虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

『老子』の「ひねくれた」文体~第42章を例にして

老子』の「ひねくれた」文体~第42章を例にして



まず、私の著作:『災害の芽を摘む』から引用します。

老子の文体  老子の文章は81章5000字、極めて短い文献です。しかしその理解しにくさは、世界の古典の中でも群を抜いています。その理由は、老子が固定的な読み方を許さないからです。たとえば42章で「凶暴なもの(優しくないもの、筆者注)はよい死に方をしない」と言っていながら、5章では「天地は仁あらず(優しくない、筆者注)」と抜け抜けと言います。全く逆の主張をしています。近代的な文章を読み慣れた目には矛盾だらけですが、私の見解を言えば、「矛盾はない」。例えば同一人物でもその精神状態によって、全く別の行動を取ることがあり得ますから。


 また老子の文章には、必ず陰陽があります。47章「出てゆくことが遠くなればなるほど、知ることはいっそう少なくなる」という一節は、裏(陰)を言えば「出てゆくことが遠くなればなるほど、知ることはいっそう多くなる」です。どちらの文章にも真理はあります。この例では、少を多と変えただけですが、このような単語レベルの言い換えで真理ががらりと変わることを老子は教えるのです。


その42章、後半を抜粋して書くと以下のようになります:

人びとが何よりも憎悪することは、孤、寡、不穀などである。ところが王や公たちは、それら(のことば)を自称とするのだ。まことに「物はそれを減らすことによって、かえってふえることがあり、それをふやすことによって、かえって減ることがあるものだ」。人びとが教えに用いることを、私もまた教えとしよう。「凶暴なものはよい死に方をしない」。このことを私は教えの父とするであろう。

老子』(小川環樹・訳注/中公文庫:103P-104P)

どうでしょう?一読、意味が解らなかったでしょう?私もこのような文体の『老子』を初めて読んだとき、大変当惑したものです。この42章、前半では一種の「数秘術」と言うか、数字の魔力が語られているのですが、後半は、それとは関係なく、不幸な王様のことが語られ、なぜ王様が不幸なのか、の説明もないまま、最後に、老子当時のコトワザで42章は締め括られます。謎(????)の連続です。そのコトワザが原文で


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図1:このブログに充てて書いた書


「強梁者不得其死、吾将以為教父」


です。で、小川さんはどう訳したか、と言えば、上に挙げた「凶暴なものはよい死に方をしない」。です。なるほど、オーソドックスな解釈です。最初この訳注を読んだ時は、それで納得しましたが、相当後になって、別の解釈を発見しました。「梁:はり」とは、家屋の重要な構造物です。もし、この梁が壊れる・折れることがあったら、家も倒壊します・・・そう、梁は「死ねない」のです。よい死に方をしない=横死ということですが、梁にそれは起こらない、もし起こるなら、家屋ともども中に住む人も死亡してしまう。・・・老子は「聖人」を語ることが好きですが、この「梁」のことをも、「聖人」と呼ぶかも知れません。



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図2:昔書いた書。案外気に入っている


ここに、「梁」とは柱の上に渡して屋根などを支える横木。はり。うつばり。


この字を含む言葉に「棟梁」というものがあり、

とう‐りょう【棟梁】‥リヤウ

屋根の棟むねと梁はり。

一つの集団や一国のささえとなる重要な人。景行紀「武内宿祢に命みことのりして―の臣としたまふ」

おもだった人。統率者。平家物語:「是は当家の―」

特に、大工のかしら。

きょう‐りょう【彊梁・強梁】キヤウリヤウ

(「梁」は橋・棟木の意で、支える力が強いこと)強くて制しにくいこと。剛暴。

(「梁」と「棟梁」、「強梁」、どれも広辞苑第6版より。強梁という言葉もあって、小川さんの訳注が間違ってないことは保障されます。




今日のひと言:このような私の解釈は、どう受け止められるでしょう。「強梁」という熟語は実際に存在していて、小川さんの解釈は正しいのでしょう。でも、「梁」という言葉を取り出せば、私の解釈も成立するハズです。むしろ、「私の解釈の方が面白い。」この場合、「強」という言葉を、「梁」と一つの単語にするのではなく、独立した言葉として、解釈している、と思えば、良いの、かも。








今日の一品


@セロリとモヤシのニョクマム炒め


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ニョクマムはかなり癖の強いベトナムの魚醤ですが、その匂いを中和する力のある野菜としてセロリを思いつき、実際に炒めてみました。ついでにクローブ(スパイス)も使いました。・・・結果、セロリの風味がもっとも強かったです。赤いのはクコの実。

 (2021.07.10)



@ツルナのお浸し


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ツルナ


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お浸し


ツルナは、今年の野菜栽培計画から外れ、ヒソップ(ハーブ)の挿し木苗を定植したプランターに多数生えてきて、除草の意味でも摘んでお浸しにしました。シュウ酸を含むので、ゆがいたあと、15分ほど水に晒し、カツオ節、醤油で味付け。

 (2021.07.11)



@ナスの煮びたし


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弟作。醤油の代わりにブイヨンを使い、コチュジャンと共にフライパンで加熱。仕上げに擦り生姜、刻み紫蘇を掛けました。少々塩味が不足でした。

 (2021.07.14)






今日の五句


ならず者
集まり咲けり
ルドベキア


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 (2021.07.10)



猩々(しょうじょう)の
顔ぞあかきは
酔芙蓉(すいふよう)


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 (2021.07.10)



急傾斜
これぞ古墳の
顔なるか


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群馬県太田市には古墳が多いです。近畿のそれに匹敵する規模です。

 (2021.07.10)



恥ずかしげ
白くなりたる
半夏生(はんげしょう)


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 (2021.07.10)



奔流や
主(あるじ)の葦たち
なぎ倒し


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 (2021.07.11)







今日の写真集



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ムラサキシキブの花  (2021.07.11)



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オレガノ(ハーブ)の花  何年か栽培して、初めてみたような・・・(2021.07.13)






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“Diamond cut Diamond--Ultra-Vival”


 https://iirei.hatenadiary.com/


ダイアモンドのほうは、週一回、水曜日か木曜日に更新します。
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虚虚実実――ウルトラバイバルとはダブりませんので、こぞって
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