ソクラテスと産婆術:宗教家より宗教的な哲学者
ソクラテスと産婆術:宗教家より宗教的な哲学者
ソクラテス(wiki)
さん ばじゅつ[3]【産婆術】 〔ギリシャmaieutikē〕
ソクラテスの問答法のこと。自らは積極的なロゴスを産み得ないが、対話によって相手のロゴスの産出を手伝い、また産まれたロゴスの吟味を行うことを、産婆の仕事にたとえて呼んだ語。 →問答法
https://www.weblio.jp/content/%E7%94%A3%E5%A9%86%E8%A1%93
ソクラテス(469B.C.?―399B.C.)は、ギリシャの哲学者。ここで取り上げた「産婆術」とか「無知の知」で名高く、またその哲理の公開の過程で、恨む人もいて訴えられ死刑の罰を受けますが、彼はあわてず騒がず「悪法もまた法」という言葉を残し、猛毒「ドクニンジン」を仰ぎ、従容と死に赴いた、ある意味カッコイイ人ですね。自分が死ぬ過程も冷静に観察しました。まあ、世界の4大聖人といえば「釈迦、キリスト、孔子、ソクラテス」とされるのが普通でしょうか。5大聖人といえば「ムハンマド(マホメット)」も入るでしょう。
この場合、「ロゴス」とは、「論理=抽象的思考」といった意味としておきますが、ソクラテスはこの営為を行う者たちに、一種の衝撃を与えたことになるでしょう。彼ら(主として哲学者)の拠って立つ地盤も「産婆術」「無知の知」などを旗印とするソクラテスに打ち倒されたということなのでしょうね。
「産婆術」は引用にもある通り、ソクラテス(術者)にとっては、なんのロゴスも見出せないが、受ける者にとっては、これまでの自分が、問答の結果、「自分が実は、何事も知らなかった」と知り、壊れて行き、いったん死んで、その後第二の誕生を見るほどの大きなインパクトがあるのでしょうね。誕生させるために、いったん「殺す」のです。これは後世の化学用語で「触媒」のような働きを見せるように思います。触媒という物質は、化学変化に関わる幾つかの物質と実際には化学反応するのですが、一連の反応後は元の状態に戻ります。してみれば悩める若者と産婆術で関わることによって、結構自分(ソクラテス自身)も精神的な刺激を受けることは余禄というか、彼の役得になるのだと考えられます。まあ、赤ちゃんを取り上げる産婆と同じく、誕生に関わった者として、無上の喜びが得られるのかも知れないですね。
:宗教の目的は「殺す」ことである:「タウタウ教」なんかどう?
(この過去ログに噛みついてきた人がいました。その人は、私が「シャカがこの世に生まれた目的(出世の本懐:法華経にある)が“殺す″ことである」と日記の中で書いたことについて、私の論理をよく読まずに、否定していましたが、彼は、「いったん死ぬことが、第二の誕生のために不可欠であることが解らず、法華経の表面的な理解を以って噛みついてきた」という訳です。)
それから「無知の知」についてですが、この言葉が「産婆術」のテクニックそのものなのでしょう。「自分に知らないことはない、自分は万能だ」と考える人に対し、その知のありようをまるでタマネギの皮を一枚づつ剥くように引っぺがして行き、自分の「知」が実は根拠のない偏見だったと解らせる作業・・・(これはある意味近現代の「精神分析」に似ている気もしますが)これによってソクラテスは多くの若者を、第二の誕生に導いたのです。しかし、ソクラテスに論破されて憎憎しく思っていた人たちに訴えられ、「死刑」と決まったときにも彼が平然としていたのは流石です。
今日のひと言:老子(4大聖人には普通数えられない様ですが)の言葉に「無為の為」というのがあり、「なにもしないことで、なにごとでも達成できる」という理解に苦しむ用語がありますが、これは「無知の知」と非常によく似た表現です。「無為(の為)」については私の過去ログで取り上げていますので、ご覧下さい。
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20071126
私は週刊新潮に連載されていた哲学者:池田晶子さん(故人)のコラム「人間自身」を愛読していたことがあり、編集部留めで池田さんへの手紙を認めたことがあります。彼女はソクラテスに詳しく、「無知の知」と「無為の為」について、相違点と類似点について意見を求めたのです。彼女からの返信は来なかったですが。そうこうする間に、彼女はこの世を去ったのです。彼女が存命中に考えたギャグ:森下と池田さんが哲学勝負し、負けた方がペナルティとして、勝った方とデートする。どう転んでもデートする。

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今日の一品
@ナスとトマトの炒め物オレガノ炒め
弟作。中型のトマトを炒め、次にナス。仕上げに塩、オレガノ。簡単でも美味しい。
(2019.08.21)
@大根一夜漬け
イチョウに切った大根に、塩、トウガラシを混ぜ、重し付きの漬物容器にいれ、一晩置いて取り出します。シンプルな味で美味しい。
(2019.08.26)
今日の詩
@「ムスタファ60」
坂本九の曲に
トルコの若者:ムスタファの歌がある。
彼は美女を見初めたが
財産のない彼、彼女を迎えるために
金の亡者になった。しゃかりきに働いた。
大金持ちになり、その娘を訪ねたところ、
彼女は60歳になっていた・・・
私はムスタファを笑えない。
若い頃は浮いた話は幾つもあったが、
全て「私の“心の”準備不足」で別れた。
私の場合、若い頃の家庭環境が異常で
躁鬱病になった母は、私に精神的打撃を見舞った。
その原因だった父は、的確な対処が出来なかった。
母を入院させた精神病院も誤まった処置をしたのだ。
私は好きな女性が出来ても、
母を介し女性不信の念が芽ばえていたので
どうしても彼女らに素直になれなかった。
さて、私も来年60歳だ。対女性的に丸くなった。
でももはや家庭を新たに作る財産も気力もないのだ。
占いによれば(漢字の画数占い)、
私は「家庭に恵まれない」とあるらしい。
(2019.08.23)
今日の三句
枝切られ
レモンバームの
新芽吹く
レモンバームはシソ科のハーブ。レモンの香り成分(リモネン)を持ちレモングラス、レモンバーベナと並ぶレモン風味のものとして有名です。
(2019.08.23)
オナモミの
秋に稔るは
イガイガ・実
キク科の野草。実のまわりにぎっしり生えた棘が衣服にくっつき運ばれます。ヒッツキ虫。
(2019.08.25)
秋に紅葉
ぎっしり蒔いた
コキアなり
蒔いた人は「蒔きすぎた」と言っていました。ホウレンソウ、オカヒジキと同じくヒユ科アカザ亜科。
(2019.08.25)