虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

『図解保健体育』(高校教科書):医学への導入に当たる科目

『図解保健体育』(高校教科書):医学への導入に当たる科目


私は以前、朝ゴミ出しされた物品を拾う趣味があり、金物、陶器、書籍などを拾い集めていました。その中には今でも大切に使っているものもあり、中国の古典『易経』とか、小鍋(ゲンノショウコなどの薬用植物を煎じるのに最適)とかがあり、面白い所では、中学・公民の教科書にあった「米代、銭湯、鉄道初乗り料金、理髪料」などの経時的上昇の一覧表から、理髪料の上昇が他の料金より高騰していたことを読み解き、ブログに記載したことがあります。


iirei.hatenablog.com

 :理髪料金の不思議


さて、『図解保健体育』(一橋出版)。保健体育と言えば、中学生という思春期まっただ中、女性の乳房が描かれたイラストに異常な興味を示す男の子(私も含め)の姿があり、これっきし授業については覚えていません。さらに高校に進んでからは、保健体育の授業があったかどうかも定かではありません。生き物に関することで言えば、ちょうど中学の理科2分野の延長上に生物の授業があった程度で、高校の4つの理科の科目・・・物理、化学、生物、地学のうち、理工系を目指していた私などは物理と化学は熱心に学びましたが、生物、地学は通り一遍の授業がなされ、また学生もこの2つには熱を入れている者は少数派でした。



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人体の取扱説明書(ニュートン別冊)


そして、案外落とし穴であることとして、高校の生物は、細胞の構造などについては詳細に教えますが(DNA、ミトコンドリア、ゴルジ体など)、人体の各部の働きについては、中学の理科2分野を「継承していません」でした。この辺、くっきり欠落しているのです。そこで、拾った『図解保健体育』ですが、この教科書に目を通して、しっかり理科2分野の人体に関する記述を継承しているのに驚きました。


この科目は大きく2つに分かれていて、1)スポーツ生理学 2)人体の機能 となっています。スポーツ生理学は、各種スポーツを行うに当たってどんな生理的現象が起きるのかを分析するもので、ちょうどこのセクションは体育系大学の教程に接続するのですね。


人体の機能についてなら、脳の機能、呼吸器系、循環器系、泌尿器系、および生殖器系などについて過不足なく知識が伝わるようになっています。これは、医学系大学に繋がる大事なものであり、高校の正規の授業からは零れ落ちるコンテンツを補完するようになっていると思われます。


更に、特記しておきたいのは、日本という国が明治時代以来行ってきた愚行・・・公害問題についても、記載があることです。大気汚染、水俣病イタイイタイ病、騒音、地盤沈下、化学物質(PCBなど)について、かなりのページ数を割いて記述していることです。このような諸問題とともに、不運にもこれら公害に由来する病気になったときのケアなどについても記載されているのが斬新です(公衆衛生)。労働災害なども詳細に記載され、いかにも総合科目と言った盛りだくさんの内容です。



今日のひと言:この教科書、環境問題については、私がその問題(特に水問題)を専攻していたころの東京大学工学部都市工学科・衛生コースで教わったことより高度な内容を持っています。あのころ、私が選んだ衛生コースは「最低の」授業内容を誇り、なんでも「日本船舶振興会」のパンフレット・・・「ダムは観光資源として優れている」とかいう下らないものを考察してレポートを書かされるアホな演習(必須)があったくらいです。担当の助教授(当時)は、水処理会社の営業をしていたときに多額の賄賂を扱っていたと自慢げに語る下らない人だったのです。


現在は、環境科学コースと「スマートな」名称に名を変え、ここを目指してくる偏差値の高い学生が多いようです。私が学生のころは、「おしっこ・うんち」を扱うので、学生は忌避する者が多かったのです。こうなると、あの助教授の居場所はないでしょうね。もっとも、それは、相対的な問題で、いまの「環境科学コース」が優れているという意味ではありません。


『図解保健体育』改訂版 1993年 出版  (最近知ったのですが、良心的な、主として商業高校の教科書を主に扱っていた一橋出版は、2009年に業績不振で、倒産したそうです。)








今日の詩


SDGsとは(散文詩

Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)という言葉で、最近よく聞くようになった。言葉としては持続可能ということと、それに相反する開発ということが、ひとつの言葉のなかに共存している。昨日見たTV場組では、「コーヒーの搾りカスをリサイクルしました」、とかいう消費者が取り上げられていた。・・・でも、これは欺瞞だ。この種のリサイクルをやって、なにか環境に優しいことをやったと、自己満足に浸っているに過ぎない。こういう人に限って、水洗トイレをなんの疑問も抱かず使っているだろう。ここが問題なのだ。水洗トイレは、人間が発明したものの中で、最悪のものの一つだ。自分の出した排泄物に、なんの責任も負わずに、環境汚染の片棒を担ぐのだから。SDGsは、その意味で、ツマズキの石である。水洗トイレではなくコンポストトイレのほうがまだマシだ。厨房ゴミより糞尿の処理のほうが、環境に与える影響が大きいだろう。大学の先輩の衛生工学者は、国連で働いていたが、こと水処理では、水洗トイレをイメージした仕事をやっていた。これではダメだ。


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 (2021.11.03)








今日の4句


露か霜?
ホトケノザ濡らす
煌めきは


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どっちが空から降ってくるかは、いまの時期解りません。

 (2021.10.28)



公園の
木の枝打ちで
目が覚める


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毎年、晩秋~初冬に行われる公園のメンテ。チェンソーの音が喧しい。一昨年にはハクモクレンの枝を減らし過ぎ、翌年はたいして花が咲きませんでした。

 (2021.10.29)



目立つなあ
このサルビア
赤花は


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冬であっても、元気、元気。

 (2021.10.30)



日陰にて
しずかに咲くや
ヤツデ花


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ヤツデはウコギ科の植物で、この科の植物としては珍しく、食用にはなりません。薬用にはなるとか。
 
 (2021.10.31)





今日の写真



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アフリカン・マリーゴールド。畑に一株残っています。生物農薬として、数メートル圏の線虫を殺すと言います。 (2021.10.31)








☆☆過去ログから厳選し、英語版のブログをやっています。☆☆


“Diamond cut Diamond--Ultra-Vival”



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ダイアモンドのほうは、週一回、水曜日か木曜日に更新します。
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虚虚実実――ウルトラバイバルとはダブりませんので、こぞって
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