知を楽しむから「ニセ学生」:単位にならなくても聴講する
知を楽しむから「ニセ学生」:単位にならなくても聴講する
むかし、今東光(こん・とうこう1896-1977)という男がいました。職業は、小説家・僧侶・政治家(自民党、参議院議員)。多才な人です。かの瀬戸内寂聴(俗名:瀬戸内晴美)を出家させた張本人でもあります。
私が今氏を知ったのは、週刊プレイボーイの連載エッセイ「極道辻説法」でした。若いころからヤンチャな今氏、いろいろ破天荒なことを行うので、面白く読んだのですが、いくつか書いておられたエピソードで、かれの文学的経歴に関するお話しが特に印象に残っています。今さんは、ノーベル文学賞受賞者:川端康成さんの親友で、川端さんは東京帝国大学文学部の学生であり、当然東京帝国大学文学部の授業を受けて、単位になるのですが、今氏は、「東京帝国大学の学生ではありません」でした。(コトバンクによると、関西学園中等部中退)当然、いくら真面目に講義を聴いても、単位にはならないのです。それでも、川端さんと仲良く聴講したわけですね。なお、今東光さんは『お吟さま』で、第36回直木賞を受賞しています。努力が実ったわけです。
このような行為の源泉は何でしょう?それは「知的好奇心」あるが故でしょう。「知を愛す」・・・ただそれだけの充足を求めた行為なのでしょう。そういうことなら、今氏の選択も、けっして無意味ではありますまい。
こういった学生のことを「ニセ学生」と呼びます。私がいた「自主講座」という市民運動の一つ「大学論」というユニットは、「ニセ学生」を奨励していました。優れた業績のある大学教授の授業を、その所属する大学の学生たちに独り占めさせるのは、もったいない、という主張です。ちなみに、私の知り合いの女子大生の母校(音楽大学)に、彼女に付いていき、授業で「音楽は死んだ」と発言したりしましたねえ。ニーチェか、お前は?てな感じです。これは、音楽を学ぶ態度ではありませんでしたね。ニセ学生、失格。
ところで、最近の大学生は、大学を就職のための予備校くらいに考えていて、それに資する講義を聴講して単位を取っても、役に立たない講義には見向きもしないでしょう。当然、他大学の聴いたって単位にならない講義に出席することもないでしょう。・・・それは何を意味するか?・・・大学生の知的好奇心は減退し、大学を卒業して組織に入っても、平板な仕事をやって、定年まで勤めるのが落ちでしょう。うすっぺらな社会人になるということ。
以前、「ボランティア」について拙ブログで書いたのですが、最近の傾向として、なにやらボランティアを行うと、大学から単位を貰えることがあるということ。・・・これはトンデモないお話しで、ボランティアは、単位なんか関係なく、たとえ無理解な世間にうんぬん言われても、行うこと、それがボランティアだったことが本義です。単位を貰えるボランティアなんて、気持ち悪いだけです。
今日のひと言:最近の「コロナ禍」でも、ニセ学生に逆風が吹いています。この病気が流行し始めることを契機に「遠隔授業」を取る大学が多くなりました。このシステムの場合、当該大学発行のID、Passwordが無ければそもそも授業に出席できません。そんなもののないニセ学生は、「名講義」を受けられないのです。せめて、ニセ学生があちこちに出没する大学教育であって欲しいと私は思います。さもないと、大学はモノカルチャーの弊害に陥り、生気を失うでしょう。(もう、なっている・・・)
今日の一品
@キュウリのさっぱり煮
むかしミツカン酢がやっていたCMから、料理名。5本の曲がったキュウリを切りそろえ、唐辛子1本、水、醤油、蜂蜜で茹で、色が褐色になったら、仕上げに酢。あっさり、さっぱりしているのが良いです。
(2021.07,24)
@ナメコとオクラの和え物・レホール風味
ねばねばのナメコとオクラを一緒に茹で、醤油。すりレホール(西洋ワサビ)で和えました。意外に辛さは利きませんでした。
(2021.07.25)
今日の詩(2編)
@早朝、ある老婆
白髪でバケツを手にしたお婆さん
河原のカラスウリを摘んでいる。
どうするかと見ているに
それを川に投げ入れている!
なんなんだろうその行為、
私は彼女のメンタリティを疑う。
(2021.07.23)
@石ころの小宇宙
ジャリ敷きの駐車場
敷かれた石たちを見ていると
それらが回転しているように見える
一瞬、目がくらむ。
ああ、私は
銀河系宇宙を見ているのだ。
(2021.07.23)
今日の五句
水しぶき
受けて青青
コケの顏
(2021.07.23)
豊饒(ほうじょう)を
約束したる
紙袋
ブドウの若い実に被せるのです。
(2021.07.26)
ジェノサイド
逃げ来るかや
梶の木よ
この春、雑木林が伐採され、主体だった梶の木が消滅しましたが、ちょっと離れた場所に避難したように見えました。
(2021.07.26)
コケたちが
ボルダリングす
門の壁
(2021.07.27)
白蜘蛛(しろくも)の
空(そら)に糸張る
アザミの実
タンポポのように、綿毛を飛ばすのです。大き目です。
(2021,07,28)
今日の写真
クコの花 ナス、ジャガイモに似た紫色の小花。 全てナス科。(2021.07.30)
☆☆過去ログから厳選し、英語版のブログをやっています。☆☆
“Diamond cut Diamond--Ultra-Vival”
https://iirei.hatenadiary.com/
ダイアモンドのほうは、週一回、水曜日か木曜日に更新します。
英語版ブログには、末尾に日本語ブログ文も付記します。記事は
虚虚実実――ウルトラバイバルとはダブりませんので、こぞって
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