糒(乾飯・干し飯:ほしいい)を作ってみた~伊勢物語の追体験
糒(乾飯・干し飯:ほしいい)を作ってみた~伊勢物語の追体験
伊勢物語特集 その2
糒(ほしいい)は、難しい漢字ですが、分解してみると「備える米」ということになって、非常事態に備えて作っておく米(食糧)であることが解ります。私がこの言葉に初めて出合ったのは、高校生のとき古文の授業で受けた『伊勢物語』で、でした。
そのエピソードは第9段「東下り」に出てきます。昔男は、女性に失恋して、自分を見失い、もはや自分は生きていく価値もないと、仲間とともに、東海、関東地方への旅に出るのですね。
(三河の八橋というところに行き)
その澤のほとりの木の蔭に下りゐて、乾飯食ひけり。その澤にかきつばたいとおもしろく咲きたり。それを見て、ある人いわく、「かきつばたという五文字を句の上にすゑて、旅の心をよめ」といひければ、よめる。から衣 きつつなれにし つましあれば
はるばるきぬる 旅をしぞ思ふとよめりければ、皆人、乾飯のうえに涙おとしてほとびにけり
『伊勢物語』大津有一校中 (12P-15P)
えらく女々しいエピソードなので、こりゃだめだ、と思いましたが、でもしかし、当時NHK教育テレビで伊勢物語を取り上げた高校講座を見ていると(講師:森野宗明、朗読:樫山文枝)、この物語はフトコロが深いことが解り、好きになりました。なお、各句の初めに指定された文字を付けて詠んだ歌を折句といいます。(句の頭に、「か・き・つ・ば・た」を付けています。)ここに出て来る「乾飯」こそ「糒」です。簡単にこの食品を一瞥しますと(wiki)
アルファ化米(アルファかまい)とは、炊飯または蒸煮(じょうしゃ)などの加水加熱によって米の澱粉をアルファ化(糊化)させたのち、乾燥処理によってその糊化の状態を固定させた乾燥米飯のことである。加水加熱により糊化した米澱粉は、放熱とともに徐々に再ベータ化(老化)し食味が劣化するが、アルファ化米はこの老化が起こる前に何らかの方法で乾燥処理を施した米飯である。アルファ化米は熱湯や冷水を注入することで飯へ復元し可食の状態となり、アルファ米とも呼ばれる。
形質的に近似なものとして、古くは糒(ほしい・ほしいい)、乾飯(ほしい・ほしいい)、餉(かれい・かれいい)とも呼ばれる保存食・非常食も存在するが、こちらは現代のアルファ化米に比べて天日干しなどの方法により緩やかに乾燥されているので、乾燥後の糊化度については現代のそれとの差がある可能性はある。
こんな感じですね。
アルファ化米
それで、発酵・食材の権威:小泉武夫さんのHPに、糒の製法が書かれていましたので、私も作ってみました。(↓丸ごと小泉武夫食マガジン)
手順:
1)炊き立ての御飯(一杯分)を水でほぐして30分水浸して水を切り、耐熱皿に均一に広げる。
2)ラップをせずに電子レンジに入れ5分チンする(ワット数の指定がなかったので600Wにしました)。
3)ちょっと冷めたところで再び5分チンする。その後米をほぐす。
4)2分チン。米をほぐす。(もしこの時点で乾燥しきってなければ2分のチンを繰り返す)
5)完成。密閉して冷暗所で保存。(条件がよければ20年保存できるらしい。)
私は4)の工程を甘くみていて、もう一回5分してしまったので、コゲも出来、雷オコシみたいに板状になってしまいました。出来る限り折って、一部に熱湯を加え、7分待つと、それでも食べられるようになりました。レシピは一応忠実に守るべきだという教訓を得ました。
今日のひと言:古典文学のアイテムが、現代でも賞味できると言うのは面白いことですね。まあ、第9段の昔男ほど、女々しくなりたくはありませんけど。
参考過去ログ
伊勢物語 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)
- 発売日: 2007/12/22
- メディア: 文庫
- 作者:小泉武夫
- 発売日: 2011/10/11
- メディア: 新書
- 作者:小泉 武夫
- メディア: 単行本
今日の一品
@鱈の子昆布巻き(缶詰)の大根拍子切り和え
鱈は、マダラ。キョクヨー社製。アイディアを買って購入。大根と和え数時間。まずまず。
(2020.06.25)
@ラムとシシトウの塩炒め・ローズマリー風味
細切れのラム肉とシシトウを炒め、塩を振り、ラム肉の矯臭に定番のローズマリーで香り付け。あっさりとして美味しい。
(2020.06.27)
@干しシイタケ入りお好み焼き(昼食)
あらかじめ作っておいた干しシイタケをふやかし、これと、キャベツ、青じそ、紅ショウガを卵と小麦粉を合わせた液でかき回し、あとは豚肉細切れを使ったお好み焼きの要領で焼きました。シイタケの味は、肉と並ぶほど味があります。
(2020.06.28)
@間引きバイアムのゴマワサビソース和え
バイアムはヒユ科の野菜で、ジャワホウレンソウとも呼ばれる夏の葉野菜。味に癖がなく、だれが食べても美味しいとされるであろう食材です。
(2020.06.29)
今日の四句
ツタの絡まる廃屋で、前面に生えるヤブガラシ。この厄介な草にはスズメバチが好んでやってきます。厄介の2乗。
(2020.06.25)
やさしくね
霧に包まれ
小山かな
(2020.06.26)
人類と
共依存なる
コーンかな
コーン(トウモロコシ)は、人間の手助けがないと存在できず、この作物を主食とする人も、この作物がないと生きられません。こんな関係を共依存といいます。
(2020.06.28)
水たまり
水浴びするや
スズメたち
見えにくいですが、水面の波紋は水浴びした証拠。
(2020.06.28)