虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

ラ・フォンテーヌと鹿島茂:売れっ子仏文学者の実際

ラ・フォンテーヌと鹿島茂:売れっ子仏文学者の実際


ラ・フォンテーヌは中世フランスの詩人。その、イソップ物語に想を得た寓話集は、お色気たっぷりな小話集と並んで、今でもフランス人の必須の教養になっているようです。おおむねこんな人です。


ジャン・ド・ラ・フォンテーヌ(Jean de la Fontaine, 1621年7月8日 - 1695年4月13日)は、17世紀フランスの詩人。
イソップ寓話を基にした寓話詩(Fables、1668年)で知られる。(北風と太陽、金のタマゴを産むめんどりなど)
有名な格言に「すべての道はローマへ通ず」や、ことわざ「火中の栗を拾う」を残した。
  Wiki (ジャン・ド・ラ・フォンテーヌ)


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まあ、彼の寓話は必ずしもイソップ物語にばかり依存するのではなく、「全ての道はローマに通ず」などは独自の文言です。このフランスのエスプリ(風刺精神)を体現するラ・フォンテーヌを、現代人の眼にもよく見られるように出版されたのが鹿島茂『「悪知恵」のすすめ ラ・フォンテーヌの寓話に学ぶ処世訓』(清流出版)です。鹿島さんのプロフィールは


神奈川県横浜市出身。神奈川県立湘南高等学校東京大学文学部仏文学科卒業。同大学院人文科学研究科博士課程単位習得満期退学。大学院の指導教官は蓮實重彦だった。
著作活動としては当初は、フランス文学の研究翻訳を行っていたが、1990年代に入り活発な執筆活動を開始。1991年に『馬車が買いたい!』でサントリー学芸賞受賞、1996年『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞、2000年『パリ風俗』で読売文学賞受賞。
共立女子大学助教授・教授を経て、2008年より明治大学教授。忙しい時期は月産400枚の原稿を書いており、常時定期連載を持っている。 

 Wiki (鹿島茂

です。ある意味、売れっ子だけど、粗製乱造の気があるとも言えるでしょう。全体に、上手にラ・フォンテーヌを紹介していて、わかり易いですが、往々にしてラ・フォンテーヌの言わなかったことを、安易につけ加えることがあります。その例。「第19話 得意なものと好きなものは必ずしも一致しない」・・・「ジュノンに不平を言うクジャク」(巻の2 第17話)。自分の声の悪さに不満だったクジャクが女神ジュノンに不平を言ったところ、女神は怒り、「全ての美点を兼ね備えた動物はいない。不平を言うと、お前の羽根を全部むしってしまうよ」とするお話です。それはそれで一定の教訓がありますが、鹿島さんは以下のようなお話をくっつけてしまいます:

ファッションモデルなんて、ただ服を来て(ママ)歩いているだけだからツマンナイ。歌手やタレントならテレビに出てみんなからチヤホヤされる。ああ、私もファッションモデルなんかやめて、歌手かタレントになりたい。

 ラ・フォンテーヌの『寓話』と違うのは、テレビの世界にはこうした増長クジャクを怒鳴りつけるジュノンがいないことである。いるのは知り合いディレクターに紹介してやると甘言を弄する悪い男ばかりである。

 かくして、テレビには、歌の下手な歌手や、才能がないタレントがあふれることになるのである。

  (本書108P)


このようなつけ加えには、世の人におもねるような意識が多いにあると思えます。ラ・フォンテーヌがいう真理を「否定」することにもなりますね。面白おかしく潤色したようなつけ加えなのです。私が鹿島氏のような売れっ子エッセイストや詩人になることはないでしょうから、「粗製乱造」の謗りを受けることはないようで、その点、安心していいでしょう。



今日のひと言:以前、鹿島氏がNHKの「人間大学」だかで、山田風太郎の奇想天外な小説について、とても説得力のある分析をしていたのを見ました。すてきな言葉でした。でも無意味に言葉の力を使いすぎると、その力は使い果たされると、老子は言っています。



「悪知恵」のすすめ -ラ・フォンテーヌの寓話に学ぶ処世訓-

「悪知恵」のすすめ -ラ・フォンテーヌの寓話に学ぶ処世訓-

  • 作者:鹿島 茂
  • 出版社/メーカー: 清流出版
  • 発売日: 2013/03/21
  • メディア: 単行本
ラ・フォンテーヌ寓話

ラ・フォンテーヌ寓話

イソップ寓話集 (岩波文庫)

イソップ寓話集 (岩波文庫)



今日の一品


@スウィート人参と卵の炒めものナンプラー風味


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弟作。薄い黄色をした人参を、試しに料理しました。たしかに、砂糖を入れなくても甘く、しゃれた一品になりました。

 (2020.02.11)



@キクイモとニンジンのアヒージョ


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飛び切り辛い「黒唐辛子」で作ったアヒージョ。ニンニクと黒唐辛子を切ってオリーブオイルで炒めて味を出し、輪切りにしたキクイモとニンジンを炒め、塩を振り、さらに炒めて完成。ただ唐辛子の辛みが半端なく、しばらく部屋の空気に咽ました。


参考過去ログ

iirei.hatenablog.com

:各種イモ類の栄養価を比較してみる:イモの王者はどれ?



@干しシイタケと昆布の佃煮


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「魚干し網」で加工した干しシイタケと、昆布を戻して佃煮を作りました。一口大に切った食材を鍋に入れ、醤油、トウキビ糖で煮詰めて、水分が切れたところで山椒。美味しく出来ました。特にこの料理は、干すことによってシイタケのエルゴステリンがビタミンDになり、昆布のカルシウムの吸収を促進するわけです。

 (2020.02.15)



@身欠きニシンとダイコンの煮物


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「身欠きニシン」とは、ニシンの身を乾燥させ、カチンカチンにした保存食。昔から、山間の住民は貴重なたんぱく源として、大事にしてきました。もっとも最近はもっと水気の多いソフトタイプのものは売れますが、カチンカチンのはいまいち。私は6枚いりの身欠きニシンを、2度の値下げの末、100円になったものを入手しました。これが美味しい!一昼夜水浸して柔らかくなったものを、水、砂糖、醤油、ショウガで煮ました。

 (2020.02.17)





今日の六句



秩父なる
両神山(りょうかみさん)の
屏風かな


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埼玉県小鹿野町秩父市を隔てる山。標高1723m。古くから信仰の山。

 (2020.02.11)



夜が明けて
踏切照らす
月なりき


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 (2020.02.12)



いずこより
卵焼きの香
朝の餐(さん)


餐は、食事のこと。

 (2020.02.12)



鳥たちの
囀る(さえずる)声や
夜明け前


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犬が朝の散歩を愉しむように、鳥たちも太陽を愛でて啼くようです。

 (2020.02.15)



街角に
ズルリと落ちた
マスクかな


折からの新型肺炎のこともあり、道端の捨てられたマスクも気になります。

 (2020.02.15)



ジンチョウゲ
香りちらほら
少女かな


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 (2020.02.16)