虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

天地玄黄:千字文(せんじもん)の小宇宙的文字空間



図は、最近描いた絵を絵葉書にしたものです。題して「玄黄図」。もとはカラスが秋の苅田で、落ち穂拾いをしているあたりから着想しました。それを絵にしたわけです。「玄」は「黒」、カラスや天を示す色で、黄は、水田、地を示す色です。易経ではそのように評されますので、「天地玄黄:てんちげんこう」という表現も出てくるのです。(このあたり、前回ブログの続編です。)もっとも、天地の色を取替えて天=太陽の黄色、地=冥府の黒色としても、意味は通ります。その辺のイメージ喚起には柔軟なのが易経の世界です。まあ、ざっとこのような背景を「玄黄図」は持っています。


http://d.hatena.ne.jp/iirei/20160531#1464689876  カラス


この文句「天地玄黄」は「千字文:せんじもん」という漢字学習テキストの最初に登場します。


南朝・梁 (502–549) の武帝が、文章家として有名な文官の周興嗣 (470–521) に文章を作らせたものである。周興嗣は,皇帝の命を受けて一夜で千字文を考え,皇帝に進上したときには白髪になっていたという伝説がある。文字は、能書家として有名な東晋王羲之の字を、殷鉄石に命じて模写して集成し、書道の手本にしたと伝えられる。王羲之の字ではなく、魏の鍾繇の文字を使ったという異説もあるが、有力ではない。完成当初から非常に珍重され、以後各地に広まっていき、南朝から唐代にかけて流行し、宋代以後全土に普及した。

千字文は「天地玄黄」から「焉哉乎也」まで、天文、地理、政治、経済、社会、歴史、倫理などの森羅万象について述べた、4字を1句とする250個の短句からなる韻文である。全体が脚韻により9段に分かれている。

全て違った文字で、一字も重複していない。ただし「女慕貞?」の「?」と「紈扇員潔」の「潔」は音も意味も同じであり、テキストによっては両方「潔」に作ったり、「潔」の異体字の「㓗」に作るものもある。 

wikipedia より。


日本でも、8世紀くらいになると、大いに行われていたようです。ちょうど、日本の「いろは歌」のような物と言えますか。


天地玄黃(テンチゲンコウ)宇宙洪荒(ウチュウコウコウ)
 てんはくろくちはき、うちゅうはこうこうなり。
 天は玄(くろ)く地は黄色。宇宙は果てしなく広い。
日月盈昃(ジツゲツエイショク)辰宿列張(シンシュクレッチョウ)
 じつげつはみちかたむき、ほしぼしはならびひろがる。
 日はのぼり西に傾き月は満ち欠けする。星は星座に宿りが並び広がる。

http://shodo-seisen.com/blog/blog_20140321.html 「書院ブログ」より最初の16文字を抜粋。



今日のひと言:昔の人は、実語教とか、千字文のような中身のある書物を教材にして学んでいたのですね。今はどうなのでしょうね。


実語教:http://d.hatena.ne.jp/iirei/20120807#1344335485


また、「玄黄図」はゴッホの「カラスのいる麦畑」とコンセプトがよく似ていますが、「パクリ」ではありません。空の色をゴッホは青く塗っている点、などなど・・・描き終ってからそういえばゴッホは麦畑を群れて飛ぶカラスの一団を描いていたな、と思い出しました。むしろ、易経的真理を知らないながらも、これほどの絵を描いたゴッホがスゴイと思います。


千字文 (岩波文庫)

千字文 (岩波文庫)

易経 (中国の思想)

易経 (中国の思想)

もっと知りたいゴッホ―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

もっと知りたいゴッホ―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

書聖 王羲之の書

書聖 王羲之の書





今日の一品


クサギの炒め煮



クサギ(臭木)は、嫌われ者ですが、美味しい一品になります。過去ログでも取り上げています。

http://d.hatena.ne.jp/iirei/20130524#1369369540 など。


また優美な花と実は茶花として珍重されます。

 (2016.06.01)



@ハンペンの味噌焼き



むかしはハンペンが嫌いだったのですが、おでんネタとして食べてから見直し、たまに食べています。今回はちぎったハンペンにオクラ、山椒粉、味噌を混ぜてレンジで軽くチンしました。味噌の場合、混ぜ方に差が出て、味に濃淡が出ます。良く言えば、“色々な味が体験できます。”

 (2016.06.04)



@アカザ(シロザ)のマヨネーズ和え



夏になると、我が家が食する野草。粉っぽい風味なので、マヨネーズとカツオ節で和え、ナツメグを振りました。


http://d.hatena.ne.jp/iirei/20130728#1374980189 参照

(2016.06.05)



@梅干し作り





今回は小ぶりな梅(小梅ちゃん)を使って梅干し作りに励みます。やや赤黄色くなった梅を、一日置いておき、水に8時間ほど漬けて、梅1kgに対し塩260gで交互に敷いておきます。おおむね「土を喰う日々」(水上勉)の梅干し作りに準拠しました。

 (2016.06.05)





今日の詩(2編)


市松模様



朝日に照らされ
細い丸太の手すりから
地面に落ちる影。


これがなにやら
市松模様に見える
なかなか美しい景色だ。


ただこの写真を見た弟は
阿弥陀くじだと言っていた
それもありカナ。

 (2016.06.03)




@水田と麦畑


ふと見ると
水田の畔(あぜ)が決壊し
隣の収穫間際の麦畑に
水が流れ込んでいる。


もし麦畑が水びたしになれば
麦の収穫は一苦労だろう
これはモメルぞ――流血の惨事?
それにしても畔作りが下手だなあ。

 (2016.06.04)





今日の一首


梔子(くちなし)の
甘き香りを
一人占め


この香(か)に勝る
香(こう)ぞ乏しき



梔子の学名は Gardenia jasminoides  で、ジャスミンのような香りの植物ということですね。ガーデニアとは園芸作業に向く、という意味でしょうか。

 (2016.06.02)




現在、ブログの更新はおおむね6日に一回行っています。