虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

薬用成分の容器としての動植物

 私は以前、韓国食材店によく通っていました。(冷麺チャンジャエゴマコチュジャン漬けなどが好きだったので。)そしてある店の棚に「朝鮮人参オタネニンジン):Jinseng」らしき根っこのアルコール漬けを見たので、店の人に聞いたところ、それは「桔梗(キキョウ)」の根ということでした。


 桔梗の根は、一見朝鮮人参の根と見分けがつきません。「人参」とは、朝鮮人参の根の形が人のように見えるからそう呼ばれるようになったということであり、日本人が通常「ニンジン」と呼ぶ赤い根の植物はセリ科のもので、朝鮮人参とは別物です。こちらはウコギ科


「 さて、そのように形が似ている「朝鮮人参」と「桔梗根」、薬理作用で較べてみると、「朝鮮人参」は「主要な薬用部位は根で有用成分はジンセノサイドとよばれるサポニン群で、糖尿病、動脈硬化、滋養強壮に効能があり、古くから服用されてきた。血圧を高める効能があるため、高血圧の人は控えるべきだと言われてきた。しかし、血圧の高い人が飲むと下がるという報告もあり、実際は体に合わせて調整作用があるともいわれている。また、自律神経の乱れを整える作用もある。

漢方では他の漢方の薬効を強める働きがあるといわれ、単体だけでなく他の漢方と併用する場合もある。」(カッコ内wikipedia



「 桔梗根は「キキョウの根はサポニンを多く含むことから生薬(桔梗根という)として利用されている。生薬としては、根が太く、内部が充実し、えぐ味の強いものが良品とされている。去痰、鎮咳、鎮痛、鎮静、解熱作用があるとされ、消炎排膿薬、鎮咳去痰薬などに使われる。主な産地は韓国、北朝鮮、中国である。桔梗湯(キキョウ+カンゾウ)や十味敗毒湯、防風通聖散、排膿散などの漢方方剤に使われる。」(カッコ内wikipedia


 サポニンを含んでいて、そのことが薬理作用を持つ点が共通しています。そして、「形の相似が薬理作用の相似になっている」のだと思います。そしてこれは案外知られていないことですが、朝鮮人参(オタネニンジン)は、一回栽培すると、同じ土地では60年間作付けできないということらしいです。


  さて、海にも朝鮮人参と同格な薬理作用を持った生き物がいます・・・海参・・・海の朝鮮人参・ナマコです。実際、ナマコの栄養価は極めて高く、薬としての機能も持っているのです。サポニンを持っているのも海参の特徴です。

ナマコには、ビタミンB群・Eなどのビタミンや、カルシウム・鉄・亜鉛などのミネラル成分など豊富な栄養成分がバランス良く含まれている。中国では、ナマコが慢性肝炎の治療薬として利用され、補腎強壮効果、動脈硬化を予防する作用、性機能低下の回復作用、便秘の改善や利尿効果もあるといわれている。


また、新陳代謝を促進、肌・皮膚を若々しく保つ、クッションの役割をして、体重を支える膝や腰の負担を軽減するなどの作用があるコラーゲンや、コンドロイチンといった近年注目されている栄養成分が含まれているのも、ナマコの特徴である。


ナマコが持つサポニンの一種、ホロトキシンという成分は、強い防カビ作用を持ち、白癬菌を原因とする水虫やタムシの治療薬として実用化されている。ナマコは血を補い、浄化する作用や、腎臓の働きを助け、精力増強にも役立つので、滋養強壮にもぜひナマコをお勧めしたい。

http://www.j-medical.net/food/f-namako.html  より


海の場合、ミネラルが陸上より豊富なため、ナマコを捕獲したら60年も捕獲できないことは無さそうです。同じような例として、カイアポ芋シモン1号)というサツマイモの一種と海産物の牡蠣(カキ)の関係があるようです。カイアポ芋は、糖尿病に効果があると言われますが、やはり耕作後は数年作付けできません。大地からミネラルを多く奪うからだと思います。一方、牡蠣も糖尿病に効果のある食材・薬膳ですが、これもナマコと同じで切れ目なく養殖できるのですね。


 最後に、同じデンプンである「片栗粉」と「クズ粉」の違いについて。現在絶滅危惧種・「カタクリ」というユリ科の植物の根からは「片栗粉」は作られていません。だいたい「ジャガイモ」のデンプンそのものを「片栗粉」と呼んでいます。「クズ粉」にしても、ジャガイモのデンプンを何割か混ぜているようです。でも、クズ(葛)生一本のデンプンにはきわめて強い薬理作用があります。

秋から春にかけて葛の根を掘り起こし、板状かサイコロ状に切って、天日で乾燥させたものを葛根(かっこん)と呼びます。風邪薬として有名な葛根湯には、この葛根が用いられています。


また葛根は生薬の主原料として昔から幅広く使用されてきました。 葛の根にはイソフラボン誘導体であるダイゼインダイズインプェラリン等が微量成分として含まれており、これらの成分には、発汗、解熱、鎮痙作用があります。また、イソフラボンは血中コレステロールの低下に役立ち、体内カルシウムのコントロールを助けるので、骨粗しょう症更年期障害などに有効と言われています。 この微量成分は他の澱粉にはなく、葛粉特有のものです。しかし、精製された葛粉には葛根ほどの薬効は残っていないそうです。

http://www.kudzu.co.jp/introduction/index.html より。


微量成分が大事なのですね。これら特性は、クズの根が地中深く伸び、地中の栄養素を吸上げることに起因すると思えます。ジャガイモの場合、せいぜい地表下30cmくらいなので、クズのような芸当はできないのでしょう。
また、クズの根の地下30cmくらいまでは、有毒なので用いないそうです。秋に咲く花は、アルコール漬けでリキュールにできますが、実も有毒だとのこと。



今日のひと言:購買できて自分のものにできたこれらの優れた薬理作用のある動植物、ありがたくその命を頂かなければなりませんね。彼らは栄養素・薬理成分の優れた容器なのです。←これは、ちょっと「人間は環境を支配する」という考え方とダブりますが、私はそれほど傲慢ではありません。



ナマコ ガイドブック

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朝鮮人参秘史

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エゾウコギ驚異の効用―病気に打ち勝つ

エゾウコギ驚異の効用―病気に打ち勝つ


 @エゾウコギは、高緯度の地域で収穫できるウコギ科の植物で、薬効は朝鮮ニンジンに匹敵すると言います。





今日の一句

あちこちと
蜂飛び交わす
ラベンダー


荘子の中の一節・「胡蝶の夢」を思い浮かべながら・・・

  (2012.07.04)




今日の散文詩


今日、愛犬の散歩中に、草もはえていない田んぼに農薬を撒いているおじさんがいた。その農薬はフェノールっぽい匂いで、おそらくクレオソート油だったとおもわれる。


殺虫剤だろうが、この状態で農薬散布するのには驚いた。この田んぼはここ2年、稲ではなくネギを栽培していたが、今年は作付していない。それで、なんの害虫を殺すというのだろう?・・・


 この農薬の匂いは、電車道を隔てた我が家にもしばらく流れてきた。人間社会も含めた環境に無知な人はコワイ。

  (2012.07.05)