虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

ナナコ(nanaco)とガロア(galois)〜安全な通貨とは

経済学特集 その2(結)



 セブンイレブンで使える「nanacoカード」は極めて便利なものですね。登録は簡単で、1000円以上供託(チャージ)すれば普通の通貨を介さずともカード上で取引ができ、小銭のやり取りも要りません。また、電子情報であることから、日本全国どのセブンイレブンの店でも使えます。さらに、どんな風にチェック機にかざそうが、裏・表の別なくまた財布に入れたままでも、認識します。ポイントもつきます。このポイントは、いつでも好きな時に購買費と転化できます。


 私も登録し、1年弱、使いましたが、思うところあり、使用は止める事ことにしました。
その際考えたのは、nanaco最大の利点である 1)電子通貨 2)小銭がやり取りされないの2点が気に入らなかったということです。


 私はかれこれ10年ほど前、一種の地域流通貨幣を構想しました。それは「行為」のやり取りについて、コインを決済手段にする通貨でした。上に挙げたnanacoと正反対の性格をもったものです。以下の過去ログでその論理を展開しています:


http://d.hatena.ne.jp/iirei/20070704#1183501410

 :超地域流通貨幣・ガロア


かなり長いブログなので、読むのが面倒な人のため、かいつまんで話を進めます。


 経済が壊滅状態になり、通貨が無意味になるかカタストロフィに陥ったとき、どんな形の通貨が生き残るか、という視点をあげます。第一次世界大戦の後、疲弊したドイツやオーストリアで試された通貨に「スタンプ貨幣」があります。この通貨は、「お金が黙っていても金利を生む」という考え方を否定して、「使わなければお金の価値が落ちる」という画期的なものでした。発案者は、商人・経済学者のシルヴィオゲゼル。この通貨は非常に巧く機能し、インフレで苦しんでいた地域経済を復活させました。でも、中央銀行から横槍が入り、取りやめになりました。


 現在では、ゲゼルの例に鑑み、いろいろなタイプの地域流通貨幣が行われています。主に2つほどタイプがあり、1)擬似札 2)電子情報  があります。どちらも中央管理者が必要です。1)の場合、ゲゼルの例と同じく中央銀行から「待った」をかけられる可能性があります。2)の場合、ナナコも含みますが、コンピュータ上の情報が消えると預けておいたお金が無効になってしまう虞があります。


 私の提唱するガロアは、通貨の実際にもつ原価を基準に考え、1円玉から10円玉位をそのまま通貨単位とすることが基本です。これらのコインは原価と額面に食いちがいがあまりなく、紙幣のように一枚数円の信用通貨より原価が高いのです。紙と金属の違いです。


 そして、このガロアは、あくまで「物」に対してではなく、「行為」について支払われる通貨です。例えば、ハイパーインフレで「ダイコン一本1000円」となった場合でも、(読み替えて)「そのダイコンを分けてあげる」という「行為」について、例えば100ガロアで支払われるわけです。(額面上では1円=1ガロア


ガロアは、それを扱う人々の間での信頼関係を以って成り立ちます。傍から見て、とんでもない取引でも、既存のコインを介して決済が成されるのですから、中央銀行の横槍が入ることはありません。なお、ガロアには金利は付きません。



今日のひと言:ナナコなどの電子通貨は、決済手段としては優れたシステムだと思いますが、ハイパーインフレに対処できないし、災害でデータが消えてしまう虞があります。私のガロアは、それを回避できる手段の一つだと思いますが、いかがなものでしょう?なお、最近話題の「ビットコイン」とも、ガロアは属性を異にします。ビットコインのように投機の対象にはなりません。



追記:計算と結果について:


日本の硬貨の原価計算


 現在日本で流通している硬貨の原価計算を試みた。
まず、財務省に電話して、各硬貨の金属組成を聞いた。次に、各硬貨を10枚セットにして、重量を測り、1枚当たりの重量を求めた。
 インターネットで、銅相場に関するサイトにアクセスし、硬貨に使われている各種金属の国際相場の概略値を入手した。
 日本の硬貨に使われているのは Al、Cu、Ni、Sn、Znであり、その価格の比は、
 Al:Cu:Ni:Sn:Zn=1:1:6:3.4:0.6 であった。
Alの1kg当たりの価格は173円(03.05.26現在)であり、この価格を元に各種硬貨の原価計算をする。
 各硬貨の金属組成の1000分率を用い、Alの価格を1とした時各金属の相対比で按分して、1g当たりの価格を求め、硬貨の重量を掛ける。
(K値と呼ぶ。)1円ダマは1gであるから0.17円となるが、この硬貨は原価割れしていない唯一の硬貨だから、1.1円を一枚当たりの鋳造費として、ほぼ1.3円を1円ダマの原価とする。1円より高額の硬貨の鋳造費は硬貨の重量の半分を1.1に掛け、K値に加え原価とする。
 そのようにして作成したのが、別表「日本の硬貨データ表」である。
この表から言えることは、1円、5円、10円までは額面より原価が高いか、大きくは原価割れしてないことが分かる。50円、100円、500円は大きく原価を下まわり、500円に至っては「バブリーな硬貨」であるとの結論に達する。           以上

         03.05.27     森下礼

一覧表:


@@注:硬貨の金属成分比率は、変動することがあります。


@@:ガロア(Galois)とは、フランスの数学者で、5次以上の代数方程式には、解の公式がないことを、群論という当時の数学界の常識を50年ほど超えた理論で証明し、わずか20歳で女性を巡る決闘で死んだ天才です。群論では、全ての交換は、2つの主体の間の交換(互換)に帰着できるという定理があったと記憶していますので、ガロアの名前を取るのは、私の構想する通貨にふさわしいと思ったのです。



エンデの遺言 ―根源からお金を問うこと (講談社+α文庫)

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地域通貨入門―持続可能な社会を目指して

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シルビオ・ゲゼル入門―減価する貨幣とは何か

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今日の料理


カジキグリーンカレー炒め



弟作。永谷園の商品――鶏肉用の製品を、鶏に肉質が似ているカジキマグロに適用したもの。カジキに重厚な味が加わりました。

 (2014.01.18)



@ヤーコン料理3種




ヤーコンはキク科の植物で、サツマイモに似た芋を食べます。味はちょうど梨をマイルドな味にした感じで、そのまま食べても結構いけます。ビタミン・ミネラルも豊富です。まずはヤーコンを切って流水に30分ほど晒し、アクを除き、料理に取りかかります。


1) 酢の物・・・ポン酢と醤油を合せた液に漬けます。



2) 炒めもの・・・ラー油を加えたゴマ油で炒め、仕上げにナンプラーを加えます。ただ、鉄分を含むため、酢などで和えないと、黒くなります。



3) 三五八漬け・・・8時間ほど漬けてとりだします。塩加減がよく、美味。



私の知人の言うことには、彼の住む地域で一時期ヤーコン栽培が流行ったとのことですが、「発がん性がある」という流言飛語が流れたため、みんな栽培をやめてしまったとのこと。いかにも付和雷同する日本人らしいですね。

(2014.01.22)



今日の一句



銀鱗の
宙に煌めく
ウグイかな


おおむね河川の中流域に住むウグイ。イヌの散歩のとき、集団で川面を飛び回っていました。イヌの散歩を終えて現地に行きましたが、大きな鳥が来訪していて、ウグイの跳躍は減っており、写真にも飛び跳ねた結果の波紋しか写りませんでした。・・・なぜ跳躍していたかは不明です。

 (2014.01.21)