような難解なマンガを読んでいたのだとすれば、隔世の感がありますね。


荘子―古代中国の実存主義 (中公新書 (36))

荘子―古代中国の実存主義 (中公新書 (36))

ツァラトゥストラかく語りき (河出文庫)

ツァラトゥストラかく語りき (河出文庫)





今日の一品



@焼うどん



私の定番料理。豚コマ切れ、ざく切りキャベツ、乱切りピーマン、季節のものとしてセリを入れ、オイルで炒め、うどんを加えてさらに炒め、ブルドック中濃ソース、おたふくソースを半々に加え、火から降ろす間際にネギをいれます(ネギのヒリヒリ感を保つため)。皿に盛り、青のり、カツオ節を掛け、適当にマヨネーズを加えます。

 (2016.04.02)



@カルビクッパ



久しぶりに焼肉屋に行って注文した一品。ごろごろカルビ肉と唐辛子で赤く染まったスープのオジヤ。辛くて美味です。

 (2016.04.03)



@ラム肉とキャベツの味噌・牛乳炒め



弟作。ソースに「味噌・牛乳・砂糖」を混ぜたものを使い、焼いたラム肉に掛け、輪切り唐辛子を散らします。

 (2016.04.04)



@身欠きニシンのカレー風炒め



弟作。通常醤油+砂糖+ショウガで煮物にする身欠きニシンを、クミンシード+ターメリックコリアンダー+生姜+塩で炒めました。目先が変わって美味です。 

 (2016.04.05)



現在、ブログの更新はおおむね6日に一回行っています。