虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

安井曽太郎(画家):お菓子のように甘そうで堅牢な建物

私が大学に入学し、日本人の画家で、初めて素晴らしいと思ったのは、安井曽太郎で、彼の「承徳の喇嘛廟(らまびょう):1937」を見た時からでした。背景はほとんど緑色なのに、廟にはたっぷりとピンク色の彩色を施し、ただ廟の真ん中は再び緑が支配的な色になります。この色の配色がエクセレントなのですね。今回ブログの表題は、「お菓子のように甘そうで堅牢な建物を描いた」という印象を持つのでそう書いたのです。



安井曽太郎についてwikiから

1888年明治21年)、京都中京区で木綿問屋を営む商家の五男として生まれる。当時の商人の息子の常として1898年(明治31年)4月商業学校(京都市立商業学校)に入学するが、反対する親を説得し、1903年明治36年)3月同校を中退して絵の道に進む。翌年、聖護院洋画研究所(のち関西美術院に発展)に入所し、浅井忠、鹿子木孟郎らに師事して絵を学び始める。同時期、梅原龍三郎もここで学んでいた。


1907年(明治40年)4月、先輩画家の津田青楓が渡欧すると聞いた安井は、津田とともに渡欧することを決意した。安井は、渡欧に際し、それ以前の作を焼き捨てたとのことで、安井の初期作品はほとんど現存していない。フランスではアカデミー・ジュリアンに学んだ。また、7年ほどのフランス滞在の間にイギリス、イタリア、スペインなどへも旅行している。1914年(大正3年)、第一次世界大戦が勃発しドイツがフランスに宣戦布告したことに加え、安井自身の健康も悪化していたため、日本へ帰国した。翌1915年(大正4年)には第2回二科展に滞欧作44点を出品し、二科会会員にも推挙される。その後10年ほどの間は安井の画業の低迷期で、健康が回復しなかったことに加え、フランスと日本の風土の違いにも苦しみ、独自の画風を模索しつつある時期であった。


1930年(昭和5年)の『婦人像』あたりから安井独自の日本的油彩画の様式が確立し、梅原龍三郎とともに第二次世界大戦前後を通じて昭和期を代表する洋画家と評されている。

彼は1952年に文化勲章を受章し、1955年に亡くなります。


同時期に活躍した梅原龍三郎(1888−1986:生年も同じ!)は、肖像画は描きませんでしたが、安井曽太郎は好んで肖像画を描きました。ここで取り上げるのは、日銀総裁で、退官記念として描かれたものです。



ほどほどに散らかった机の描写など、面白いですね。「深井英吾氏像:1937」です。シシッパナというべきか、鼻の穴の大きさがキュートで、意思の強さを感じますね。普段着でしょうか、羽織・袴などが繊維としての風合いを保ちつつ周囲に溶け込んでいますね。おもわず慈しみたくなる絵画です。これは、先に挙げた絵とも共通する特徴だと思います。色の選択と配色が良いです。



最後に、場面としては尋常ではないけど、あったらいいという画材の組み合わせを。「孔雀と女」・・・かなりセンセーショナルな絵だと思います。その意味は、人間の女も孔雀のオスも、「妍を競う(けんをきそう)」生き物であるからか・・・異類婚姻譚も連想します。(白鳥に化けたゼウスがスパルタの女王・レダを誘惑したように。)



それは1914年のこと、安井がイタリア旅行の際、仕入れたテーマをパリで描きあげたということらしいです。確かに、この時期は、まだ私の言う「安井様式」は確立していなかったのでしょう。配色の妙はまだ表れていません。


今回参考にした文献は「アート・ギャラリー・ジャパン」20世紀日本の美術14
   梅原龍三郎   安井曽太郎

  責任編集  富山秀夫  原田実 編集者 日本アート・センター


  集英社 発行です。



今日のひと言:写真家の土門拳さんが安井さんの写真を撮りに行ったとき、なにやら怪しい業者が製品の説明をしていたそうなのですが、安井さんはただ相手を見ているだけ・・・その結果、業者はスゴスゴと退散した由、なるほど、と思ったものです。その眼力がスゴイです。土門拳:「風貌」所載。


20世紀日本の美術―アート・ギャラリー・ジャパン (14)

20世紀日本の美術―アート・ギャラリー・ジャパン (14)

土門拳 風貌

土門拳 風貌

風貌 (講談社文庫 と 7-1)

風貌 (講談社文庫 と 7-1)




@今日の一品


@ニンニクの芽、クコ、卵の炒め物



この3者を炒めました。まずは卵をオリーブオイルでソボロ状にしてとっておき、他の食材をゴマ油で炒め卵を入れ、塩・七味唐辛子で味付け。


http://d.hatena.ne.jp/iirei/20130315#1363342581

  :参考過去ログ (ラスタカラー炒め)



太田市役所12階で食べた担担麺



大体どのメニューでも500円(ワンコイン)で食べられる中華料理屋。消費税は内税かも。担担麺(たんたんめん)としては、まあ普通の味だったかな。(ちょっと辛さが物足りなかったので、ラー油も入れましたが。)ほぼ韓国料理の「カルビクッパ」くらいの辛さか。

 (2016.07.02)



@ラムにら炒め



弟作。久しぶりに買ってきたラム肉を、味噌+コチュジャン+トウキビ糖で炒め、仕上げにニラを入れました。強い個性の両者の香りが中和されました。

 (2016.07.05)





今日の詩


ヤブガラシ


数年前 食べようと思って
庭に導入したヤブガラシ


脅威の生命力で庭を覆っている
スズメバチも蜜を求めて来る


私は樹に絡んだツルを
ベリベリと引きはがす


あとから来たスズメバチ
なす術もなく飛んでいる

 (2016.07.01)