「図解雑学 美術でたどる日本の歴史」:日本絵画史の表裏
この本は並木誠士・著、ナツメ社2002年初版・本体価格1400円の本です。類書に「図解雑学 美術でたどる世界の歴史」蜷川順子・著、ナツメ社2004年初版・本体価格1420円というのがあり、同時に図書館から借りてきました。それで、「日本の歴史」のほうはすぐ読み終わったのですが、「世界の歴史」のほうはなかなか読めず、2回も延長してしまいました。
こうなった理由は、もちろん「世界の歴史」のほうが「退屈で詰まらなかった」からです。まず、その理由を考えてみます。高校生の時代を思い出し、日本史、世界史の授業を考えてみますと、日本史の場合、「単線」で案外簡単に歴史の流れを掴めるのに対し、世界史は「複線」で、歴史の流れを掴むのは、結構大変であることがあると思います。ヨーロッパであんなこと、こんなことが起きているとき、アジアではどんなことが起きているのか、複眼的に理解しなければなりません。まあ、一般的にはこのように言えます。
さらに、「世界の歴史」の場合、特に西欧史に顕著なのですが、ルネッサンス以前の絵画が、キリスト教の教義と共にあり、目の前の絵画を鑑賞するには「知らなければ解らない・約束事」が多いと思います。この本では取り上げられていませんでしたが、カラヴァッジョの静物画、たとえばマンドリンが描かれていたら、それは僧侶を意味する、と言った具合で、目の前にある絵からは、そんなアレゴリー(寓意)はまったく読取れないのです。・・・それが「世界の歴史」の欠点です。そんな記述が延々と続きます。また、取り上げる画家も偏っていて、マネ、ゴーギャンは取り上げられても、もっと重要なモネ、ゴッホなどはオミットされています。
そこで、「日本の歴史」に戻ってみると、やはり色々な事象がふんだんに盛り込まれていて、読むのも一苦労ですが、私は「やまと絵」(50P)に特に注目しました。古代日本は中国の文化を真似ることで発達していきましたが、絵画の技巧は中国に準拠しながらも、日本独自の風習、風俗を身近な光景として自由に描いたというのが「やまと絵」です。これは、ちょうど、カタカナ、ひらがなが生み出され、中国とは一味も二味も違う文学が生み出されたのと、軌を一にして、発生した絵画様式なのですね。ちなみに、中国風の風俗を現す絵のことを「唐絵:からえ」と呼びます。
なお、やまと絵として描かれた屏風の前に陣取り、絵を愛でて歌(短歌)を詠むといった余興も行われていたそうで、また、12世紀前半にはすでに描かれていた「源氏物語絵巻」も、そんな余興の対象になっていたのですね。
また、「信貴山縁起絵巻」(国宝)の場合、マンガやアニメで使われる技巧も使われていて、なんと自由闊達な!同時期に成立した「鳥獣人物戯画」(国宝)も同じような構成が成されているのです。
さて、この「やまと絵」、どのように伝承されたかというと、室町時代の宮廷絵所の絵師たちであって、その総元締めが土佐派の画家でした。室町時代初期に土佐行広より土佐と名乗ることになり、足利3代将軍・足利義満の肖像画も描いています。
その後、狩野派などが台頭しますが、「やまと絵」といって思いつくのはやはり俵屋宗達で、この人は中国の水墨画家・牧谿(モッケイ)の筆さばき・・・「たらしこみ」の技法をマスターし、かれの「やまと絵」のテクニックの1つとしています。(なお、長谷川等伯もこの技巧をマスターしていたと聞いたことがあります。)
今日のひと言:歴史をたどるという行為は、ジャンルを問わず、真偽を見抜く目も必要になり、そうとう疲れる作業になると思います。
俵屋宗達に関する過去ログ
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20070912 宗達の犬
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20090210#1234237044 俵屋宗達の視線(非・遠近法)

- 作者: 並木誠士
- 出版社/メーカー: ナツメ社
- 発売日: 2002/12/01
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (3件) を見る

- 作者: 蜷川順子
- 出版社/メーカー: ナツメ社
- 発売日: 2004/10/01
- メディア: 単行本
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (1件) を見る

もっと知りたい俵屋宗達―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)
- 作者: 村重寧
- 出版社/メーカー: 東京美術
- 発売日: 2008/09/25
- メディア: 単行本
- クリック: 17回
- この商品を含むブログ (5件) を見る
今日の一品
@クコの葉の卵とじ
クコ
例年、春と秋の2回に渡って作る一品。新鮮なクコの葉を砂糖=昆布タレで茹で、最後に溶き玉子を加えます。なお、名称は解らないながら、クコに似ていて葉のヘリにギザギザのある植物があり、採取しないのが賢明です。(クコの葉にはギザギザがありません。)
(2016.04.20)
@蕗と身欠きニシンの煮物
ブログ友のid:azusarさんに教えていただいた料理。蕗の独特な風味が身欠きニシンと相性が良いようです。ちょっと庭の山椒の新芽入り。
(2016.04.21)
@鶏モモ肉の山椒焼き
基本は照り焼きで、醤油+砂糖のタレに2時間ほど漬けて、オーブントースターの天板の上にアルミホイルを敷き、肉と山椒の葉を混ぜて包みこみ、180℃で15分焼きました。美味しかったです。
(2016.04.24)
今日の一首
農薬を
掛けられ枯れる
矢車の
これもハーブで
有用なるが
矢車草は花からインクを作ったという歴史がありますが、その辺のことを知らないと言うのは、ある意味、野蛮人であることと思います。
(2016.04.21)
今日の3句
目に迫る
モッコウバラの
ナイアガラ
しだれかかったモッコウバラを愛でたもの。
(2016.04.23)
野菜クズ
捨てる貴方は
駄農なり
農業に携わる場合、野菜クズでも肥料として生かす道を探るのが本当の農家。このおじさんは、アマチュアであるとは言え、失格です。ゴミとして焼却所に出す訳ですね。(この情景は、彼が借りた畑での一コマです。)
(2016.04.23)
可憐なる
ゲンノショウコの
花なりき
優れた整腸作用を持つ民間薬。フウロソウ科の草です。ハーブの「センテッド・ゼラニウム」などの仲間です。
(2016.04.23)