廃仏毀釈（はいぶつきしゃく）と日本民衆の精神的付和雷同性
廃仏毀釈（はいぶつきしゃく）と日本民衆の精神的付和雷同性
はいぶつ‐きしゃく【廃仏毀釈・排仏棄釈】
（「毀釈」は、釈迦の教えをすてる意）明治初年の仏教排撃運動。1868年（慶応4）の神仏分離令などの神道国教化政策の下で、神道家などを中心に各地で寺院・仏像・仏具・仏典の破壊や僧侶の還俗強制などがおきた。
もとはと言えば、大陸の進んだ文化の象徴である仏教を導入するに当たり、「本地垂迹説：ほんちすいじゃくせつ」という理論を生み出し、仏教の神々が日本でその姿を現したのである、と日本古来の神々と一対一対応を必要とするほど仏教を好んでいたわけです。その流れの単純な帰結として「神仏習合」という仏教と神道が結びついた宗教施設が日本中に存在していたのです。
ここに、明治新政府は、「神道を振興させるため、仏教と切り離す」というだけの方針だったようですが、民衆はもっと過激でした。
大政奉還後に成立した新政府によって慶応4年3月13日（1868年4月5日）に発せられた太政官布告（通称「神仏分離令」「神仏判然令」）、および明治3年1月3日（1870年2月3日）に出された詔書「大教宣布」などの政策を拡大解釈し暴走した民衆をきっかけに引き起こされた、仏教施設の破壊などを指す。
日本政府の神仏分離令や大教宣布はあくまでも神道と仏教の分離が目的であり、仏教排斥を意図したものではなかったが、結果として廃仏毀釈運動（廃仏運動）と呼ばれた破壊活動を引き起こしてしまう。神仏習合の廃止、仏像の神体としての使用禁止、神社から仏教的要素の払拭などが行われた。祭神の決定、寺院の廃合、僧侶の神職への転向、仏像・仏具の破壊、仏事の禁止などが見られた。明治4年正月5日（1871年2月23日）付太政官布告で寺社領上知令が布告され、境内を除き寺や神社の領地を国が接収した。
仏教は、民衆にとって「心の拠り所」ではなかったのでしょうか？それほど依拠していた宗教をあっさり捨て去り、あまつさえ「仏教施設、仏具、経典」などを破壊し尽すとは・・・この変わり身の速さは特筆もので、たいていの国なら、たとえばソ連の民衆のように宗教が当局から禁止されても、何十年もロシア正教を守るような態度などが普通だな、と思うのです。この日本人が往々にして流れに付和雷同する悪癖は、拭いがたく存在するものかと思わすにはいられません。コロナ禍の今現在だって、そうでしょう。
ここで挙げたイラストは、政府の行った「神社合祀」という明治末期に起きた神社の統廃合に対し、博物学者・民俗学者の「天才」・南方熊楠が「生物相が崩れ、粘菌の研究ができなくなる」と言って行った反対運動をネタにしていますが、時代は廃仏毀釈とは４０年ちかく隔たります。でも、南方熊楠が、明治初期に活躍していたら、たぶん廃仏毀釈反対運動をやっていただろう、と思います。
今日のひと言：私が大学生のころ訪ねた「鋸山：のこぎりやま」（千葉県）には名物として１５００羅漢像があり、その時何体かスケッチしました。この楽しい表情の仏像たちも、廃仏毀釈運動によって破壊され尽くされたそうです。（では、現在あるのは再建されたものだったのでしょうか？）狂気の一語に尽きます。私自身、大抵の仏教宗派については、その教理のお粗末さから、否定していますが、民間信仰としての仏教には好意的です。そんなものまで壊す気にはなりません。明治期の頑迷な民衆のようには。
参考過去ログ（仏教関連）
今日の詩
＠大字典（講談社）
この分厚い漢和辞典は、数ある漢和辞典の白眉だ。
私の大字典は、「礼の為」と母が買ってくれたもの。
もらった当初は、小学生で、その価値は全く解らなかった。
しかも、私が中学２年生だったころ、
家の事情で母は躁鬱病に罹り、私に精神的虐待を行った。
以後、母には愛情を感じなくなった。
大学時代になって、この字典を改めて手にしたとき、
知的な興味が湧き、読み込んだ。
「大字典には、全てのことが書いてある！」
「堯舜禹（ぎょう・しゅん・う）」という
古代中国の帝王の謂われ（＝語源）などが、
手に取るように解った。その他もろもろ。
こうなってくると、私のような親不孝者も、
母に感謝するべきと言えようか。
逆説的ながら、母は教育ママだった。
（２０２２．０１．０４）
参考過去ログ
https://iirei.hatenablog.com/entry/20080622
：尭（ぎょう）・舜（しゅん）・禹（う）〜〜古代中国の三皇帝（散文詩）
：英語版（日本語付き）ブログにした上記の記事
今日の４句
夜明け前
青・橙の
溶け合いて
（２０２２．０１．０７）
タンポポの
子孫飛び立つ
世界へと
（２０２２．０１．０９）
この時世
麦を作るは
篤農家（とくのうか）
それほど、農家は高齢化しているようです。
（２０２２．０１．１２）
冬枯れの
木立美し
スケルトン
（２０２２．０１．１４）
＠北朝鮮の指導部はバカだ！
北朝鮮は、新装備のミサイルを発射しては、はしゃいで全世界へと発信する。老子はこう言っている：「国家の最も鋭い兵器はなんぴとにも見せぬが良い。」（第３６章）公開してどうする。極超音速のミサイルなんて、アメリカが実戦配備しているレーザー光線兵器にかかっては、亀のように遅い。北朝鮮の誇る極超音速ミサイルは、せいぜい秒速４０００ｍといったところだろうが、光速は秒速３０万ｋｍだ。一撃でミサイルを撃ち落とせる。ある人が言っていたのだが、「北朝鮮が猫だとすれば、アメリカはライオンだ。」と。
（２０２２．０１．１１）
口上：
好評頂いた英語版ブログ“Diamond cut Diamond--Ultra-Vival”
https://iirei.hatenadiary.com/
は、１月１２日のエントリーを以って、完結しました。過去ログから、出来の良いブログを選び英訳し、その話数を、ちょうど易経の６４卦にちなみ、６４話挙げて、本ブログ「虚虚実実――ウルトラバイバル」の比較的良いダイジェストになったと思っています。訪問して下さった方々、ありがとうございました。
（２０２１．０１．１５）
