「天才バカボン」特集その2(完結)
今の中学はどうだか知りませんが、私の頃は、弁論大会が盛大に開催されており、(中学に問い合わせたところ、今はやってないそうです。)目立ちたがりの私としては、相当力を入れて臨みました。テーマは何でも良く、優秀者は賞をもらえます。おおむね、先生がたの気にいるようなテーマにするのが無難ですが、審査をするのは先生方ではなく、生徒でした――と、最近恩師に教えられました。
私は、中2、中3時にエントリーしました。ところで、私の人望についてですが、中学初年度はクラス会の書記でしたが、だんだんランクが落ちて、しまいには「クラス美化委員」でした。目立ちたがりやで理屈っぽい私の人望は漸減していました。ちなみに、委員長は、加藤 剛に似ているスポーツ万能の人物でした。負け惜しみに、「いいとも、クラス中を浄化してやる!」と考えました。「浄化」とは、旧ユーゴスラビアのミロシェビッチ大統領みたいで、今考えると薄気味悪いですが。
中学2年時は、ノストラダムスの例の「1999年、人類滅亡」と言う、結局当たらなかった予言に示唆を受けて、人類の生活様式の、あるべき姿について考察しました。中々大部の原稿でした。例えば、移動式住居などで薪をくべて暖をとる暮らしの、どこが近現代の生活に劣るのか?――― などという問題提起をした記憶があります。同級生たちからは、まるで論文みたいだ、と評されました。先生からは、ノストラダムスを予言者と呼ぶのなら、モーゼやキリストは、「神の言葉を預かる」という意味で、預言者というのだ、と教えられました。
3年時は、「熱中すること」というテーマで、赤塚不二夫の「天才バカボン」にあった話について考察しました。その話とは・・・何にでも疑問を抱き、「どうしてですか?」としつこく両親に質問しまくる、ある意味問題児がいました。あまりにしつこいのに手を焼いた両親は、彼にジグソーパズルを買ってやり、与えました。彼は親の期待通り、パズルに熱中しはじめます。ところが、ひとつのピースの入れ場所がわからず、フリーズしてしまいます。彼のまわりだけ、時間が止まるのです。
ただ、それにはお構いなく世の中は動いていきます。大不況が来ます。第三次世界大戦が来ます。母がその戦争のため亡くなります。また時は流れ、父も衰えていきます。その間、少年はじっとピースを見つめたまま考えています。ついに父にも死が訪れますが、少年は微動だにしません。父の最期の言葉:「今乃進(少年の名だったと記憶しています)、そのパズルだけは完成させろよ」と言って事切れます。それでも彼は微動だにしません。
それからどれほど時が流れたか・・・遂に彼はピースの入る場所を発見し、パズルを完成させます。そしてパズルを与えてくれた父、母に、真っ先に報告に行きます。「お父さん、お母さん!パズルが解けたよ!」と。ところがそこには父も母もおらず、外の世界は一変していました。彼の言葉:「ワー!どうしてですか?!」
現代版「浦島太郎」ということになりますかね。この話は完全なるギャグ・マンガであり、「馬鹿な子供のいることよ、」と笑って済ます人が大部分でしょう。私はしかし、この話にとても惹かれました。「今乃進」を尊敬さえしました。それってING・・・「現在進行形」というネーミングですね。大学の教養課程でならった論理哲学者・ヴィトゲンシュタインの言葉 「今を生きるものは永遠に生きる」(論理哲学論考)という境地とほとんど変わりません。私は今乃進を称える趣旨の弁論をしました。傍から見て、どんなに詰まらない事柄でも、それに熱中することは、大事なことであり、それを行う者も尊敬に値する、と。さて、大会の結果及び私の成績ですが、私を含めた3名で一位を分け合いました。それぞれに個性的で順位をつけ難い、と言うのが審査員たちの判定でした。当然単独一位になると思っていたので少々不満でしたが、私は結果を受け入れました。
普通、「マンガを読むのは時間の無駄であり、マンガは有害だ」と言う保護者も多いと思います。そんな人に限って子供時代はマンガを読んでいることが多いと思います。それはつまり、その保護者がそのような読み方しかしていなかったからだと考察します。
今日のひと言:以上は拙著「東大えりいとの生涯学習論」(電子書籍。e-bookland)に収めた一文です。あとで「天才バカボン」原典を見てみたところ(コミックス第17巻)、主人公の名は「竜之進」でした。私の記憶がちょっと不正確でしたが、「進」という辺りの語感は捉えていたな、と感じます。赤塚不二夫のギャグ漫画は、哲学的でもあるのです。
不世出のギャグ漫画家、それが赤塚不二夫です。彼が亡くなった際、タモリ氏が弔辞を述べ、「私はあなたの作品でした。」と言っていたのが印象的です。なお、天才バカボンの場合、かならずしもバカボン一家が登場するとは限らず、今回のようなお話もあまたあります。
今日の一句
プランター
びっしり生える
ツルナかな
ツルナは、主として海辺に生える野草で、食用になります。シュウ酸が多いので、茹でたあと、念入りに水に浸さなければなりません(20―30分)。そのあとお浸しなどに用います。写真は「胡麻油醤油和え鰹節添え」です。別名ホイト菜。ホイト=乞食が食べたという謂れがあるようです。話題の新野菜・アイスプラントもこのツル菜と同じ「ハマミズナ科」の植物です。
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20090518#1242645239
:アイスプラント・・・今話題の新野菜とシュウ酸 参照。
(2012.06.16)
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