イスラエルとは何か(書評)
この本は、ソ連出身の化学者・歴史学者であるヤコブ・M・ラブキン教授が書いたイスラエルという国の矛盾を突いたものです。主張はただ一つ、シオニスト(シオニズム)とユダヤ教信仰は相容れないということ。
シオニストとは、亡国の国民になって世界中に散ったユダヤ人の中でも、「約束の地」に物理的に復帰する思考を持った者たちです。彼らの希望は1948年、パレスティナの地に入植することで実現しました。もちろん追い出されたパレスティナ人とかアラブの国々はこれを快く思っておらず、武力闘争になりましたが、軍事大国イスラエルはことごとく打ち勝ち、さらにはパレスティナ人の居住区域にも入植を続けています。
ラブキン教授は、このような植民地主義の非を鳴らしていますが、シオニストたちは止める兆しも見せません。シオニストという人たちは、ヨーロッパで西欧文明の中で育ち、きしくもキリスト教社会のなかで鬼っ子のような存在に成長していたのです。ユダヤ教の持つ敬虔さを失い、たんなる俗物として行動するのみです。
こんな話があります:
イスラエル人の新しいアイデンティティーがユダヤ教の伝統に対する反感の上に成り立っていることは、今では周知の事実です。イスラエルで目にされる反=ユダヤ教感情の激しさは、ほかのいかなる場所においてもあり得ないような域に達しており、イスラエルのメディアは定期的にそうした敵意の発露の実例を伝えています。
たとえば、ある時、イスラエルの公立中学(つまり非宗教を旨とする中学)で、トーラーに関する必修授業――もちろんトーラーを宗教的、規範的に扱うのではなく、歴史的、文学的テクストとして読ませる授業――の学年末試験を終えた生徒らが、中庭にトーラーの書を積み上げ、居合わせた級友たちの大歓声のなか、それに火を放ったといいます。補足として対照のために書き記しておくならば、敬虔なユダヤ教徒は、一時の学究を終えてトーラーの書を閉じる時、ましてそれを不注意から床に落としてしまった時などにも、トーラーに口吻をすることを習わしとしています。
P115−P116
ここに、トーラーとはタルムードと同じく、ユダヤ教徒が心のより所とする書です。(旧約聖書とは微妙に違うようですが、私には違いが解りません。)
以上の記述に現代のイスラエル人の持つ矛盾が発露されています。シオニストは、ユダヤ教というめんどくさい教養なしに、国防・軍事に邁進しているのですね。ヨーロッパから来たシオニストのユダヤ人が、先住のユダヤ人とかイエメンにもいたユダヤ教徒をイスラエルに受け入れても、受け入れられた方は、パレスティナ人と隣接した入植地に送り込まれ、戦火に怯えながら生活することを強いられます。シオニストは信仰より剣を愛するのですね。
現在のイスラエルは軍備に頼った帝国主義的国家であり、ユダヤ教は作動していない・・・
今日のひと言:主張したいことを約めるとワン・センテンスですが、ラブキン教授はこの本で、繰り返し繰り返し同じことを言っています。ちょっとくどい文章だな、と思いました。新書本としてはページ数が多いです。数週間かけてちょっとづつ読んでみました、まあ力作ではありますが。
「イスラエルとは何か」平凡社新書:2012.6.15初版 332ページ
(この本は、以前hatehei666さんが取り上げられていました。)
- 作者: ヤコヴ・M.ラブキン,菅野賢治
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今日の料理
@ブリのチーズ焼きコチュジャン風味
今回も弟のアイディア。ブリの切り身にスライスチーズを乗せ、コチュジャンを垂らし、レンジでチン!!これはイケル!他の白身魚にも応用できそう。
(2013.09.19)
@エンサイの炒めもの
東南アジアを中心に、よく食べられる野菜がエンサイ(エンツァイ、空芯菜)。ヒルガオ科の植物で、炒めものに向きます。私は毎年栽培していますが、飽きないです。味も上々。ただし、唯一の欠点として加熱後すぐに食べないと色が黒っぽくなってしまうことがあります。
今回はゴマ油で炒め、彩りにクコの実を入れ、ナンプラーで味付けました。
(2013.09.20)
今日の2句
わが犬の
桶に映えるは
十三夜
この句は(10.09.21)の十三夜の夜に詠んだもの。3年たっても同じ句を想起するものなのですね。 (2013.09.18)
美味しそう
だけど食えない
イシミカワ
イシミカワは、タデ科の野草です。特に利用価値はありませんが、実がムラサキ色になってまるでブドウのよう。もちろん食べられません。(写真は「日本の野草」秋:学研)
(2013.09.19)