創作四字熟語はどれほど世相を反映するか?
住友生命では、1990年から、時々の世相を反映させる創作四字熟語をひろく一般に募り、毎年年末に大賞を決めて発表しています。選者は「サラダ記念日」で有名な歌人の俵万智さんです。
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/100108/fnc1001081149011-n2.htm
各年を象徴する優秀作(according to 住友生命:カッコ内は元の熟語)
90年 異旗統合(いきとうごう、意気投合) 東西ドイツ統合
91年 台風逸果(たいふういっか、台風一過) 台風で果実が多数落下
92年 紫煙楚歌(しえんそか、四面楚歌) 日本でも禁煙ムード
93年 扇扇狂狂(せんせんきょうきょう、戦々恐々) お立ち台ギャル
94年 政転辟易(せいてんへきえき、青天霹靂) 村山首相が就任
95年 震傷膨大(しんしょうぼうだい、針小棒大) 阪神・淡路大震災
96年 高官無恥(こうかんむち、厚顔無恥) 官僚スキャンダル多発
97年 靴下象様(かかぞうよう、隔靴掻痒) ルーズソックスがブーム
98年 倒行巨費(とうこうきょひ、登校拒否) 銀行破綻で公的資金
99年 着歌繚乱(ちゃっかりょうらん、百花繚乱) 着メロ出現
00年 圏外孤独(けんがいこどく、天涯孤独) 携帯電話が普及
01年 万国胸痛(ばんこくきょうつう、万国共通) 米国同時テロ
02年 日本熱闘(にっぽんねっとう、日本列島) サッカーW杯開催
03年 八方取税(はっぽうしゅぜい、発泡酒税) 発泡酒も増税
04年 様様様様(よんさま、ヨン様) 韓流ブーム
05年 無職無習(むしょくむしゅう、無色無臭) ニートが社会問題に
06年 住人怒色(じゅうにんどいろ、十人十色) 耐震偽装が発覚
07年 医師薄弱(いしはくじゃく、意志薄弱) 医師不足が問題に
08年 苦労長寿(くろうちょうじゅ、不老長寿) 後期高齢者医療制度
09年 遠奔千走(とうほんせいそう、東奔西走) 高速千円乗り放題
このように並べてみると、だいたい本来の四字熟語にちょっと手を加えて作っていることが解ります。昔「△肉□食」の穴を埋めよという問題に、「焼肉定食」と答える学生がいて、採点者は頭を抱えたというお話があります。これはたしかに四字熟語ですが、それほどこなれた表現ではないとも思われるのです。でも、この辺が住友生命のアイディアの源泉でしょうか。
93年の「扇扇狂狂」は、バブル景気当時の熱狂振り・・・ジュリアナ東京でのランチキ騒ぎぶりを伝えて余りあります。00年の「圏外孤独」はケータイ文化ならではの熟語です。03年の「八方取税」は国税局とビール会社の葛藤を伝えています。いかに安くて美味いビール類飲料を国民に提供しようかと研究するビール会社と、あくまで酒税法を拡大解釈して税金を取ろうか、という国税局。もとの熟語は「発泡酒税」でしょうが、あまりこなれた四字熟語ではありませんね。未熟な熟語。05年の「無職無習」。ニートの原義どおりです。07年の「医師薄弱」。「新臨床研修医制度」という悪法の犠牲者はかなりいるはずです。
今日のひと言:四字熟語は、漢字の持つ表意性を味方にできるので、たった漢字4文字で色々なことを表現できるのですね。畏るべし、漢字。それにしても、このようなコンテストにあわせ、おもしろ四字熟語を考える投稿者が多いのも驚異ですね。これだけ面白い作品たちは、なかなか作れるものではありません。
ところで、漢字の発祥の地、中国では、四字熟語を政治的なプロパガンダに使うことが多いですね。例を挙げれば「造反有理」・・・これは文化大革命のとき、盛んに使われました。最近では「愛国無罪」と言って、日本の小泉政権をバッシングする目的で使われました。

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