中国が「世界の覇王」になる意図を隠さなくなってきたのは、21世紀を迎えてから顕著ではありますが、既に1997年、台湾人の「王文山:ワン ウェンサン::ペンネーム」氏は「七つの中国 21世紀中国の覇権主義から全人類を守るために」という刺激的な題名の本を上梓しています。(文藝春秋:ちなみに訳者は金美齢さん)
この本は、台湾人の王さんから見た中国の現在・過去・未来のヴィジョンですが、全7章のうち、第6章および第7章の後半で「七つの中国論」が展開されています。「和平七雄構想」です。
中国を七つの国に分割するというアグレッシヴな提案ですが、それはどの地域かと言うと
1)モンゴル人以外の東北地方・・・すなわち満州のことです。
2)内モンゴル自治区・・・モンゴル民族と漢民族の宥和の可能性
3)新疆ウイグル自治区・・・清の時代からの反目。独立を望むなら、叶えてあげるべき
4)チベット自治区・・・チベット民族はもともと漢民族と兄弟みたいなもの、独立を望むなら、叶えてあげるべき
5)蜀(四川省)などの南方・内陸国家・・・少数民族が多くいる
6)・7)・・・長江を境界線とする南北地域・・・もっとも漢民族の多い「原・中国」
このように中国が分割されれば、いろいろな弊害が除ける、と王さんは主張します。「大き
いばかりが国家の価値ではない」と。そのメリットには幾つかあり
1)統治不能を統治可能に変える・・・12、13億人の統治には小国のほうが楽
2)互いに尊重し協力することを学ぶ・・・相互尊重が当然になり「三峡ダム」の工事についても、事前に当事者間の協議ができたであろう。
3)各地域の地理、人文、種族の差異を尊重する
4)数千年来の集団主義的統治方式から中国人を解放する・・・「一つの中国」「四つの堅持」の政策を取り続けると、中国共産党は一党独裁を強化し、人為的な貴族統治集団が形成され、いずれこの「共産王朝」はやがて覆されるであろう。
5)未来の社会において、経済ブロック主義の発展は必然的な趨勢である
6)国際間において「一つの中国」の脅威がなくなり、世界平和や地域平和が達成しやすくなる。
王さんは言います、「たとえ七つに分割されたとしても、それぞれの国は、世界的に見ても強国であるということ。」
先ほど出てきた「四つの堅持」とは「社会主義路線を堅持する、プロレタリア独裁を堅持する、共産党の指導を堅持する、マルクス・レーニン主義と毛沢東思想を堅持する」といった政治的態度で、これが中国人独特の中華思想(天朝意識)と、それによる排外主義(ショービニズム)が結びつき、中国を世界の脅威たる存在にしているのですね。
なお、国は小さい方が良いという議論は、道家の老子も、儒家の孟子も行っています。正反対の立場の両者が、同じ結論に至るというのも面白いことです。
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20140627#1403863622
:老子と小国寡民について
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20151015#1444859057
:孟子の小国論について
参照。
今日のひと言:ただ、王さんは、現在の最悪な中国の諸問題、なかでも環境問題についてはさほど精密な議論はしていないようです。資源一つをとっても、国家体制が資本主義的になれば、いまのままより状況は良くなると考えているようでして、地球上の資源乱用については、宇宙開発という手もあるとしているようですが、その行為はまさに「天に向って唾を吐く」というものなのだと思います。王さんの論理には、環境問題については聴くべきところがありません。
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今日の料理
@ハンペンの煮物
ハンペンをちぎり、先に作っていた煮物汁の残り(八丁味噌+醤油)に投入し、煮ました。最後にユズを散らし入れて、火から降ろします。麻婆豆腐に見た目似ています。
(2015.10.26)
弟作。切りそろえたジャガイモをレンジで4、5分加熱し、その後フライパンで炒め、市販のジャーマンポテトの素を加え、エノキダケ、パセリを合わせてさらに炒め、完成。
(2015.10.27)
弟作。豚肉のソテーの香辛料として、わが家ではナツメグとかセージを使いますが、今回はクローブを使いました。この香辛料は香りが抜群です、しかし後味は苦いので使いにくいのですが、今回はクローブを刻んだものを中心にして、少々のナツメグ、塩、を合わせて小麦粉で肉をまぶし、加熱しました。(食べかけの状態の写真でした)
(2015.10.28)
@塩味ガンモドキ
むかし東京都小金井市に住んでいたころ、某豆腐屋のガンモドキが塩味が効いていてとても美味しかったのを思いだして作ってみました。ガンモドキに塩を振り30分ほど経って、レンジでチンしました。やはり美味しかったです。(我が家では、大豆由来の食品・・・味噌、納豆、豆腐、高野豆腐などを、夕飯の副食品にするのです。)
(2015.10.29)
今日の一句
銀杏の実
落ちれば臭いと
放置され
銀杏(イチョウ)の赤い実は、糞尿のような匂いがし、臭いものですが、その中の白いタネ、およびタネの中核の緑色の部分は、洗練された視覚と風味があります。
(2015.10.29)