虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

不器用な社会人&生活者&哲学者:セーレン・キルケゴール

不器用な社会人&生活者&哲学者:セーレン・キルケゴール


キルケゴール【Sren Kierkegaard】

デンマークの思想家。合理主義的なヘーゲル弁証法に反対し、人生の最深の意味を世界と神、現実と理想、信と知との絶対的対立のうちに見、個的実存を重視、後の実存哲学と弁証法神学とに大きな影響を与えた。著「あれか、これか」「不安の概念」「死に至る病」など。キェルケゴール。(1813~1855)

広辞苑第六版より引用)


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キルケゴール(wiki)



哲学者という人種は、他分野の人たちとちょっと異なるのだと思います。たとえば、詩人で政治家、(広い意味での)科学者のゲーテは、哲学というジャンルで業績を挙げたという話は聞きませんし、モラリストのフランス貴族:ラ・ロシュフコーも、体系的な哲学を組み立ててはいません。箴言(しんげん:格言)という限られた範囲でキラリと光る詩的な言葉は残していますが。万能の天才であったライプニッツは、政治家、神学者、哲学者、数学者の幾つもの顔を持つのでスゴイですが、詩人という顔は持ち合わせていないようです。


iirei.hatenablog.com

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さすれば、哲学者と詩人は、ひとつの人格のなかに共存しないか、と言えば、ニーチェというほぼ唯一の例外があるように思えます。彼は詩人哲学者として有名だったと覚えています。ドイツ文学を網羅するレクラム文庫(ドイツ語)で、なかなか良い抒情詩を目にしたこともあるほどで、「ツァラツストラはかく語りき」はそんなニーチェの記念碑的著作物なのでしょう。


ここで対比させた「詩」と「哲学」、私的に言えば、これはキルケゴールの姿勢の解読にも大いに効いてくるようです。私は今日、『90分でわかるキルケゴール』(ポール・ストラザーン:青山出版社・1998年初版)を読了したのですが、このキルケゴール入門書で、キルケゴールの哲学のアウトラインは、ほぼ解ったように思います。


「詩」とは「美的・官能的な生活を追う態度」、「哲学」とは「倫理的な生活を追う態度」と言えると考えます。前者はしかし、外部の諸事情に左右されるものであり、後者こそ各個人が求めるべき対象なのですね。ここにキルケゴールの言う「あれか、これか」という様相が現れるわけです。彼はこの著作を皮切りに、夥しい著作を残すのですが、その人格的特徴は、実業家の父ミカエルの偏った教育姿勢により歪められたという事実が重要です。ミカエルは息子を牧師にしようと考えていて、無理やりな勉強をキルケゴールに課すのです。で、彼はとっつきにくい、老成した生徒になってしまいます。女性に関心を持つ年頃になって、売春宿に行っても、その接触は失敗に終わったらしく、のちに恋人は出来ますが、実にぎこちない付き合いの末、別れます。後にも先にも、この女性:レギーネ以外愛せなかったようです。(彼女は結局、別の男性と結婚します。)


ミカエルが死去し、キルケゴールには巨大な遺産が入ります。これ幸いと、彼は働かず、著作の執筆に没頭して、たくさんのペンネームを使いながら出版していきます。でも、遺産にも限りがあり、彼は職を求めなければならなくなります。いかに哲学のジャンルに力を入れても、それは確実な収入にはつながらず、父の教育の掣肘で、「牧師以外なれる職業はない」ということは解っていましたが、彼は、信者からお金を巻き上げる教会のやり方に怒り、出版社まで設立して、教会批判を展開するのです。これでは「自滅」を招くだけです。もっとも、キルケゴールについては、その論調の過激さがスウェーデンにまで知れ渡り、「危険人物」とされましたが、彼は歪んだ喜びを味わいました。社会人&生活者としては落第ですね。このような活動でレギーネの気を引こうといった意図も見え隠れする、と著者は書いています。歪んだ求愛活動です。



今日のひと言:キルケゴールの場合は、究極的には(理性で割り切れないもの・理性以上のものを信仰がもつので)キリスト教の信仰者が理想であり、ニーチェの「神は死んだ」とかサルトルの「実存は、あらかじめ神によってデザインされたものではない」という立場から見ると、不徹底ですが、キルケゴール実存主義哲学の先駆者として、記憶されるべき人かも知れないですね。彼は、詩人ではなく、真正の哲学者だったと思います。さらに言えば、「信仰者」だったということが言えると思います。


今回のブログで痛感したのは、私が哲学を語るには論理の立て方が雑で、哲学者の評伝は書けても、哲学そのものの記述は不得手であること。どっちかと言うと、詩人としての感性の方が大きいようです。




存在と無 全3巻セット

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今日の一品


@ハンペンのワンタン風


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あらかじめコンソメコチュジャンを溶かしたスープに、ちぎったハンペンを入れて煮込み、最後にオレガノを振って完成。ふわふわしていて、面白い食感。

 (2020.12.12)



@干し大根葉入りお好み焼


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昼食。干してカラカラにした大根葉をちぎり、お好み焼きとしました。他の材料も入っていますが、もっとも特徴的なのが大根葉なので、こう名付けました。だからお好み焼きなのですね。

 (2020.12.13)



スナップエンドウのオカカ炒め


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鹿児島産。鞘の筋を取り、2分割か3分割し、ごま油、アマニオイルで炒め、オカカのふりかけを投入、仕上げに山椒。エンドウの甘さが引き立ちました。

 (2020.12.14)



@カスタマイズド・ボルシチ


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なぜか電機屋で購入した100円ビーツ。これを核に久しぶりにボルシチを作ってみました。まあ、ビーツを中心にしたごった煮です。入れたものはビーツのほかに大根、ジャガイモ、キクイモ、ネギ、マイタケ、ソーセージ、コンソメキューブ、塩、オレガノ。材料が赤く染まって、綺麗でした。ビーツ自身、すごく甘くて。なお、ロシア語では「ボルッ」というのがより正確な発音です。

 (2020.12.15)



家庭で作れるロシア料理

家庭で作れるロシア料理




大腸内視鏡検査前の夕ご飯


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12月17日、18日に先立つ夕飯。植物繊維が含まれるとNGなので、食べられる食品は限られます。素うどん、バナナ、豆腐。どれもたしかに体に優しそう。検査結果は、ポリープは一切見つからず、摘出手術も受けないで助かりました。

 (2020.12.18)





今日の二句


ピラミッド
砂漠に立つや
陰が出来


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駐車所の敷地の石ころ。

 (2020.12.12)



カキナの葉
ギラギラ光る
霜の朝

 (2020.12.15)








☆☆過去ログから厳選し、英語版のブログを始めました。☆☆


“Diamond cut Diamond--Ultra-Vival”


 https://iirei.hatenadiary.com/


ダイアモンドのほうは、週一回、水曜日か木曜日に更新します。
英語版ブログには、末尾に日本語ブログ文も付記します。記事は
虚虚実実――ウルトラバイバルとはダブりませんので、こぞって
お越しを。