衛生工学を舐めるな!:素人受けする水質浄化グッズ
衛生工学を舐めるな!:素人受けする水質浄化グッズ
私は、衛生工学の専門家です。特に、水という分野については人後に落ちない研究をやって来ました。水関係の諸技術にも大いに取り組みました。ここに、あるブログで、ある種の水浄化技術が取り上げられました。どれどれ、どんな物か見てみると、なんだか火山礫から、「微生物を元気にする成分が流れだすので、これによって微生物が元気になり、水質浄化が期待でき、地球さんに恩返しができる」のだそうです。・・・素人の考えることは、これだから怖いです。こんなチャチなグッズで、水質浄化できるのなら、水処理技術は要りませんし、ひいては衛生工学など、必要ありません。その衛生工学ですが、以下のように説明されます。
公衆の健康の保護と増進を目的にして、工学の諸原理を環境の汚染防止と生活環境の保全に応用する学問分野。人々の生命と健康を脅かす原因が文明や社会の発展に伴って変化するので、目的指向である衛生工学の対象も、都市の上下水道から大気や水質の浄化、騒音振動制御、産業排出物制御、最終廃棄物管理、放射性排出物管理、建築物の空調暖冷房、工場内作業環境の制御、地域の物質代謝施設計画、大気や水質および土壌環境の計画と管理、立地計画など広範多岐にわたっている。そのために必要な学問分野も、(1)改善または保全の目標を定めるために生理学、公衆衛生学、動植物生態学、流れ学、気象学、統計学など、(2)改善策を講じるために土木工学、化学工学、微生物工学、流体工学、熱工学、システム工学など、(3)計画をたてるために計画数学、地域計画学、都市計画学、経済学など多岐にわたっている。第二次世界大戦後、北海道大学と京都大学に衛生工学科、東京大学に都市工学科、大阪大学に環境工学科がそれぞれ工学部内に設けられた。他の大学では工学部の中に関連講座が設けられている。
https://kotobank.jp/word/%E8%A1%9B%E7%94%9F%E5%B7%A5%E5%AD%A6-35909
(注:「衛」とは、「真ん中のものを守って巡回する兵」というのが語源です。)
まあ、私も、衛生工学を進路に選んだときは、よく内容は解りませんでしたが、当時落ち込んでいて、「うんこ、おしっこ」を扱う「汚い所」だよ、と教えられて、それなら、落ち込みついでに、汚いところに行ってやれ、と投げやりに進学したのです。上の解説では多岐にわたる適用範囲があるとされていますが、私の頃はおおむね水問題が主で、上水道・下水道・河川湖沼などに研究は集中していました。
下水処理については、旧来型の「活性汚泥法」を進化させた、宇井純さんの「酸化溝」について、その性能チェックのための(学生による)プロジェクトに参加したりして、下水処理の大変さは身に沁みました。前提として、「どんな排水でも受け入れて、ちゃんと水質浄化して、なんぼのもん」とされるのが下水処理です。プラント(施設)の維持管理は、まさに水処理技術者の真剣勝負の場です。下水処理場では、活性汚泥(かっせいおでい)という土から導いた微生物群が盛んに汚水中の有機物を「食べて」、水の浄化の一翼を担うのですが、それだけでは、水質浄化は途中です。有機物以外にも、窒素(N)、リン(P)などの、より高度な除去技術を必要とする物質があるのです。処理しようとすると、それなりに大きな費用が掛かります。
これが、下水処理の現状です。そういった視点から、件のグッズを見てみるとどういったことが言えるか・・・
XXXXXとは(筆者注:伏せ字にします)
火山礫を主原料とした微生物活性材です。
XXXXXがその場にいる微生物さんたちを元氣にして、元氣になった微生物さんたちが汚れを分解していってくれます。
XXXXXをトイレの水洗タンクの上に置くだけで、流れる水は微生物さんたちを元氣にし
トイレで水を流すたびに下水から川、海へと続く水の流れがキレイになってゆくのです。あなたのトイレにちょこっと置くだけで、地球さんに恩返しできます!
(某ブログより。考えるところあり、匿名にしておきます。)
バカバカしくて、話にもなりません。トイレで流される汚染物質はおしっこ、うんこで、有機物、窒素、リンの塊りです。火山礫から、いかほどかの浄水効果が期待できるほどのものでしょうか?また、このブログを書いた人は、どのような微生物を指して、浄水効果が期待できると言っているのか、不明です。微生物=水質浄化となんとなく考えている節があります。こんな素人考えを、ブログで明文化できる神経は、まさしく地球を泣かせます。
今日のひと言:そもそも、水洗トイレを使用することを前提に、環境問題を考えること自体、人間の奢りです。固形物である「うんこ」を希釈して水処理して、活性汚泥を再び固形物にするというエネルギーの無駄に、そもそも考え至るべきなのです。「うんこ」「おしっこ」を堆肥化出来るコンポスト・トイレなんて、聞いたこともないでしょうね、この人、素人だから。(別に、このブロガーに恨みがあるわけではありません。ただ、あまりの誤謬に、刺激されてこのブログを立てたのです。)
なお、現在、東京大学工学部都市工学科には、「衛生工学」ないし「衛生コース」は存在しません。「環境科学コース」と自称しているようです。何となく、「小奇麗な」感じのする呼称です。もとの「衛生」=「生命を守る」というコトバのほうが直接的で良い名称だと思います。まあ、改名した関係者も小奇麗な方が良いと考えたのだろうし、その「表面的な」カッコよさに惹かれて、ここに進む東大生も現在は多いのだと考えます。私がそこにいた頃、「うんこ」「おしっこ」を扱うので、汚いと敬遠する学生が大多数でしたよ。
参考過去ログ
参考HP(コンポスト・トイレの実際)
https://www9.plala.or.jp/Jussih/puusee/kpt-vessa.htm
(ここからだと上手く接続できないようです。このURLをコピペして、別個にグーグル検索をすると出て来ます。)
- 作者:宇井 純
- メディア: -
ごみはどこへ行くのか? 収集・処理から資源化・リサイクルまで (楽しい調べ学習シリーズ)
- 発売日: 2018/01/18
- メディア: 単行本
マスタープランと地区環境整備―都市像の考え方とまちづくりの進め方 (都市計画実践叢書)
- 作者:森村 道美
- メディア: 単行本
(ここに挙げた4人は、全員都市工学科でお世話になった方々です。)
今日の一品
@ネギヌタ
ネギが大量にあるとき作る料理。輪切りにしたネギを茹で、辛子酢味噌で和える簡単な料理ですが、これが美味しい。ネギはフランスでは「貧乏人のアスパラガス」と言われますが、決してアスパラガスに劣りません。
(2021.02.26)
@ひよこ豆のスープ
土日でカレーライスの具にする積りで水に漬けていたひよこ豆、弟の体調不良のため取りやめたので、一食分のスープにし、私ひとりで食べました。圧力鍋で定常7分、冷まして手鍋に入れて加熱、粒をつぶしながら加熱、塩、ラー油、カルダモン(パウダー)を加え、刻みネギを入れたお椀に。美味。色がちょうど味噌汁みたい。
(2021.02.27)
@牛バラ肉のキャベツ入りみぞれ煮
弟作。牛肉を卸し大根で1時間漬け、キャベツを加えて醤油とホンだしで10分くらい煮て、仕上がりの前に再び大根卸しを入れ、火から降ろす。
(2021.03.02)
@セロリとキャベツの塩炒め
スーパーに、カキナ目当てで行ったのに、売り切れていたので、替わりにセロリを買い、余っていたキャベツを合わせて炒めました。クコの実入り、塩、クローブ(パウダー)。
(2021.03.04)
@サワラの牛丼のタレ漬け焼き
使わずに余っていた「牛丼のタレ」(日本食研)でサワラを3時間ほど漬け、レンジでチン。味が沁みて美味しかったです。
(2021.03.05)
今日の四句
元気なり
ゲンノショウコの
春の顔
(2021.02.27)
白梅の
遥かに見ゆる
香りかな
(2021.02.27)
蹲る(うずくまる)
猫に見えたり
置き石が
(2021.02.27)
(2021.02.28)
今日の写真集
家並みから見える武尊山
イヌが死んで半年ほど経った庭(草ぼうぼう)
☆☆過去ログから厳選し、英語版のブログをやっています。☆☆
“Diamond cut Diamond--Ultra-Vival”
https://iirei.hatenadiary.com/
ダイアモンドのほうは、週一回、水曜日か木曜日に更新します。
英語版ブログには、末尾に日本語ブログ文も付記します。記事は
虚虚実実――ウルトラバイバルとはダブりませんので、こぞって
お越しを。