虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

「いじめられっこ宋」と「征服王朝の文化」

「いじめられっこ宋」と「征服王朝の文化」

中国、漢民族の建てた王朝で、もっとも弱かったのは宋だと思われます。実際、国の一部、もしくは全部を異民族に占領されてアタフタしていたのが宋です。異民族が建てた王朝を「征服王朝」と言い、遼(契丹人)、金(女真人)、元(モンゴル人)、清(女真人)の4王朝を指しますが、なんとそのうち3つまでが宋に関係する征服王朝です。


それだけ宋の対外政策が不備だったということになりますが、あくまでそれは政治=軍事向きの話であり、こと文化については決して異民族には負けないという自負があったのでしょう。


遼の場合、戦闘で負けて領土の一部を割譲せざるを得なかった宋ですが、ある意味屈辱的な朝貢貿易で遼の顔を立てる方式で劣勢であることを認めていました。さて、その遼の文化ですが、仏教に関する本、注釈書の編纂に力を入れましたが、本場中国のそれにはとても及ばなかったようです。


金の場合、宋の北半分・北宋を手に入れ、道教の研究が盛んで、数学・医学の範囲で優れた文化を創ったそうです。この国が画家でもある徽宗皇帝を拉致したのですね。でも、徽宗(きそう)に学んで絵画が隆盛したという話はききません。


元は、それまで異民族の支配を受けたことがない南宋を手に入れ、ここに中国全土が異民族の手に落ちたという画期的な出来事がありました。元代では、宋代に芽吹いた舞踊である「元曲」が一世を風靡しました。


いかにも虐められっこらしい宋の姿ですが、井沢元彦さんの「逆説の日本史」によれば、南宋儒家朱熹が唱えた「中華思想」は、このように国家的衰退と異民族の跋扈について、「中国がNO.1だ」という趣旨の論理だったとか。「東夷・南蛮・西戎・北荻」と中国から見て四方の未開人たちをあざ笑うという論理ですね。とくに北の異民族には歴代中国王朝が手を焼いていて、いかにも朱熹の言葉は負け惜しみに聞こえます。


ただ、ここに漢民族独特の階級で、宋代に起こり、元を排除した明代まで伏流水のようにつながったものがあります。「士大夫(したいふ)」


「士大夫(したいふ)は、中国の北宋以降で、科挙官僚・地主・文人三者を兼ね備えた者である。

唐末期の戦乱の中で伝統的な貴族階級は衰え、唐に代わって後梁を開いた塩賊に出自する朱全忠軍閥によって、実質的に亡んだ。その後の五代の戦乱の中で権力を握っていた者は、塩賊や北方遊牧民北朝以来の名門部族ではなく、より新興の勢力)に出自する軍閥の軍人が大半であったが、彼らの軍事警察力の下で実質的に政務を取り仕切っていた者は、馮道に代表されるような新興地主階級の文人であった。これが、後の北宋の士大夫の形成に至る。

  :wiki (士大夫)

士大夫は漢民族プロッパーの大きな領土回復の動きを準備したものだったかも知れません。


今日のひと言:文化というのは、政治や軍事と不可分なものであり、文化的な要素をそれらの中から生み出すのも、各民族の実力が伝わるものかも知れません。実際、文化的な側面では宋は大きな実力を持っていて、征服王朝にも一定の影響力を持ちました。


なお、今回の記述は『征服王朝の時代』(竺沙雅章:講談社現代新書)を参考にしました。



iirei.hatenablog.com


(注)この作品には、南宋が文化の庇護者として登場します。



亡国の皇帝 (中国の群雄8)

亡国の皇帝 (中国の群雄8)

宋名臣言行録 (ちくま学芸文庫)

宋名臣言行録 (ちくま学芸文庫)




今日の一品



@鶏シャーシューとモヤシの炒め物


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弟作。薄切りにされていたチャーシューとモヤシを炒めました。調味料として醤油、ニンニク、唐辛子、胡椒を入れました。あとを引く美味しさ。

 (2019.01.19)



@「すぐき菜」の漬物


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京都の伝統野菜で、カブの仲間。通常のカブのように丸くならず、むしろ根の外見は大根に似ています。美味しいというので、味を全面にだすため、醤油+梅サワー漬けの混合液を水で3、4倍に薄めて漬けてみました。味は上等です。(梅サワー漬けは梅:酢:砂糖を1:1:1の割合で調整した調味料)

 (2019.01.20)



ミニトマト・アイコ


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近頃評判の、ラグビーボールのような形をしたミニトマト。甘味と酸味がほどよく調和し、まるでフルーツのような味わい。そのまま食べました。

 (2019.01.23)





今日の詩


@殺人アリ(散文詩


秘密機関に入った私の元クラスメートKが恐るべき殺人アリを環境Gメンである私に仕掛けた。ビンに仕込まれた数十匹のそれは皮膚を食い破り皮下に侵入し、顎口虫(がっこうちゅう)のように体中を這いずりまわり、体を食い荒らす。そして人体の内部で増殖する。



早めに発見して殺すしかないが、私もダメージを受けた。私とKは一時休戦したが物分かりの悪い私の上司たちはアリをあなどり、対策を立てなかった。すでにKは大量に殺人アリをまき散らしていたので、それによるパンデミック(世界的な病気の流行)が気になる。



夢のお話。(アリ=蟻、このアリがヒアリの能力を持っていたら怖いな。)

 (2019.01.21  12:57記)




今日の三句 


むせび泣く
ビニール袋が
柵(さく)揺らす


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何たる強風!

 (2019.01.19)




冬枯れに
ひと際目立つ
センダングサ


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アメリカセンダングサは困った帰化植物ですが、種のなり方には面白いものがあります。

 (2019.01.20)



雨降らず
枯れぬ野草の
けなげさよ


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 (2019.01.22)