芥川龍之介と『河童』(かっぱ)〜鬼才最期の光芒
芥川龍之介には長編と見なされる小説作品はほとんどなく、短編作家だと認識されています。ただ、晩年に書いた『河童』は、彼としては珍しく中篇小説で、この作品を書いて以降、彼の作品は短編に戻り、『点鬼簿』、『歯車』など、「死の影におびえるような」凄惨な作品を書いた末、睡眠薬自殺を遂げます。彼の命日は「河童忌」(7月24日)とされ、今でも彼の偉業を讃える人が大いにいますね。
さて、『河童』は、その内容から言っても、分量から言っても、芥川の文才を綜合した彼の代表作かと思います。ノイローゼに罹りながらも、これだけの集中力を集めて最期の傑作を書き上げるのはある意味「力業:ちからわざ」です。
お話は・・・ある精神病院の患者が体験記として語る「河童社会」の記述です。彼はひょんなことから上高地の河童橋から、河童の国に迷い込み、そこで人間社会とほとんど変わらぬ社会に遭遇します。そしてその社会は人間社会を辛辣にカリカチャライズ(戯画化)した社会だったのです。いくつも印象的なお話がありますが、2つほど挙げてみます。
@企業経営者の河童と持った宴席で、解雇された職工(労働者)の運命について話題になります。そのケースでは「職工屠殺法」が適用され、職工は殺され、ミンチにされて一般家庭の食糧になるという事実。これについて芥川は、「どうせ路頭に迷って死ぬのだから、その手間を省いてやれるし、貴重なタンパク源になる」、といった説明を加えています。さすがに気分が悪くなった主人公、嘔吐しながら宴席を辞します。
@老人と子供 『河童』の最後に近いお話で、ある塔を守っている子供の管理人、老人の姿で生まれ、歳を取るごとに若返り、最後は赤ちゃんになり、無に帰してこの世とおさらばする。こんな境遇の「子供」ですが、こう言います・・・「私は老人のように財産で悩むことはないし、青年のように恋愛の空騒ぎで悩むこともない」これは、いわゆる生老病死から解放されたありさまで、解放されていない人間の有様を照射する一文になっています。
@主人公はこの体験のあとに、人間社会に復帰しますが、あまりの河童社会の薫陶のためか、人間社会に馴染めなくなっており、そのような人を押し込める精神病院に入れられるのです。たしかに言動がおかしく、ピアノを指して音楽家の河童が演奏してくれたとか、あの花束が河童のお土産で・・・とばかり指差す先には、なにも無かったりとか・・・
今日のひと言:この小説作品、ブラックユーモアの塊みたいな作品で、随所(あるいは全部)に毒がちりばめられています。芥川龍之介最後の、そして最大のこの作品、読んでない方は是非ご一読ください。得るところが大きいと思います。
芥川龍之介についての過去ログ
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20100804#1280879338
:芥川龍之介と私・・・侏儒(しゅじゅ)の言葉
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20100809#1281289089
:アナトール・フランス「エピクロスの園」・・芥川の師+開発は止めよ
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20120802#1343902288
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20150329#1427600266
:「枯野抄の心理」〜ひねくれた芥川龍之介
(これは一部です。まあ、悪くは言っても、私は芥川龍之介が好きなのですね。)
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今日の一品
@ブリ大根
言わずと知れた定番料理。初めて作ってみました。レシピは以下を参考にしました。
https://park.ajinomoto.co.jp/recipe/card/703187/
変更点は、お酒。多分このレシピでは日本酒、ないしそれが元の味醂だと思いますが、日本酒はなかったので「陶陶酒」を入れました。うま味を大根はよく吸いますこと。
(2018.06.01)
@ツルムラサキのお浸し
弟作。同じツルムラサキ科の雲南百薬を食べるのであまり食べませんが、端境期でもあり、弟が買ってきました。茹でて15分くらい晒し(シュウ酸除去のため)、醤油+粉チーズ+カツオ節で和えました。
(2018.06.01)
@納豆ビビンバ
納豆だけでなく、キムチ、アミの佃煮を混ぜ合わせて食べました。それで「混ぜご飯:ビビンバ」。
(2018.06.02)
@ホンビノス貝の澄まし汁
帰化生物であるホンビノス貝は、大きさ・味ともにハマグリに似ていて、ちょっと安価な代替品として市民権を得ています。今回は、醤油で煮て、ネギ、山椒の葉を敷いたお椀に注ぎます。
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20091227 :ホンビノス貝・・・有益外来生物
(2018.06.03)
アルファルファもやしに、中国からし菜:セリフォンと、ナスタチウムの花を合わせ、ポン酢で和えました。辛みを出すため、セリフォンとナスタチウムをもっと増やしてもいいかも。
(2018.06.03)
最近気に入った曲2つ
ひとつは斎藤和義の「歩いて帰ろう」、
もうひとつは松崎ナオの「川べりの家」。
前者は、かつての幼児番組「ポンキッキーズ」の歌であったそうですが、大人のロックに仕上がっています。
後者は現在NHKの「72時間」の主題歌で、投げやりに歌っているところが良いですね。
どちらもURLをクリックしてください。
(2018.06.04)
今日の一首
赤城山
モヤに包まれ
姿消す
これもひとつの
自然なるかな
手前の小山は、モヤに厚く包まれてはいないようです。
(2018.06.02)
今日の三句
梶の木の
林なりけり
鬱蒼と
梶の木(かじのき)は紙の原料のコウゾと同じ属に属します(クワ科)。紙もこれを材料に作れるそうです。この林については、春先に取り上げました。
もっとも、このような林にした土地所有者の意図は解りませんが。
(2018,06.04)
初夏の朝
女性ランナー
疾走す
朝の散歩のとき、スプリンターのように走る女性を見ました。ジョギングをしていたのだと思いますが。
(2018.06.05)
よく見ると
グロテスクなり
百合(ゆり)の花
茎の葉のつき方、花が束になって咲く風情が「不気味」=「グロテスク」です。
(2018.06.05)