虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

小説家には自殺者が多く、詩人・随筆家には少ない

以下のやり取りは、拙ブログへのコメントとレスです。

Q:作家ってなんか「死に対する憧れ」があるような気がします(汗)。
まあ私みたいな人間は、逆に自死を選ぶことはないでしょう(笑)。
日本でも太宰治玉川上水で、入水自殺してますし、ノーベル文学賞受賞者の川端康成もガス自殺しているのだけに、本当に奇怪なことです(*^^;)。
やはり自分の作品観が変わったとか、書きたいものが書けなくなったのが原因でしょうか(>_<)。


A:言われてみれば小説家で自殺した人は多いですね。太宰治川端康成のほかに、芥川龍之介三島由紀夫などがすぐに挙げられます。死の理由はそれぞれです。川端康成は執筆に行き詰ったからのようですし、芥川龍之介の場合は梅毒に蝕まれ、耐えきれなかったという説もあります。三島由紀夫の場合はまさに純粋に死に憧れたように思います。


さらに不思議なのは、詩人やエッセイストには自殺したひとがすぐに思い浮かばないことです。小説を書く行為というのは、書く人に過重な緊張を与えるものかも知れないですね。

http://d.hatena.ne.jp/iirei/20151113#1447408954

  :ガルシンと「紅い花」〜これも一人の救世主?


(ここに、Qはmatsukentoさん、 A はiirei (私)です。)


さて、以上の見解を検証・補強するため、「自殺した小説家」というキーワードでググってみました。するとwikipediaが引っかかり、これをもとに分析してみます。


自殺・自決・自害した日本の著名人物一覧(じさつ・じけつ・じがいしたにっぽんのちょめいじんぶついちらん)では、自ら命を絶った日本の著名な人物、あるいは自ら命を絶ったとされる著名な人物を一覧する。

日本の人物については「#自殺した著名人一覧」を、日本以外の人物については「自殺した有名人の一覧」を参照)


この資料の場合、自殺した人として、有名人を差別なく取り上げているので、小説家、詩人、随筆家(エッセイスト)を特別にピックアップします。また、近年多くなってきた漫画家の自殺については、小説家と活動ジャンルが重なることが多いですが、この稿ではオミットしました。また、詩人兼小説家のような場合、同一人物を別個にカウントしました。


では、日本の場合。有名人311人中


小説家  25人 (8%)
詩人   10人 (3.2%)
随筆家   5人 (1.6%)


小説家の自殺者数は詩人の2倍以上あり、詩人と随筆家を合わせた自殺者数より多い。



外国人の場合、アメリカ、フランス、イギリス、ドイツ、ロシアを分析してみました。


とくにアメリカの場合、

有名人53人中


小説家  9(17%)
詩人   2(3.8%)
随筆家  0(0%)


これは特異的な数値です。自殺した小説家にはSF作家が多い傾向があります。有名人中、17%もの自殺者がいたのはスゴイ。この数字は日本の2倍にあたります。


ほかの国、フランス、イギリス、ドイツ、ロシアには、これら文筆業者については、日本やアメリカほどには、はっきりした傾向は見つかりませんでした。ただ微妙にその傾向を感じます。



今日のひと言:全体的に(世界的にも)詩人・随筆家が小説家より自殺者数が多い、という傾向はないようです。してみると、小説家の仕事は「自分を極限まで追い込み、命の危機に達するまで仕事をする」傾向があるのかも知れません。


自殺の心理学 (講談社現代新書)

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もしも「死にたい」と言われたら  自殺リスクの評価と対応

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人はなぜ戦争をするのか エロスとタナトス (光文社古典新訳文庫)

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ヒトはなぜ戦争をするのか?―アインシュタインとフロイトの往復書簡

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今日の料理


@魚の煮汁のスープナツメグ風味




ホッケと鮭の頭を一緒に圧力鍋に掛け、出来上がった汁をスープにしました。具材は味噌汁と同じ。最後にナツメグで香り付けしました。あんがいナツメグは万能香辛料です。

 (2016.01.19)



@牡蠣鍋






冬のこの時期美味しい牡蠣鍋。牡蠣(かき)を中心にいろいろな食材を大鍋にぶち込んで煮込み、はふはふ言いながら食べます。我が家は「ポン酢」派。その満足度は牛ステーキ以上です。また牡蠣には薬用作用もあり、その栄養価の高さから「海のミルク」とも呼ばれます。

 (2016.01.21)




今日のロシア・フォルマリズム


横流し・・・・最近、廃棄するべき商品をもらって、ほかの業者に買ってもらうという事件がありました。こういう取引を横流しというようですが、「縦流し」という言葉は聞きません。「横流し」というのはペアとなる言葉がないので半端な言葉ですね。あるいは日本では「横」という言葉は「よこしまな、邪悪な」という意味を含んでいるのかも知れません。英語ではずばり「illegal sale:違法な商売」というようです。

 (2016.01.19)