虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

日本の古典

『とはずがたり』:非積極性存在としての女性(随想録―82)

『とはずがたり』:非積極性存在としての女性(随想録―82) 私は、アメリカのブログ、タンブラー(tumblr.)をやっていて、決めていることがある。このブログには夥しい画像や動画が登場するが、「美しい女性」を呈示するだけのブログは、「リブログ:rebl…

三河物語:戦争と旗~大久保彦左衛門の面目(随想録―77)

三河物語:戦争と旗~大久保彦左衛門の面目(随想録―77) 『三河物語』は、旗本で頑固一徹で知られた大久保彦左衛門の、安土桃山時代~江戸時代初期にかけての手記である。面白みのない文献と見られがちだが、江戸の庶民には、写本を通じて人気があったと…

アブナイお・と・こ~近松門左衛門作品集:里中満智子(随想録―74)

アブナイお・と・こ~近松門左衛門作品集:里中満智子(随想録―74) 中央公論新社「マンガ日本の古典」の1冊「心中天綱島」を読んで。作画担当の里中は、後書きで「かなり脚色した旨」書いていたが、それはそれで良い。その上で浮かび上がってくることが…

『古事記』:肉親の確執の記録~石ノ森章太郎の慧眼(随想録―73)

『古事記』:肉親の確執の記録~石ノ森章太郎の慧眼(随想録―73) 中央公論新社「マンガ日本の古典」シリーズ、第1巻である。『古事記』『日本書紀』などというと、毛嫌いする人も多いと思う。戦前・戦中の暗い時代のバックボーンとなった文芸作品である…

「信長公記」(小島剛夕):織田信長一代記・映像詩風(随想録―71)

「信長公記」(小島剛夕):織田信長一代記・映像詩風(随想録―71) 織田信長は日本史上の有名人物であり、その事績は広く認知されている。NHKの大河ドラマでも、民放の時代劇でもよく取り上げられてきたので、その辺はよく知られている。 本編は信長の行…

「堤中納言物語」(坂田靖子):おちゃらけとギャグは違う(随想録―70)

「堤中納言物語」(坂田靖子):おちゃらけとギャグは違う(随想録―70) 恒例になった「マンガ日本の古典」(中央公論新社)の評論。「堤中納言物語」は、平安後期の説話物語集。とくに『虫めづる姫君』で有名な説話集だ。この代表作は、「初めから」、読…

『和泉式部日記』:いがらしゆみこ~一人の人物の幻影に翻弄される男女(随想録―66)

『和泉式部日記』:いがらしゆみこ~一人の人物の幻影に翻弄される男女(随想録―66) ここで言う男女、女はもちろん歌人・女官の和泉式部だが、男は敦道親王(帥宮:そちのみや)という、立派な皇子である。この一組の男女の「愛の贈答歌」で、物語が織り…

『奥の細道』~作画:矢口高雄(「マンガ日本の古典」):地元の強み(随想録―65)

『奥の細道』~作画:矢口高雄(「マンガ日本の古典」):地元の強み(随想録―65) 『奥の細道』は、日本の古典の中でも、別して名高い。中学校でやる古文では、必ず取り上げられる作品であろう。もちろん、松尾芭蕉が訪問した東北地方の諸名所を俳句にし…

「ものくさ太郎」:やまだ紫~デフォルメの妙(随想録―64)

「ものくさ太郎」:やまだ紫~デフォルメの妙(随想録―64) このマンガ作品は、女性マンガ家:やまだ紫が、中央公論社の「マンガ日本の古典」全32巻の一冊として任され、江戸時代初期のころの成立である説話集『御伽草子(おとぎぞうし)』の5、6話を…