つひに行く道:在原業平の辞世+100日後に死ぬワニ
つひに行く道:在原業平の辞世+100日後に死ぬワニ
伊勢物語特集 その1
つひに行く
道とはかねて
聞きしかど
昨日今日とは
思はざりしを
・・・これは、古今和歌集、および伊勢物語(125段)に、在原業平(ありわらのなりひら)の辞世の歌として収録されているものです。これまでと変らず、明日は当たり前のようにやってくると、つい思ってしまうけれど、明日は来ず、今日この場で、私の命も終わってしまう、なんて命の儚いことよ、と幾分驚いて、幾分嘆いている業平の姿が写されています。
若い頃の彼は、恋愛、旅、政治活動などに三面六臂の活躍をしてきましたが、いざ人生の終わりになると、とくに優れた見識も浮かばず、一般庶民のような感慨を持つのみで、死に飲み込まれてしまう・・・ここいらへんが実にリアルなのです。
在原業平(wiki)
辞世の歌と言えば、以前私は過去ログで、いろいろな人の辞世の歌を挙げたことがありますが、例えば戦国時代の武将の辞世とか、世を拗ねた歌舞伎者(かぶきもの)
の辞世には、勢いのあるものが散見され、面白いです。
@討つ者も討たれる者も土器(かわらけ)よ 砕けて後はもとの土くれ
三浦道寸 室町・武将
一種の諦観に満ちています。
@落すなら地獄の釜をつんぬいて あほう羅殺に損をさすべい
水野十郎左衛門 江戸・「かぶきもの」の武士
いかにもアクタレの面目躍如です。
そのとき私も一首作りました。
この世をば
腑分けするごと
見渡せば
我の在るわけ
自ずから知る
・・・なかなかカッコイイ歌ですが、さて、自分が死の間際に立たされたときも、こんな境地でいられましょうか?・・・自信はありません。(ある女性ブロガーには、「この歌は出来すぎている」と批評されました。)
私はこれまで1100話くらいのブログを書き連ね、これからも書いていきたいという願望はありますが、さて、私に突然死が来て、ブログが中絶された場合、私はどう諦めたらいいのでしょう。もちろん、それほどの話数、アップしたということは、私の考え方、および感性は、おおむね読者に伝っているはずで、死の前まで書き連ねたブログだけで完結している、と言っても良いかも知れません。数学的には、私のブログは「フラクタル」なのです。「部分が全体に等しい図形」・・・部分は全体を暗示し、全体は部分を暗示するのです。
そう思えば、私の死とブログは独立のものであり、私はブログのことは意識の外に置いて、この世にオサラバできるのでしょう。
今日のひと言:人間に自意識があることが、犬や猫と違う特有の苦しみを生み出すのかも知れません。いっそ、犬や猫のように死ねたら、楽ですね。
参考過去ログ
iirei.hatenablog.com
- 作者:松村 雄二
- 発売日: 2011/05/06
- メディア: 単行本
女たちの辞世の句 色此岸から夢彼岸へ(いろしがんからゆめひがんへ)
- 作者:いのうえせつこ
- 発売日: 2015/03/26
- メディア: 単行本
100日後に死ぬワニ
知人に勧められ、借りて読んでみた最近のマンガ(きくちゆうき著)。表題のとおり、話が始まって100日経って死んでしまうワニのお話です。このワニくんは特に人と違ったところはなく(もちろんワニや登場するほかの動物は人間の擬人化されたものです)、普通に仕事し、生活し、恋する存在ですが、一日ごとに、あと何日、とカウントダウンが流れる中、どんな風に死を迎えるかと、ドキドキ・ハラハラして読みました。それは静かな「行き倒れ」という結末でした。スマホで画像を、ワニくんの様子を見に迎えにいく友人が送り、それを受信したワニ君が路上で倒れ、両手でスマホを持っている姿で、スマホは道に落ちてしまっていて・・・。(交通事故に巻き込またとの説もあり)
彼は普通に生き、普通に死んでいきました。その点、在原業平の辞世の歌と二重写しになるように感じられますね。時代が変わっても、人の生のありかたは、さほど変わらないな、と考えます。
今日の一品
@カルダモン・オン・ライス
カルダモンは、世界で3番目に高価なスパイス。(1位はサフラン、2位はバニラビーンズ)カレーに不可欠ですが、我が家では、鞘から取り出した黒い粒粒をライスの上に広げ、カレーを掛けます。食べると、途中で何回か嚙むことになり、その刺激が美味しいのです。
(2020.06.21)
@大根の一昼漬け(いっちゅうづけ)
作家の故:水上勉さんは、夏の一夜漬けを推奨していましたが、私は忙しい男性が、朝漬けて夕方食べると言う意味で、「一昼漬け」を提唱します。今回、皮を剥いた大根を銀杏切りにして、青じその葉とともに、塩漬けしたのです。良いお味です。
(2020.06.23)
今日の詩
@失恋と『らんま1/2』
還暦になってネット上で恋をして
「男から言い出すのが優しさと信じてる俺だぜ」とばかり
果敢にアタックして、見事に袖にされたぞ
でも彼女は私から持ちかけた恋に対し
含みを持たせて「今」はダメと言っていた。
粗雑に生きる私という男はその部分否定を全否定と捉えた。
むかし付き合っていた男たちの例を持ち出し
「貴方はone of them なだけよ」と言ったのだと思った。
でも仔細に見ると、彼女はそう書いていなかった。
私はむかしのアニメ『らんま1/2』を思いだした。
男らんまは「振りかざす恋心、見抜きもしないでニブい奴」と歌っていた。
そりゃ、あかねは引くわ。
こんなのもある。あかねが歌うに、
「迫力で口説かれ街に逃げ出した
あこがれていたデートがマラソンになっちゃう」
このような男女のすれ違いの表現が巧みな
高橋留美子さんは、既に
私の茶番劇を見透かすように描いていたのだ。
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注:3つの独白は、関連音楽CDの歌詞を参考にしています。
「男から・・・」は「今夜はエイプリル・フール」(らんま1/2歌暦)
「振りかざす・・・」は「かわいくねえ、色気がねえ」(らんま1/2熱闘歌合戦)
「迫力で・・・」は「じゃじゃ馬にさせないで」(らんま1/2オープニング主題歌集)
だったです。(歌詞は、ちょっと不正確に覚えています。)
(2020.06.21)
「らんま1/2」に関する過去ログ2話
今日の二句
よろしきか
ジャガの茎葉を
サトに上げ
収穫後出てしまった不要な茎葉を、これから育てる作物のマルチにしていて、とっても合理的です。(ジャガ=ジャガイモ、サト=サトイモ)
(2020.06.20)
路上にて
コケに目の行く
仕事柄
最近、苔の栽培の仕事をやっています。
(2020.06.21)