ギャグ漫画の華:赤塚不二夫、ほりのぶゆき、中川いさみ
マンガには大きく分けて2ジャンルあります。ストーリー漫画とギャグ漫画です。前者は長さは色々ですが話の筋があり、その筋書に従って話が進行する漫画で、「マンガの神様」:手塚治虫さんが代表格です。世にあふれる漫画のほとんどはストーリー漫画と言えるでしょう。一方後者は、比較的短く、おおむね4コマくらいの分量で笑いを提供する漫画です。赤塚不二夫さんが代表格です(注:赤塚さんには4コマ漫画はほとんどありません)。集英社主催の漫画賞には、ストーリー漫画の領分の「手塚賞」、ギャグ漫画の領分の「赤塚賞」というのがあり、今でも若手漫画家の登竜門になっています。
ところで、このブログを今読んでいるあなた、ストーリー漫画とギャグ漫画、「どっちが大変」=「漫画を描く者の苦労が大きい」と思いますか?――それはギャグ漫画です。まあ、ストーリー漫画家なら、ストーリーさえよく練れていれば、途中失速しても、なんとか続くものですが、一発芸であるともいえるギャグ漫画を描くギャグ漫画家には、漫画を描くのに、非常に大きな「生みの苦しみ」が付き纏います。同じギャグを使おうものなら、読者が敏感に反応して、NGとされてしまうのですし。そのせいか、ストーリー漫画家と比べ、ギャグ漫画家の漫画家としての寿命は短いと、一般的に言えるでしょう。
そんな過酷な条件で、名をなしたギャグ漫画家を3人挙げてみましょう。最初は赤塚不二夫さん。幾つもの傑作がありますが、ナンバー1は何と言っても『天才バカボン』だと思います。もっとも印象に残るスケッチは・・・一家でレストランに行って、財布を忘れたことに気付いたバカボンのパパ、自宅に戻り家族に声を掛けても反応がなかったので、玄関のドアを破って家に入り、財布のありかを捜しますが、見つからない。ふと気づくと、部屋は荒らされ、玄関は破られ・・・パパは「泥棒に入られた!」と警察に通報します――なんともはや、パパの精神の尋常でないありさまをはっきりさせる出来事でした。コルサコフ症候群?
ほりのぶゆき(ほり・のぶゆき)さんは、週刊スピリッツで『江戸むらさき特急』という時代劇に想を採った4コマ漫画を連載していました。見慣れた時代劇の裏を言うことで、「ギョッ」とした感情+なるほど感を読者に与えます。たとえば
@1:「桃太郎侍」を知っていることを前提に・・・
悪党たち:「なにやつ?」
桃太郎:「桃から生まれた桃太郎。」
悪党たち:「まずい、バカだよ・・・」「まずいよ、ねえ・・・」
(ここで悪党たちは、人間が母親から生まれてくることを「知らない」桃太郎に恐怖感を抱いているのです。)
@2:「水戸黄門」を知っていることを前提に・・・
(黄門役を新たに引き継いだ役者、慣れない役なので、助さん、格さんに叱られる日々。)
水戸黄門(置手紙):「疲れた、旅に出ます」
助さん、格さん:大慌て。
(本来、世直し旅に猛然と出かける黄門が、傷心の一人旅にでることのギャップがユニークな一話です。)
中川いさみさん。不条理漫画の担い手の一人でした。「流行るんです」の吉田戦車さんと同時期に活躍しましたが、センスの良さとギャグの切れ味は、中川さんの方が上だと考えます。代表作の「クマのプー太郎」は、ジャンルは問わず漫画界の金字塔と言っても良いでしょう。いろいろなキャラが登場しますが、特に「泣き虫おやじ」。この人の喜怒哀楽は一般人とは異なり、何かと言うと、泣き叫びます。そしてひとしきり泣いた後は、何事もなかったかのように、熟睡するのです。
@1:郵便物が届いた泣き虫おやじ、パッケージを振ってみて、「何か入っているよ、何か入っているよ!」と号泣します。そして熟睡。
@2:電車の座席に女性が座っている。泣き虫おやじは、車両の端から、等間隔で両手をシートに押し当てながら次第に女性に近づいていく。嫌がった彼女は席を立ちます。そして女性が座っていた座席に行きついた泣き虫おやじは、「ここだけ温かいよ~~!」と泣き叫ぶのです。
今日のひと言:最後の中川いさみさんのマンガ、解らない人には、まるで解らないかも知れません。まあ、それでこそ「不条理」漫画なのですが。ギャグ漫画には、哲学の香りさえ感じます。また、優れたギャグ漫画には、コミュニ―ケーション・言語についての研究材料が一杯だとも思います。
今日の一品
@澤乃井の炭酸水割り
澤乃井(さわのい)は、東京・奥多摩の日本酒。こよなく愛する地酒です。私としては、初めてソーダ割りにしてみました。これが案外美味しい。私にとっては、恋愛の思い出のある酒なのです。
(2021.07.31)
筑前煮のほか、ピーマン、パセリなどを入れました。ボリュームで勝負。
(2021.07.31)
@ナスの味噌漬け
この前新生姜の漬物に使った味噌を再利用。2本の小茄子、1本を縦に4分割して、塩水に2時間ほど漬け、和からしを足した味噌に2日間漬けました。ほどほどな塩味がグッド。1枚目の写真は、表面を味噌で覆い尽くす前のものです。
(2021.08.02)
今日の六句
立ち並ぶ
糸杉異形
ゴッホ呼ぶ
糸杉であるかどうかは正確には解りません。
(2021,07.31)
猫が去り
無音になりて
数年が
野良猫のいない道は淋しいです。
(2021.07.31)
畑主
キク科の野菜
好きなよう
ヤーコン、キクイモなど。
(2021,07.31)
力尽き
堕ちたるセミの
轢かれけり
(2021.07.31)
大光院
コケが芝生に
置き換わり
ちょっと淋しい。
(2021.08.01)
長老の
風格のある
墓石さ
ちょうど、白いヒゲを蓄えたように見えます。
(2021.08.01)
今日の写真集
大光院ちかくの「あみだ堂」で見かけた猫。 (2021.08.01)
クサギの花 秋にはカラフルな実が成ります。 (2021.08.01)
☆☆過去ログから厳選し、英語版のブログをやっています。☆☆
“Diamond cut Diamond--Ultra-Vival”
https://iirei.hatenadiary.com/
ダイアモンドのほうは、週一回、水曜日か木曜日に更新します。
英語版ブログには、末尾に日本語ブログ文も付記します。記事は
虚虚実実――ウルトラバイバルとはダブりませんので、こぞって
お越しを。