虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

チューリングと群論とOR(オペレーショナル・リサーチ):戦争で負けない研究

チューリング群論とOR(オペレーショナル・リサーチ):戦争で負けない研究


イギリス:ケンブリッジ大学特集(1/2)


先日、極めて興味深い映画のDVDを観ました。それはid:SPYBOYさんからの情報でした。『イミテーション・ゲーム』。ここにチューリングとはイギリスの数学者で、WW2当時ナチス・ドイツが使っていた、解読不可能と言われていた暗号「エニグマ」(謎という意味)を、数学の一分野、「群論」を駆使して「解読」したわけです。コンピュータの魁である「チューリング・マシン」をも開発して。この解読成功はイギリスを含め連合国軍に勝利をもたらす支柱の一つになったわけです。一説に、チューリングのおかげで、1400万人の命が救われたと、されます。


でも、チューリングには問題がありました。「同性愛者」だったのです。WW2後、イギリス政府とイギリス軍は、そこにつけ込み、むりやりホルモンを打つことを義務付け、2年後にチューリングは自殺してしまいます。(アップル・コンピュータのロゴは一口齧られた林檎ですが、これはチューリングが青酸を皮に塗って齧って自殺したことに因んでいるとか。)彼は、ケンブリッジ大学の数学教授として、イギリスの勝利に貢献したのです。



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チューリング:50ポンド紙幣


SPYBOYさんのブログに私が以前に書き込んだコメントを引っ張てきますと、

群論」に関する情報がイイカゲンだったですね。すいません。この理論は、もとはと言えば、方程式の解の公式絡みで発見されたものです。二次方程式の解の公式は、貴兄も中学で学ばれたことと思います。同じように三次方程式、四次方程式までは公式があります。ところが五次方程式には、どうやっても公式が見つからない・・・数学者たちは頭を抱えました。そして、方向転換して、解の公式はないのでは?と考え、まずノルウェイのアーベルという数学者が五次方程式の解の公式はないことを証明しました。そしてそれを受けてフランスのガロアが、五次以上の方程式には解の公式がないことを見事に証明しました。ガロアが発案し、その離れ業を実現したツールが「群論」だったのです。公式をつくるのではなく、どんなタイプの方程式が解けるか、その構造を見るという理屈だったのですね。以後も群論は化学物質の構造や対称性などの神秘を探る上でも、有益なツールであり続けています。ちなみに、一世を風靡した「ルービック・キューブ」も群論の応用玩具です。この理論を駆使してエニグマを解いたのがチューリングだったのですね。

spyboy.hatenablog.com


群論は、極めて有用な理論です。勘どころは、2人の間で2つの物を交換し合う(互換)行為にあり、すべての交換は、この互換に還元できるということです。この事実が、複雑怪奇なエニグマを解読するキーになったわけです。チューリングがやったのはこの理論の応用なのです。


イギリスという国は、「戦争に負けない国」(例外は100年戦争、アメリカ独立戦争くらい)であり、そのファイティング・スピリッツには睥睨すべからざるものがあります。エニグマの解読もそうですが、WW2ではORという軍事技術を開発しました。超強力な兵器を開発しなくても、今ある武器・資材を組み合わせて戦争遂行能力を高めるという、地味な数学的技術です。イギリスで”Operational Research”、アメリカで”Operations Analysis”、ロシアで”Cybernetics”、中国で“運籌術”(うんちゅうじゅつ)、日本で”オペレーションズリサーチ“と呼ばれています。(『はじめてのOR』:ブルーバックス


面白い、というか、愚かなお話がWW2のころの日本にあります。日本でもORの研究が行われていましたが、あの東条英機が視察に訪れ、翌日、その作業チームは解散したそうです。こりゃ、インパール作戦なんて無謀な作戦を強行し、日本兵たちという最も大事な武器をあたら何十万人も犬死させるわけです。どんな分野でも、バカは責任ある地位に就かせてはなりません。当時の日本陸海軍の責任者レベルの軍人たちは、東条英機は言うまでもなく、辻政信牟田口廉也山本五十六黒島亀人、宇垣纏などなど、バカだらけでした。(優秀だったのは、前線指揮官の陸軍中将:栗林忠道とか、海軍中将:山口多聞とかで、かれらは戦場で、奮闘虚しく戦死しました。)


ORは、戦争における需要があるだけではありません。現在私が考えるORの実例。私はタバコを吸う人です。一日40本近く吸っていましたが、値上がりのこともあり、半分の20本前後に減らしたかったのですね。そこで手許にある道具をうまく使えないか、と思っていたら、むかし入手した陶器製の「キセル」が出てきました。6割がた、普通のフィルター付きで吸って、のこり4割はフィルターを外して、私が吸う細身のタバコがぴったりはいるキセルで、吸えるだけ吸うのです。とくに燃え尽きる前が一番おいしい!満足できます。また、6割吸ったタバコは、シリンダー式のタバコ消しにいれて、即座に火を消してしまい、あとで、キセルに装着するのです。このタバコ、シリンダー、キセルの3者を組みわせることで、タバコの本数は半分になるわけです。(この際、私はタバコに毒があるのを気にしません。)これもORでしょう。私が紹介した、「タバコにおけるOR」を読んで頂ければ、互換の手続きが展開されているのが解るでしょう。つまりは、ORも、群論によってカバーされる技術なのですね。


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今日のひと言:イギリスは、チューリングが同性愛者であることを攻撃し、彼を自殺させたことを謝罪し、2021年6月、彼を描いた50ポンド(日本円で8000円くらいの)、通常使われる最高額紙幣を発行しました。遅きに失したとはいえ、イギリス政府が過去の過ちを認めたことは評価できます。私は、イギリスが好きです。ケンブリッジ大学に、学士入学したいですねえ。かたや、日本の新1万円札の顔、渋沢栄一は、算盤しか使えないただの商人であり、お札の図案としては、チューリングに比べ、3桁も4桁も価値が落ちる、ともSPYBOYさんは書いていました。まったくの同感です。


iirei.hatenablog.com










今日の詩


@イミテーションにもなれない日本


日本はイギリスに倣い、議会制民主主義だが
イミテーションにもなっていない。
イギリスは1215年という早い時期に
民主主義を実現した。(マグナ・カルタ


それはバカな国王「ジョン・欠地王」に
諸侯が迫り、諸侯の権限を認めさせ、
つまりは、国王の権限に制限を加えたのだ。
諸侯たちは、妥協なき行動の未、権利を得た。


日本の場合、バカな総理大臣(実質的な国王)を
沢山輩出しているのに
日本国民がそんな輩を
追放するような行動を起こさない。


これは国民の権限の放棄だ。
(つまりは投票に行かない国民が多いこと。)
私は思う、武力に訴えずとも
バカを辞めさせることが出来るのに――


投票に行かない国民から、
選挙権を剥奪すれば良いのだ。
戦って、勝ち取ってこその民主主義だ。
日本よ、いつまでイミテーションでいるのか?


 (2021.10.10)







今日の6句


里芋を
掘りて天下の
冬を知る


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 (2021.10.13)



クローバー
四つ葉・奇形の
証なり


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 (2021.10.13)



タマスダレ
こんな所で
出合うとは



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普通、タマスダレは川のなかには生えません。

 (2021.10.13)



菊の花
準備万端
ほころびる


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 (2021.10.14)



残照に
照らされ建つや
ピラミッド


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 (21.10.17)



動物の
騒ぎたるかな
石組みや


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 なにやら、豚のような動物が語り合っているような・・・

 (2021.10.19)






今日の写真集



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ゆかしき石仏 (2021.10.14)



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芽キャベツの壮観 (2021.10.15)




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晒し首・バラバラ殺人  ある農家の「案山子」。損壊されたマネキンのおそるべきありさま。
(2021.10.16)



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里山。まだ「装う」に至らず。「山装う」は、秋の季語。 (2021.10.17)




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あちこち破れたシート。草には人為は及ばない。(2021,10.19)



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荒れ果てた田。ヒエならともかく、アメリカセンダングサがはびこっている。これほど畑作は、老人には辛いのか。  (2021.10.19)






☆☆過去ログから厳選し、英語版のブログをやっています。☆☆



“Diamond cut Diamond--Ultra-Vival”



 https://iirei.hatenadiary.com/



ダイアモンドのほうは、週一回、水曜日か木曜日に更新します。
英語版ブログには、末尾に日本語ブログ文も付記します。記事は
虚虚実実――ウルトラバイバルとはダブりませんので、こぞって
お越しを。





@@衆議院選挙に向けて:党首級の街頭第一声(東京新聞2021.10.20版)と、私の寸評



自民党:「成長の果実 給与・所得に」  その成長をしていないのですよ、日本は。どうやって配分するの?


@立民党:「分配なくして成長なし」  『21世紀の資本』(ピケティ)みたいね。自民に比べ、ラディスティック(急進的)だ。


公明党:「小さな声聴き 政策実行」 もし、池田大作が咽喉ガンになって、声がか細くなっても、彼の言うことは聴く、ということね。


共産党:「野党共闘 新しい政権を」 そういった意味では、共産党の党首(委員長)が、ん・十年交代ていないあたり、危険な臭いがする。


@維新:「改革と規制緩和を断行」 そもそも、この路線は、小泉純一郎竹中平蔵が始め、日本を底なし地獄に巻き込んだもの(新自由主義)。まだ続けるオツモリ?


@国民:「給料増へ経済政策転換」 キレが悪い。具体的ではない。立民と合併したほうが日本国民にとって良い。(注:政党名の「国民民主党」、略すと「国民」で、紛らわしい。)


@れいわ:「消費税やめるしかない」 なにをとぼけたことを。もし北欧諸国が消費税を止めたら、国がつぶれるだろう。まあ、必要悪なのが消費税だ。


@社民:「生きるため 公助の出番」 「国民」と同じで具体的ではない。この政党も、立民に合併されるのが良い。


@N党;「納得する受信料制度へ」 NHKはたしかに問題の多い放送局だが、このワン・イッシューのみで国政選挙に打って出るのは無謀だ。

 (2021.10.20)