虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

「らんま1/2」における複雑な三角関係


らんま1/2」特集その2



 「現代の紫式部:私が勝手に言っている」高橋留美子(たかはし・るみこ)の作品は、長期連載になることが多く、「犬夜叉」が12.5年、「うる星やつら」が8.5年、「らんま1/2」が8.7年といったところで、週刊少年サンデーの売り上げに大きく貢献したことには間違いありません。


 ただ、「源氏物語」を始めとして、女性作家・女性マンガ家にありがちな通弊は、新たに本筋の流れとさほど関係ない登場人物を出し続けて、際限がない、ということがあります。


 「らんま1/2」の場合、『早乙女乱馬:らんま」は「天道あかね」と許婚(いいなずけ)の関係ですが、これは双方の父親が勝手に決めたものであり、らんまの特異体質(水をかぶると女の子、お湯をかぶると男の子になってしまう、という)もあり、この2人は顔を合わせるたびに反目していますね。


 でも、この2人は互いに惹かれあっていることは容易に解ります。


 ただ、この2人を取り巻く連中は、「らんま」か「あかね」のどちらかに懸想(惚れている)者が多いのです。



 ここに挙げた図表のごとくですが、「らんま」と「あかね」を配偶者扱いにして「=」で結び、それぞれに懸想する(けそう:恋心を持つ)者を挙げます。片思いなら、片思いの相手に向けて「→」しるしを付します。


 「らんま」の場合
1)九能小太刀(くのうこだち):勝手に恋人だと思っている。らんまを手にいれるのに手段を選ばない。4)の妹。
2)久遠寺右京(くおんじうきょう):早乙女玄馬(らんまの父)が、「あかね」とは別に許婚の約束をされてしまった気の毒な女の子。お好み焼き屋をやっている。
  この子には、女装が好きな「紅つばさ」が懸想している。
3)シャンプー:らんまに格闘技で敗れたあと、相手を「殺すか、連れ添うか」しなくて
  はならない、中国のある地域の掟にしたがい「らんま」を殺そうとしたが果たせず、「らんま」の妻になろうとしている。水をかぶるとネコになるが、「らんま」はネコが大嫌い・・・というか、怖い。なお、シャンプーには「ムース」が懸想している。この男は水をかぶるとアヒルになってしまう。
4)九能帯刀(くのうたてわき):この男は、女の姿の「らんま」と「あかね」の両方が好き。1)の兄。


  「あかね」の場合
5)響良牙(ひびきりょうが):熱烈に「あかね」を愛する。水をかぶると子豚になる。「らんま」のよきライバルのナイスガイ。方向音痴。
6)九能帯刀:・・・前述の通り。



 まあ、「らんま」自身は、これら求愛者に対し、かなり鈍感ですが、事態は大変です。「らんま」と「あかね」のどちらに惚れても、とたんに三角関係に陥るライバルばかりで、たとえば「シャンプー」なら、「らんま」「シャンプー」「あかね」「ムース」で「4角関係」になってしまいます!!


 この図表、何角関係だかわかる人はいますか?・・・
ただ、相思相愛は、乱馬とあかねだけで、あとの関係はすべて「片思い」であることが解ります。お話を複雑にし、読者の目を惹く高橋留美子ならではの設定です。


こう考えてみると、青年誌で大ヒットした「めぞん一刻」でも、同様な三角関係が扱われていますが、主人公の2人の男女は、「相思相愛」・・・ほかのキャラクターは、みんなこの2人へ「片思い」しているわけで、この2人の引き立て役に過ぎません。ただ単に見た目の物語を複雑にするのが目的なのでは?そこには、確固とした2人の相思相愛があるのみ。結構単純なお話ですね。案外、高橋留美子さんは「一夫一婦制」が好きなのかも知れません。この辺が「源氏物語」と決定的に違います。




今日のひと言:まあ、複雑であるとは言え、未婚者同士の恋愛沙汰だし、SEXをするわけでもなし、いにしえの「源氏物語」の難解さには及ばないでしょう。その辺は高橋留美子さんもよく心得ていられるだろうと思いますね。「源氏物語」の身分差はないし、子どもの代まで話が続くわけでもなし。


 (雑感)アニメ「らんま1/2」の、らんま(♀)役の声は林原めぐみ、彼女は「新世紀エヴァンゲリオン」の綾波レイの声も担当しています。・・・とても同じ人の声とは思われません。声優の音域と声色のレパートリーって広いのね。
 そう言えば、乱馬(♂)の声は山口勝平、この人も、「デスノート」の「L」役で、これも同じ人の声とは思えません。

蒼き野生を抱いて

蒼き野生を抱いて


今日の料理:今日は、畑のあぜ道に生えている「ナズナ」と「ハコベ」を摘んできて、「野草と豆腐のスープ」を作りました。両方よく洗い、みじん切りにして、賽の目に切った豆腐と、色添えに「クコの実」をあしらい、ゆでてオイスターソースと醤油で味付けしました。美味しかったです。