虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

「らんま1/2」と「とりかへばや物語」  

 
らんま1/2」特集その1


おんならんま(閉幕的主題歌集:ポニーキャニオン)→


 1980年代後半から1990年代中盤にかけて大ヒットした「らんま1/2」(高橋留美子:たかはし・るみこ)は、一人の男の子のキャラクターが、水を浴びると女の子になり、お湯を浴びると男の子になるという、ある意味、隠微な設定が受けてロングランになったマンガ作品、またアニメ作品です。

似たような設定のマンガに「おとこ女おんな男」という作品があり、2人の二卵性双生児のキャラクター(姉弟)が互いの通う学校を取り替えるというお話もありました。(安部秀司週刊モーニング)この話でも、姉が男性的な性格でした。


 じつは、「おとこ女おんな男」の設定はオリジナルなものではなく、遠く平安時代後期に書かれた「とりかへばや物語」と瓜ふたつなのです。この物語の要約は



関白左大臣には2人の子供がいた。1人は内気で女性的な性格の男児、もう1人は快活で男性的な性格の女児。父は2人を「取り替えたいなあ」と嘆いており、この天性の性格のため、男児は「姫君」として、女児は「若君」として育てられることとなった。


男装の女児である「若君」は男性として宮廷に出仕するや、あふれる才気を発揮し、若くして出世街道を突き進む。また、女装の男児である「姫君」も女性として後宮に出仕を始める。
その後「若君」は右大臣の娘と結婚するが、事情を知らない妻は「若君」の親友宰相中将と通じ、夫婦の仲は破綻する。一方「姫君」は主君女東宮に恋慕し密かに関係を結んで、それぞれ次第に自らの天性に苦悩し始める。そして、とうとう「若君」が宰相中将に素性を見破られてしまうことで、事態は大きく変化していく。


宰相中将の子を妊娠し進退窮まった「若君」は、宰相中将に匿われて女の姿に戻り密かに出産する。一方「姫君」も元の男性の姿に戻り、行方知れずとなっていた「若君」を探し当てて宰相中将の下からの逃亡を手助けする。その後2人は、周囲に悟られぬよう互いの立場を入れ替える。
本来の性に戻った2人は、それぞれ自らの未来を切り開き、関白・中宮という人臣の最高位に至った。


wikipediaより


この物語、成立はどうやら鎌倉時代初期で、源氏物語のように、登場人物が錯綜していて、また文意をとるのが難しく、さすがに原本は読む気にはなりませんでした。(それでWikipediaからの引用で済ませたのですが。(この作品は、後世の評論家の評価は極端に割れ、「けがらわしい作品だ」と断ずる学者もいました。)「とりかへばや」=「とりかえたいなあ」と言った意味です。


らんま1/2」の場合は少々異なり、中国・呪泉郷の「ニャンニーチェン」に落ちたらんまが、水をかぶると女の子、お湯をかぶると男の子になってしまう、ひとり「おとこ・おんな」なのです。この状態になると、らんま(おんな)は自分の女性生殖器を嫌でも見ることになってしまうと思うし、生理もあるかもしれません。


らんまの許婚(いいなずけ)、天道茜(あかね)は、基本的にらんまを好きなようですが、このらんまの体質、これにはついていけないようで、よく「変態!!」と口にします。一方のらんまも、あかねの不器用さとか習慣(寝相が悪いとか)身体的な欠陥(ウエストサイズが大きい=ズンドウとか)を突くこともあり、両者はいつも背中合わせなのです。タロットカードの一枚「恋人」も、男女背中合わせになっているのも、らんまとあかねみたいで興味深いですね。


 この体質、もう一度呪泉郷にいって、「男の姿」に変わる泉に入ると解決できるのですが・・・私の知る限りでは、まだ実現していませんでした。



今日のひと言:高橋留美子は、(特殊な)設定が上手いです。彼女の作品の中でも、「らんま1/2」はずば抜けていましたね。


高橋留美子に関する過去ログ
犬夜叉・・・エンドレスなラセン階段 http://d.hatena.ne.jp/iirei/20061109
犬夜叉の最終回・・高橋留美子の才能  http://d.hatena.ne.jp/iirei/20090403


らんま1/2 (1) (少年サンデーコミックス)

らんま1/2 (1) (少年サンデーコミックス)