虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

プラスティック:昔は花形物質だったのに。~水俣病の呪縛

プラスティック:昔は花形物質だったのに。~水俣病の呪縛

最近、プラスティックが砕けて微小になったマイクロ・プラスティックが環境と野生生物への有害性を示すことが話題になり、スターバックスコーヒーがプラスティック製のストローを排斥するなどの社会的影響が発生したのは、記憶に新しいところです。


ただ、プラスティックは開発・実用化の初期には、「夢の物質」としてもてはやされたものでもあります。


プラスチックは英語でplasticsまたはplasticと書きますが、その語源はギリシャ語のプラスティコスで、“生長する”“形づくる”“発達する”などの意味があります。


“形づくることができる”=“可塑性(かそせい)がある”という意味の形容詞として使われ、プラスチックという名詞ができました。


プラスチックという名前は、プラスチックの特徴である「自由に成形できること」をそのまま意味しているのです。

https://www.polyplastics.com/jp/pavilion/beginners/01-03.html


プラスティックは、そのどんな形状にも形が変わる可塑性が大きな魅力だったのです。プラスティック産業界においては、このように自在に形を作れるプラスティックは、射出成型という方法で生産されますが、プラスティック産業界はひろく自動車産業界の「下請け」として、自動車産業界から、「蔑まれて」操業しているのが実情です。


私はこのような射出成型の会社に1年ばかり勤めたことがありますが、「技術の・・・」というキャッチフレーズで有名な大手自動車会社・H社の孫請けで、「わが社の協力企業で不良をよく出すのがU社で、そのなかでも最悪なのがU社のまた請けのK社だ」と私がいたK社が名指しで侮蔑されていたのです。その下請けが本社の気に入らないときは「金型を引き上げるぞ」と言えば十分でした。成型機オペレーターだった私は朝8時から夜8時までという超過酷な条件の労働をしていました。キツかったですねえ。それほど仕事量が多く、繁盛はしていました。この労働のおかげでお金が溜まり、後年『災害の芽を摘む』を自費出版する際の財源にできたのは良かったです。


ここで、案外・意外なつながりが、プラスティックと水俣病にあります。私の師の一人、公害問題の泰斗:故・宇井純さんが学生だったのは、ちょうど日本の高度成長期で、彼もプラスティックを卒論にしていましたが、毎年、東大工学部化学工学の卒業生のうち、首席の学生しか採用しなかったのが「水俣チッソ」でした。いまではしょぼい、水俣病患者の救済のために延命させられている企業ですが、むかしは超エリート集団だったのです。このチッソ水俣工場では農業用資材を多種作り、農家の農作業の強い味方でした。ビニールハウスのビニールとか黒いマルチ(土を覆い、保温、保水する資材)も作っていました。



さて、そのようなプラスティックを作るとき、触媒(しょくばい:その物質自身は反応の前後では変化しないが、化学反応を引き起こすのに不可欠なもの)にHg(水銀)を使っていたのですね。勘の鋭い人なら察せると思いますが、この水銀が劣化してメチル水銀となり、この物質を含む工場廃液を何の浄水工程も実施せずにそのまま水俣湾に放流していたことが長年蓄積し、水俣病というメチル水銀中毒症を発生させたのです。


実に、プラスティックが公害を招いたのです。(追記すると、化学工学の重要な小道具として、触媒は付き物ですが、この物質にオールマイティな価値を置くのはアブナイ、とこのチッソ株式会社の事例は告げると思います。)



今日のひと言:どんな物(者)にも表と裏、陰と陽があるものですが、プラスティックほど、その感が強く感じられる物質も珍しいと思います。便利さを人類に提供するかと思えば(表、陽)、手痛いしっぺ返しを用意する(裏、陰)。日本の一般市民も、農業用資材を介し、水俣湾の被害住民との片利的な関係を持っていたのです。水俣で起きたことは、決して他人事ではなく、水俣病はいまなお存在し、我々一般市民のあり方を問うているのです。


プラスティックと舐めてはいけません。手軽に拳銃さえ作れる3Dプリンターは、プラスティックを加工材料とするのです。して見ると、プラスティックは金属に匹敵する強度を持っていることになるのですね。昨今、話題となっている“マイクロ・プラスティック”は、プラスティックそのものの環境中での劣化が原因で、水俣病のころより、プラスティックそのものの環境中での蓄積が圧倒的になってきているのです。



プラスティック・ラヴ

プラスティック・ラヴ

原点としての水俣病 (宇井純セレクション[1])

原点としての水俣病 (宇井純セレクション[1])




今日の一品


@甘露煮アユの白和え


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高価ではあるが美味しいアユの甘露煮。一袋5尾入っていて700円。2尾は前日そのまま食べ、残ったうちの2尾を使って白和えを作りました。参考にしたのは以下の記事。美味でした。


https://cookpad.com/recipe/5587124

ほうれん草とささみの白和え

 (2019.04.12)



@甘露煮アユの炊き込みご飯


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前日に残したアユ一尾、半分に切って炊飯時に混ぜ、仕上げに刻んだ山椒の新芽を加えました。佳味。

 (2019.04.13)



@オクラのゴマ味噌・蜂蜜和え


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弟作。クックパッドからヒントを得たそうですが、まずまずの風味。我が家ではオクラを加熱して食べることが多いです。

 (2019.04.13)



@白菜の花弁焼き


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切り分けた白菜を、皿に立てて入れ電子レンジでチン(4分半くらい)、出てきた水を捨て、「カラスカレイの中骨缶を注ぎ、クコの実を散らしてもう一回2分くらいチンします。白菜の様子を花の「花弁」に例えました。

 (2019.04.13)



@ウドとベーコンの炒め物


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弟作。長く切ったウドとベーコンを炒め合わせ、塩、胡椒、七味唐辛子で味を整えます。あり合わせのものを組みあわせたのですが、このような試みは、新しい味を生み出すことが多いです。


 (2019.04.16)





今日の五句



雪被り
怒り納める
浅間山


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この火山は世界的な噴火の歴史があり、その影響はフランス革命に繋がったとも言います。

 (2019.04.13)



落穂食べ
玄い鴉の(黒いカラスの)
地に立てり


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私のアイコンのテーマ「玄黄図」のモチーフです。

 (2019.04.13)



歩きつつ
摘まむナバナの
鮮烈さ


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私は、野生のナバナ(菜花)の花穂を摘み取り、そのまま口に運びます。

 (2019.04.16)



役目終え
枯れる葉ならむ
ヒガンバナ


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秋の彼岸花の美しさは、別時期に広がる葉たちに支えられています。

 (2019.04.16)



アスファルト
亀甲せんべい
美味しそう


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 (2019.04.17)