虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

渋沢栄一の正体:体制べったりのうさんくさい奴

渋沢栄一の正体:体制べったりのうさんくさい奴

渋沢栄一・・・私は、この人、どうにも胡散臭い(うさんくさい)人であるというイメージを抱いていました。実際どうなのか、調べてみました。まずは広辞苑第六版より。

実業家。青淵と号。武州血洗島村(埼玉県深谷市)の豪農の子。初め幕府に仕え、明治維新後、大蔵省に出仕。辞職後、第一国立銀行を経営、製紙・紡績・保険・運輸・鉄道など多くの企業設立に関与、財界の大御所として活躍。引退後は社会事業・教育に尽力。(1840~1931)


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渋沢栄一 (wiki)

次に、もうすこし詳しくwiki(渋沢栄一)より。

江戸時代末期に農民(名主身分)から武士(幕臣)に取り立てられ、明治政府では大蔵少輔事務取扱となり、大蔵大輔、井上馨の下で財政政策を行った。退官後は実業家に転じ、第一国立銀行理化学研究所東京証券取引所といった多種多様な会社の設立、経営に関わり、二松學舍第3代舎長(現、二松学舎大学)を務めた他、商法講習所(現、一橋大学)、大倉商業学校(現、東京経済大学)の設立にも尽力し、それらの功績を元に「日本資本主義の父」と称される。また、論語を通じた経営哲学でも広く知られている。令和6年(2024年)より新紙幣一万円札の顔となる。また、令和3年(2021年)に渋沢栄一を主人公としたNHK大河ドラマ『青天を衝け』が放送される予定。


wikiの記述を読む限り、聖人、君主であるかのように、欠点ない人格者であるとされているようです。ただ、この人の略歴からすると、常に体制側の人間であったことに留意する必要があると思います。ところでここに、wikiからある人物を引いてくると、俄然様相が変ります。


また、小野組と取引があった渋沢栄一の経営による第一銀行に対し、市兵衛は倒産した小野組の資産や資材を提供することで第一銀行の連鎖倒産を防ぎ、渋沢という有力な協力者を得ることに成功した。

小野組破綻後、市兵衛は独立して事業を行うことにした。まず手始めに秋田県にある当時官営であった有力鉱山、阿仁鉱山と院内鉱山の払い下げを求めたが、これは却下された。続いて新潟県の草倉鉱山の入手を企て、渋沢から融資の内諾を得るものの、やはりこれも最初は政府の許可が得られなかった。

しかし市兵衛は小野組時代から縁があった元相馬中村藩主を名義人に立て、市兵衛が下請けとして鉱山経営を行う条件で、明治8年(1875年)に政府から草倉鉱山の払い下げを受けることに成功した。草倉鉱山の経営は順調で、明治10年(1877年)には市兵衛は鉱山業に専念する決意を固め、いよいよ足尾銅山を買収することになる(現在の古河機械金属)。

同年、市兵衛は草倉鉱山と同じく相馬家を買い取り名義人として立てて足尾銅山を買収した。相馬家では家令であった志賀直道(志賀直哉の祖父)が市兵衛の共同経営者となり、そののち渋沢も共同出費者として名を連ねた。


この人物・・・古河市兵衛は、あの「公害の原点」とも呼べる足尾鉱毒事件の加害者です。足尾銅山を中心にした広範で深刻な環境汚染を引き起こした当事者と、渋沢栄一はズブズブな関係だったのです。そして渋沢は、渡良瀬川流域の民を弾圧するのに何らかの功があったろうと思慮できます。なんせズブズブですから。500からの企業を興した結果で有名ですが、足尾銅山のような社会に害悪を流す企業も、相当数起業したのでしょう。ここで思いだして欲しいのは、渋沢が体制側の人間であったことです。そして、鉱毒事件の解決に一命を賭した田中正造とは、絶対に相容れないでしょうね。(引用部の赤字は、私がつけました。)



今日のひと言:ろくな政治家が育たない「松下政経塾」のように、論語を人として必要不可欠な教養とする行きかたは、不毛だと思います。出典は忘れましたが、以下のような例え話があります:ある国王が弓を無くした。いわく「国民が拾うから探さなくてもよい。」それを聞いた孔子、「それは狭い、人が拾うから良いではないか」、またそれを聞いた老子、「それも狭い、なにかが拾うから良いではないか」と。老子の視座には、今でいう環境問題も収められていたのかと思われます。渋沢は、老子より視野が狭い孔子を見習おうとしたけど、古河と組んで、人を陥れることも何らかの形で仕事にしたと思われるので(足尾鉱毒事件)、孔子にも及ばないでしょう。だから儒教についても渋沢は、中途半端で、生半可な素人の理解に留まるでしょう。(『論語と算盤』という著書が、渋沢にはありますが・・・)今で言う環境問題についても、たぶん田中正造のほうが渋沢栄一古河市兵衛たちより、本質に迫っていたことでしょう。結局、私にとって渋沢栄一は、胡散臭いままです。同じように胡散臭い政治家、企業家には喜ばれるでしょうが。


参考過去ログ

iirei.hatenablog.com


iirei.hatenablog.com



論語と算盤 (角川ソフィア文庫)

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谷中村事件―ある野人の記録・田中正造伝

谷中村事件―ある野人の記録・田中正造伝

  • 作者:大鹿 卓
  • 発売日: 2009/11/27
  • メディア: 単行本




今日の一品


@いわし丸干し(千葉県産)


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いわしは、大衆魚と言えども、馬鹿にできない滋味を持つ魚です。今回は九十九里産の本格派です。塩を振り、いくらか干して販売するようです。ただ、人気がないようで、よく売れ残りかけるので、値引きすることが多いです。そこがねらい目。

 (2020.02.26)



@ブナシメジのアヒージョ


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巷間、「シメジ」と名の付くキノコは多いですが、(ほんとうの「ホンシメジ」はマツタケ並みに高価で、)すべて偽物です。ブナシメジはそれでも、食味の良いキノコです。アヒージョはスペイン料理で、オリーブオイル、ニンニク、(唐辛子)で食材を炒めた料理の総称です。

 (2020.02.27)



@牛バラ肉とセリのレモン酢炒め


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牛肉を目先を変えて作るため、庭のセリと合わせ、レモン酢(ミツカン)と醤油で炒めてみました。まずまずの出来かな。

 (2020.02.29)






今日の一首


白き畑
黒く染めるや
雨水なる


水の色こそ
真黒なりけれ


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雨の前


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雨の後


中国の陰陽五行論でいう水の色についての一考察。その色は黒です。

 (2020.02.25)




今日の三句


春告げて
青つぼみ付く
矢車草


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 (2020.02.25)



ある夕べ
月と金星
共演し


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 (2020.02.27)



切り株の
先に葉の芽の
出でにけり


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 大根の葉のつけ根を水栽培したのです。8本くらい新芽が出ているよう。

 (2020.02.29)






新型コロナウイルス肺炎と『赤死病の仮面』


2020年初頭から、中国発・世界を席巻しているこの病気。空気感染をはじめ、手についた菌からも移る、始末に悪い病気。SARSと遺伝子型が90%共通で、致死率はSARSよりは低いとされるようです。高齢者と、糖尿病などの持病(基礎疾患)を持つ人には命にかかわるとも言います。


さて、この病気は、日本においては、4000人弱乗船していた豪華客船(ダイアモンド・プリセス)に乗船した1人の香港人が持っていて、それが船に拡散され、2020年2月29日現在700人超を患者にしたということですが、この政府・厚生労働省の不手際はどうでしょう。(罹患率は実に20%、5人に1人が感染したのです。)ここで感染した人が日本各地に散り、その地域で二次感染を起こしている場合が多いのです。それを糊塗するため、無能で宴会大好きな安倍晋三が全国の小・中・高校に一律で長期の閉校を要請したわけです。(2月27日)この男、感染対策の重要な会議を3分で切り上げ、盟友の稲田朋美の誕生会にイソイソと出席したそうです。毎日が宴会三昧。


ダイアモンド・プリンセスのような「密閉空間」に、多くの人が集まると、色々な問題が生まれます。疾病もそのひとつ。アメリカの作家(詩人、怪奇小説推理小説)であるエドガー・アラン・ポー(1809-1849)は『赤死病の仮面』という作品を残しています。ある国に、罹るとほぼ100%命を落とすとされる赤死病が蔓延し、国民は死滅しましたが、領主は自らの城(密閉空間)に食糧と仲間を囲い、赤死病をシャットアウトして、舞踏会を催すのですが、趣味の悪い(赤死病で死んだデスマスクのような)仮面を被った人物が現れます。あまりの扮装に、領主は激怒し、さまざまな色彩に照らされた部屋から部屋へ移動し、剣戟し合うのですが・・・じつはこの闖入者こそは、赤死病そのものだったという結末です。・・・勝利者は、もちろん仮面の男。


200年近く前に書かれたこの作品、むしろ現代的なものであるように思います。すくなくとも、ポーは安倍晋三よりは物を見る目が確かです。


エドガー・アラン・ポー短篇集 (ちくま文庫)

エドガー・アラン・ポー短篇集 (ちくま文庫)

  • 発売日: 2007/05/01
  • メディア: 文庫


 (2020.02.29)