塙保己一(はなわ・ほきいち:1746−1821)は、江戸中・後期の国学者。生後5、6歳で眼病のため失明します。生まれ故郷は埼玉県・児玉。八高線に乗ると、児玉駅の案内板には塙保己一生誕の地と書いてあります。盲目になった彼にとって身を養うよすがは、按摩・鍼(はり)、音曲、金貸しでしたが、生来不器用であった彼にとって、どれも難しく、また悪辣な借金の取立ても性に合わず、悲観して自殺しかけたのですが、救われ、師匠で保護者の雨富須賀一検校の計らいにより、かねてから希望だった学者の道を進みます。
『群書類従』(ぐんしょるいじゅう)は、塙保己一が編纂した国文学・国史を主とする一大叢書。
塙保己一が古書の散逸を危惧し、1779年(安永8年)、菅原道真を祀る北野天満宮に刊行を誓った。江戸幕府や諸大名・寺社・公家などの協力を得て、収集・編纂した。古代から江戸時代初期までに成った史書や文学作品、計1273種を収めている。寛政5年(1793年)―文政2年(1819年)に木版で刊行された。
歴史学・国文学等の学術的な研究に、多大な貢献をしている。
(中略)
構成
正編は1273種530巻666冊からなり、以下の25部に分類されている。
神祇部、帝王部、補任部、系譜部、伝部、 官職部、律令部、公事部、装束部、文筆部、 消息部、和歌部、連歌部、物語部、日記部、 紀行部、管弦部、蹴鞠部、鷹部、遊戯部、 飲食部、合戦部、武家部、釈字部、雑部
気の遠くなるように浩瀚な著作です。目が見えなくても、人に本を読んでもらえば、しっかり頭にたたきこんだのですね。恐るべき記憶力です。群書類従の章立てをみるだけでも、びびります。いちど、wikiで「群書類従」の項をご覧になれば解ります。
記憶力において、彼に比肩できる日本人は、おそらく南方熊楠(みなかた・くまくす)くらいでしょう。世界的に見れば、時代の息吹を書き留めたという意味で、中国の司馬遷とも共通点が見出せます。なんにせよ、塙保己一は、偉大な学者でした。
もっとも、彼が恵まれていたのは、彼の周りには彼に善意を持って接する人が多く、彼の学問の進歩に障害となるものがなかった点です。盲人といえば、これも江戸時代には階級社会であり、無官から最高位・総検校まで73からの階級があったことです。学問を志す保己一に対し、旗本、町屋、神社仏閣などが、保己一が読んでみたいという書籍をホイホイ貸してくれたり、プレゼントしたりしたのです。なんと幸福な国学者か。
なお、保己一の学問の一片を示す記述は
『令義解』は、上代史の研究に欠かせない根本史料であるが惜しいことに完全な伝本を失っていた。保己一は、これまでに出版されていた本を照らし合わせ、逸文を加え、校訂し、ほぼ『令義解』の原形に復元した。(令義解:りょうのぎげ:筆者注)
:「眼聴耳視 塙保己一の生涯」花井泰子:発行・株式会社 柏プラーノ
P214 (このブログの記述は、おおくこの本を参考にしました。)
大変に根気のいる仕事をやっていたのです。
今日のひと言:表題の「目明きは不便よのう」という言葉は、源氏物語の講義をしているとき、ふっとロウソクが消え、一堂浮き足だったときの言葉だったそうです。また、現在の400字詰めの原稿用紙は、群書類従のフォーマートから来ているそうです。恐るべし、塙保己一。
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今日の一品
@なんちゃってバンバンジー
弟作。予めゆでた鶏ムネ肉を裂き、味噌、砂糖、チリソース、オレガノ(ハーブの一種)で味付け。美味でした。特にオレガノの風味が素晴らしいです。
(2017.02.17)
@モツ煮
私はモツ(ホルモン)が案外好きで、たまに調理が完全に出来たものを買っていましたが、今回は「白モツ」を買ってきて、水から煮て調理してみました。まずお湯を2回取り換えて煮込み、その後ごま油、水を入れて茹で、コチュジャン、味噌、塩を加え、水気が切れたところで、オレガノ、七味唐辛子を加えました。やはりオレガノの風味が強く美味です。
(2017.02.18)
@ウドのマリネ
30%引きで売っていたウド、ザックリ切って酢水に晒し、軽く茹でて、秘伝のマリネ液に漬けました。ウドの風味はそのまま、マリネの味が加わり、グッドでした。
(2017.02.19)
@豚・牡蠣鍋
今季最後の鍋。締めくくりとして、鴨肉を食べたかったのですが、いかんせん高価。そこで食味が似ていて、ビタミンB1を同じく多量に含むという意味で、豚ロース薄切り肉で代用しました。
ほかに、鱈。(その他、シラタキ、豆腐、白菜、ネギ、春菊など鍋の常連食材)
(2017.02.23)
今日の詩
@生老病死
釈迦が悩んだ4つの苦
私は現在、生を体験している。
あと3年で還暦を迎えるので
私は老も体験している。
これでもか、これでもかとでも
言うくらいに病が襲ってくるので
私は病も体験している。
死というものは未知だが
夜毎に眠ることを疑似的な死だとすれば
私は死も体験している。
生老病死、もしかしたら
死が最後にくるだけに
苦しみのない死がやってきたら
喜ぶべきことかも知れない。
(2017.02.23 :私の誕生日)
今日の雑感
NHKテレビで、昭和23年から平成6年まで施行されていた「優性保護法」の非人間的な運営のお話が放送されていました。心身ともに「健康」な国民だけにするため、知的障害者、精神障害者の生殖能力を人為的に奪うという呆れた悪法でした。そんなアナクロな法が戦前・戦中ではなく戦後に制定されてついこの前まで施行されていたとは・・・塙保己一だって去勢されたのでしょうね。彼がその時代に生きていたら。
(2017.02.24)
現在、ブログの更新はおおむね6日に一回行っています。