呉智英と封建主義〜それなりの合理性
「呉智英」と書いても、「ご・ちえい」なる中国人ではなく、「くれ・ともふさ」と読む、立派な日本人です。彼は、1990年代に活躍が目立った評論家であり、私も彼の本を3、4冊読みました。とくに「バカにつける薬」は愉快な内容でした。今回は、「封建主義者
かく語りき」(史輝出版・1991年初版・本体971円)を取り上げます。
呉さんについてはwikiから
呉 智英(くれ ともふさ、またはご・ちえい、1946年9月19日- )は、日本の評論家、漫画評論家。愛知県西枇杷島町(現・清須市)出身。京都精華大学マンガ学部客員教授、日本マンガ学会会長。「儒者」「封建主義者」を自称し、民主主義信奉者や人権思想を批判している。大学で論語の講座を持っていたこともある。
本名は新崎 智(しんざき さとし)。ペンネームは「水滸伝」の百八星の中での随一のインテリである軍師役「呉用」に由来する。
この短い紹介文からも解かるように、呉さんは民主主義を排撃し、代わって孔子に代表される封建主義を良し、とするのです。ここでは、明治時代以降にもいた、「家のことばかり考えた政略結婚を進め、当事者の自由恋愛を阻害するような父親」は封建主義者ではないとされます。
では、封建主義とはなにか?・・・これについてはおかしなことに、この本には正確な記述がないのですね。でもこのあり方は、洋の東西を問わず、存在しました。儒教の祖、孔子の時代も、王にあたる人物が、地域・地域の統治を臣下に委託し、臣下はその領土を安堵されることにおいて、王への忠誠を誓うのですね。その意味では、日本でも長い間続けられてきた制度です。そして封建制度の良い点は、「地方分権的」であることでしょう。
呉さんは、主張します。ファシズム、スターリニズムは、民主主義が産んだものであり、封建主義はそんなものを生み出さなかったということ。中央集権の魔術ですね。
孔子を引き継いだ儒者の孟子の言葉に以下のようなものがあるそうです。:
P150力の政治を行なう者は侵略主義者である。侵略主義者は、国が大きいことをよしとする。しかし、理想の政治を行なう者は、国が大きいことを望まない。むしろ、国は小さいほどいい。
公孫丑下篇
・・・このような思想のもとでは、「民主主義」という国家拡大という欲求は生まれてこないわけですね。中央集権という考え方を拒否するわけですから。その意味では以前エントリーした「老子の小国寡民と鎖国政策」における、老子の「小国寡民」の考え方にとても似てくるのです。儒家も道家も、同様な結論になるのが面白いですね。ここいらが、西欧発の民主主義のアンチテーゼとなることを、呉さんは言いたいようです。
参考過去ログ
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20140627#1403863622
今日の一言:この本にはいろいろな逸話が紹介されていますが、蒼頡(そうけつ)という者が文字を発明した際、
吸い込まれるような漆黒の闇の中から、低くかすかな、悲しむような呪うような、魂を凍らせるような呻き声が聞こえてくるではないか。蒼頡は、震える手で、そっと戸を開けた。
蒼頡の家の外には、闇の中に、数知れぬ異形のものが集まり、怨みのこもった泣き声を発していたのだ(鬼哭啾啾)ぞっとする蒼頡に、異形のものは言った。「人は、ついに文字を見出してしまった。その力の前に、我らの没落が始まる。ゆえに、悲しみ嘆いているのだ。しかし、人間よ、汝らの徳も、必ず衰退するであろう」こう言うと、異形のものたちは、闇の中に姿を消していった。
P123
文字と人間のかかわりについて、深い内容を持っていると思います。人間の知性は諸刃の刃であるという。ちなみに、この説話の出典は「中国の古い神話伝承」とあるだけでした。出典も書かれていればエクセレントなのですが。
- 作者: 呉智英
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 1996/07
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 27回
- この商品を含むブログ (52件) を見る
- 作者: 呉智英
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 1996/07
- メディア: 文庫
- クリック: 30回
- この商品を含むブログ (55件) を見る
- 作者: 呉智英,適菜収
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/08/01
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
今日の料理
@豚肉のソテー・ローストオニオン+醤油風味
弟作。市販のローストオニオンと醤油を、焼きあがりつつあるソテーとともに炒め、最後にソテーの上に乗せました。案外美味しい。
(2015.10.10)
サゴシを5、6時間塩麹につけ、ナツメグとともに焼きました。ナツメグは甘くない料理なら
ほとんどどんな料理にも合います。
(2015.10.10)
@鬼ひも川(うどん)
群馬県は館林の名物うどん。ひもかわうどんというのは有名ですが、これはその特大のもの。乾麺の状態で麺のハバが2.6cmほどあり、茹でると4cmくらいにハバが広がります。
製造元:花山うどん:TEL:0276−74−0178
(2015.10.11)
@鶏胸肉の辛子和え
茹でた鶏胸肉を、辛子と甘塩を混ぜたペーストで和えました。塩辛くなり過ぎずに食べられました。
(2015.10.11)
今日の一句
落穂摘み
スズメが上げる
大音声(だいおんじょう)
稲の収穫後、カラスやスズメが落穂拾いに来ますが、声を上げるのは、だいたいスズメです。嬉しいのでしょうね。
(2015.10.11)
今日のロシア・フォルマリズム
♪ウオーターマンの天然水
機械で作る水は、「天然水」とは言わない。なにか誤解しているのではないか。
(2015.10.10)