1人の粗暴犯の逃走は災害並みのインパクトを持つ(随想録―26)
思い返せば、2019年5月、6月は公然と粗暴な犯罪を犯す人物が輩出して、いかにも物騒な世の中になった観があります。神奈川県川崎市で、スクールバスを待つ小学生とその保護者たちを柳葉包丁で襲い、20名を殺傷、うち2名の命を奪い、勝手に自殺した岩崎隆一、大阪府吹田市で3名いた警官のうち2人を呼び出し、残った1人を狙い、包丁で刺して重傷を負わせ、拳銃を奪って逃げた飯森裕次郎、神奈川県愛川町で、保釈中に検察関係者を振り切り、包丁を持って逃げた犯罪の見本市:小林誠・・・あまりに多士済々で枚挙に遑がありません。
通常災害というのは、人間の側にも問題があるとは言え、自然がもたらす地震、火山噴火、台風などの風水害などを指すのが普通です。でも、1人の粗暴犯が逃走すると、あたかも近隣社会は緊張し、第一級の防御体制に入ります。自宅に閉じこもるとか、学校が休校になるとか・・・これは、現象の本質から見て、災害と言っても良いでしょう。
実際、知能を持つ生き物、人間の行動には予測不可能な面があり、逃走犯が何をするかについて、確定的な判断が出来ません。その点がある意味予測可能な面もある自然災害とは異なります。日本人が人を傷つける道具としては銃刀法のおかげで包丁が実際の凶器になるパターンが多いし、上に上げた3つの例でもその通りでした。
その意味で拳銃を狙った飯森の犯行は画期的で、より多くの人を殺傷したいという意図から言って、反社会的人物の最たるものでしょう。もっとも、飯森には有名な先輩格の犯罪者がいて、そのむかし、「広域○○事件:正式名称は失念しましたが」で、全国を股に掛け、警官から奪った拳銃で不連続的に複数人を射殺した永山則夫という者がいました。
逮捕後、裁判の判決は死刑でしたが、収監された刑務所で、それまで無知蒙昧だった永山は学問、文学に目覚め、エッセイ『無知の涙』小説『木橋』などを執筆し、出版、高評価を受けました。永山の支援者は、ここまでの才能を失くしてしまうのは惜しいと、死刑回避の嘆願を行いましたが、裁判所はそれを認めず、判決通り、永山の死刑を執行しました。
・・・そうすると、戦争犯罪人:ウラジミール・プーチンは怖いですね。1人の権力欲・領土拡大欲に憑りつかれたこの狂人――ウクライナ各地の惨状は、台風、地震、津波クラスです。彼から、核兵器というおもちゃは、取り上げるべきです。
今日の詩
@「森下は優しい、だから強いんだ」と老子との出会い(ソネット)
大学在学中に市民運動を
共にしていた男が言った――
「森下は優しい、だから強いんだ。」
私は自分をそれほど優しいとは思ったことがない。
だいたい時期は違っても
母にも父にもイジメられた私だ。
ひねくれこそすれ、人に優しくするよう
教育されたことはない。
だが後に『老子』(中国哲学)に辿り着き、
その文言を知った私は
ぶっきらぼうな文体だったが
「なるほど、こういった優しさなら
自分も持っている」と納得できた。
老子は、私の代弁者なのだ。
(2022.06.04)
今日の6句
カラスかと
見紛うばかり
黒ビニル
ビニール袋の切れはしが、フェンスにひっかかり、生き物のようでした。
(2022.05.21)
コケ茂る
宅地予定地
つかの間に
(2022.05.22)
老いてなお
テイカカズラの
恋をする
テイカとは、鎌倉期の歌人・藤原定家。則子内親王を愛し、死んだら則子の墓に絡みつくテイカカズラになったのだそう。
(2022.05.24)
花三枚
トキワツユクサ
群れ育つ
南米からの帰化植物。友人にスマホ検索してもらって名が解りました。
(2022.05.24)
祝詞(のりと)挙ぐ
今年も実り
豊かなれ
稲の田植えの準備。
(2022.05・25)
庭先に
ぽつねん育つ
ヘンルーダ
ミカン科のハーブ。
(2022.05.25)