虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト:色々な事物を取り上げます。

「エヴァンゲリオン」と「越前竹人形」は似ている




綾波レイ

http://listen.jp/store/musicnews_27012_2.htm



 「新世紀エヴァンゲリオン」は、ご存知のアニメ作品、「越前竹人形」は水上勉の小説です。悲しいお話であるのは両者共通に思えますが、深い深層においても共通性があるかと考えました。今回ブログではその点を追っていきたいと思います。


 「越前竹人形」は、雪深い福井の山の中が舞台です。腕のよい竹細工の職人・氏家喜左衛門の息子・氏家喜助は、父に似て、身長が異様に低く(4尺あまり=130cm程度)、陰鬱な容貌をしていましたが、竹細工の修行は父の元で怠りなくやっていました。その父が亡くなった際、墓参りにきた女性・・・折原玉枝のことが忘れられず、彼女を口説き芦原温泉遊郭に通います。


 玉枝は病気持ちでした。でも喜助は彼女を福井の山奥に招き、共同生活を始めます。ついで、父の喜左衛門が作っていた「竹人形」も復活させます。彼の作る人形は、精緻この上なく、京都・大阪・名古屋にまで名声が聞こえ、どんどん注文が入ります。氏家家も潤っていきます。


 ただ、喜助は(母と容貌が似ていることを聞いていましたから)、玉枝をあくまで母親扱いしてすごし、同衾しても玉枝を抱きませんでした。「竹人形」を作ることが彼の玉枝への愛情の印だったのです。そして熱く燃える体をもてあました玉枝は、人形を買いにきた問屋・兼徳の番頭で不実な男・崎山忠平(遊郭で玉枝と寝たことのある男)に身をゆだねてしまいます。そして、見事に妊娠してしまうのです。


 この件について、玉枝は一人で悩みます・・・喜助は一指も彼女に触ってないのですから、妊娠したと打明けることが出来ず、京都まで出て行って崎山にすがろうとしましたが、体よくかわされてしまいます。途方に暮れた彼女は・・・といった粗筋の作品です。


 喜助は玉枝に似た母、顔も知らない母への慕情がつよく、その代わりに玉枝を求めたのでした。玉枝は喜左衛門に愛されたこともある女性で、ここでは父子双方にとって極めて親密な関係性を持つ女性です。だからと言って、「母と寝る」ことは喜助にとって出来ないことです。


 エヴァンゲリオンに出てくる綾波レイの場合、碇ゲンドウを夫とし、碇シンジを息子とする女性・・・「碇ユイ」のクローンが彼女・綾波レイです。ゲンドウは、妻のコピーであるレイを偏愛しますし、直接に母を知らないシンジはシンジで、レイに淡い恋心を抱きます。でも、恋人として愛するには、なにか足りない・・・もし結ばれれば「近親相姦」という事態になることを、本能的に薄々知っていたのかも知れません。


 シンジには淡い恋心があったにせよ、レイとは恋人として付き合うことはできなかったのです。レイの場合は、もっと複雑で、実際、使徒との戦闘中に、「あまりに心に忠実にされる心理的攻撃を「使徒」から受け・・・・(シンジ君と一つになりたい)」という願望を抱き、そう思うのは使徒の思うつぼでしたので自爆するという選択肢を選びます。


ここら辺の事情が、これら2作品の類似性を担保するかのように思います。「レイはシンジを求め、シンジはそれを回避する」ように「玉枝は喜助を求め、喜助はそれを回避する」というわけです。そして強調したいのは、喜助もシンジも、実の母を知らなかったということですね。


もしかしたら、「越前竹人形」が人形という作品を介して、愛情を伝えるという状況だったのと同じく、「エヴァンゲリオン」という擬似生命体を介して、愛情を伝え合うという状況を呈しているのが「新世紀エヴァンゲリオン」というお話だったかも知れません。生きるのが不器用な人たちのお話だというのが、よく似ているように思えます。


今日のひと言:私が文学作品を紹介する際、往々にして「完全ネタバレ」になることが多いですが、今回作品「越前竹人形」はあまりそれをせずにしておきます。


今回読んだのは:
越前竹人形」昭和47年(1972年)11月30日初版:中央公論社  です。


参考過去ログ:http://d.hatena.ne.jp/iirei/20051211

新世紀エヴァンゲリオン」主要登場人物の関係性の数学的考察



今日の料理


@漬物2題



スーパーで変わった漬物を見ると、よく買ってきます。左は「すぐき菜」、右は「玉ねぎのお漬物・シソ風味」です。どちらも人工甘味料とか着色料が入っていないので買ってきました。どっちも美味しかったです。「タマネギのお漬物」は、群馬県・前橋産です。


すぐき菜については

すぐき菜は、京都市北区上賀茂に伝承する在来のかぶの一種で、漬物となったとき特有の風味のある酸味(乳酸発酵)から「すぐき」と名付けられました。


 すぐきの歴史は古く、起源は桃山時代ともいわれ、近世初期から宮中や公家向けの贈答品や自家用として、上賀茂神社の神官の屋敷内で栽培、加工されていたものが、上賀茂地域の農家によって受け継がれてきたものです。すぐき生産農家は、伝統の味を守るため、師走の厳しい寒さの中、収穫と漬け込みの作業に日夜精力的に取組んでいます。

http://www.pref.kyoto.jp/kyotootokuni-f/1228962211981.html

より。

 (2013.09.13)


@ラム肉のヌタ



ラム肉料理のヴァリエーションとして、弟と相談して作りました。わが家では普通ラム肉は「タマネギと炒めもの」にするのですが、このタマネギをネギに置き換えると・・・酢味噌で和えたネギのヌタを連想しますので、ここはシャブシャブ風に肉を茹で、平行して別の鍋で茹でたネギを合わせ、「味噌+梅サワー漬け」で味を調えます。美味です。


 なお、梅サワー漬けは、青梅:酢:砂糖を1:1:1の分量で漬けこんだ複合調味料です。酸味と甘みが同時に摂れ、調味料も一種類少なくできますので重宝します。

 (2013.09.14)



今日の一句



草津
飲み込まれしや
ほとけたち


近所の墓地で、はずれの一角にある石仏群を見て

 (2013.09.14)



注釈:通常のブログ・エンントリーは、明日ですが、台風18号の影響で不測の事態が起こり得ることに鑑み、本日の夕刻にずらしました。