虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

素晴らしき職人気質(しょくにんかたぎ):自転車屋と少子高齢化

素晴らしき職人気質(しょくにんかたぎ):自転車屋少子高齢化



職人という言葉、一般人でもない、会社員でもない、芸術家でもないというイメージを私は持っていますが、私の住むT市にも、職人と呼べる人達がいます(いました)。彼らは自らの仕事に誇りを持ち、依頼された仕事はきっちりこなす技のエキスパートです。


自転車屋経営のS氏、この前自転車を直しに行ったとき、面白い素顔に嬉しくなったものです。2台持っている自転車のうち、この自転車は前輪がパンクし、前輪のブレーキも効かない状態で(1年くらい乗っていませんでした。でもこの変速機付き自転車を使う必要が生まれ)、これはもしかして一万円は掛かるかも知れないと、恐る恐る行ったのです。S氏は「俺はこの道62年、自転車のことはなんでも解る」と日ごろ豪語していました。


私はこのパンクは、単なるパンクではなくタイヤ・チューブを全取りかえなければならないだろうと思っていました。この修理の場合、だいたい3000円が相場です。果たして、そのようになりました。S氏は手馴れた手つきで作業し、「はい、完了」と言いました。


私:ブレーキも良くなったのですか?


S氏:そう。


私:ブレーキは直ったんですね?


S氏:直ったんじゃない、”直したんだ“


・・・このやり取りはある意味スリリングでしたね。一つの手間で、二つの問題を解決する。パンク修理に付随する作業だったので、請求されたのはパンクの修理代だけでした。そして職人としてのプライドの高さには感服しました。


T市では、自転車屋さんの数が激減しています。かれこれ10年前くらいまでなら、あちこちに自転車屋さんがあって、どこかでパンクしても、見てもらえる自転車屋さんがありました。廃業した店、店主が死亡した店、身体的疾患のため開店休業状態の店・・・S氏の自転車屋は、今となっては貴重な存在です。なぜ自転車屋の数が減るかといえば、一番大きな理由は、少子高齢化の影響で自転車を与えられる児童・学生の絶対数が激減し、自転車屋としては最も大口の収入源がか細くなることにある、と教えてくれた人がいました。(この状況は、自転車業界だけのことではありませんが、何と言っても「少子高齢化」の問題の一断片なのです。)


それにしても、S氏のプライドの高さは特記ものです。そして奇特なことに、S氏の息子さんも市の別の場所で自転車屋さんを経営し、自転車屋の数が減ってきたことをむしろチャンスと捉え、市全域、どこへでも「出張修理」をするとしています。多分、S氏の姿を見て育った息子さん、自転車屋という商売に可能性を見出したということなのでしょう。自転車屋になる、という息子さんの決意を聞き、S氏もさぞや嬉しかったことでしょう。



今日のひと言:ここでは自転車屋さんのお話をしましたが、他にも職人さんと、敬意を持って取り上げることのできる大衆食堂の店主U氏がいました。この食堂は惜しまれつつ、2018年9月に廃業しましたが、「昔からの味」を頑なに守り、ラーメン300円、カレーライス350円という驚くべき価格で提供していました。特にラーメンは麺もチャーシューも手作りで、昔からの醤油ラーメンの美味しさを教えてくれる体のものでした。豚骨ラーメンに飽きた人に是非食べてもらいたい逸品でした。S氏もU氏も1950年代後半(昭和30年代前半)から、この街で活躍していたのです。





かわうその自転車屋さん 1 (芳文社コミックス)

かわうその自転車屋さん 1 (芳文社コミックス)





今日の一品


ヤマトイモ料理2品


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@1:短冊切りポン酢和え(左:私作)

@2:ヤマトイモ入り卵焼き(右:弟作)


どちらもレシピというレシピはないです。ただ、ヤマトイモがカビを生やしたので、早めに消費すべく料理したのです。

 (2019.07.24)



@チリトリ


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弟作。細切れ鶏のモモ肉を海老に見立て、エビチリソースで炒めました。

 (2019.07.24)



@エンサイのナンプラー炒め


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弟作。この野菜はヒルガオ科で、アサガオナ空心菜などの別名の多い野菜です。中国南部から東南アジアで食べられ、加熱後、みどり色が黒くなりますが、味は抜群です。ナンプラー(魚醤)で炒めるのが最も合うでしょう。赤い色はクコの実。

 (2019.07.25)



@小豆(あずき)スプラウトのスープ



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スプラウト


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小豆のスプラウト(もやし)を作ったので、これをメインにしたスープを作りました。スプラウトを細かく刻み、別に育てている小豆の間引き菜の葉を刻んだものも加えました。最初はスプラウトのみ煮込み、仕上げで葉、塩、オレガノ(ハーブ)を加えました。

 (2019.07.27)





今日の五句



水たまり
動く者あり
たまじゃくし


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水たまりがなかなか消えなかったので、そこに蛙が産卵した?

 (2019.07.26)



草を刈り
空地に集う
山鳩ら


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 (2019.07.26)



土用なり
すでに咲きたる
桔梗(ききょう)かな


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秋の七草の一つ、桔梗が季節を過たず咲いているのに感嘆して。土用のあとに秋が来ます。

 (2019.07.26)



夜の雨
川が集めて
草倒す


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 (2019.07.27)



この一列
独り茂れる
センダングサ


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帰化植物アメリカセンダングサの繁殖力には恐るべきものがあります。ほおっておくと、植生が死に絶えるのです。


 (2019.07.27)