ミズカマキリとカマキリはどう違うか?
昆虫シリーズその2(全3話・一回おきにエントリーします。)
表題、結論から言えば、まったく異なる系統の昆虫です。カマキリは網翅目の昆虫で、ミズカマキリはカメムシ目・タイコウチ科の昆虫です。長い前足を使って昆虫と捕獲するカマキリと、オタマジャクシ、小魚を捕獲し捕食するミズカマキリはよく似ていますが、別種なのです。
水中での呼吸に使用する2本の鞘状の呼吸管は非常に長く、体長ほどもある(左図)。その細長い体ゆえか飛行能力は水生カメムシ類の中で最も高く、昼間でも頻繁に飛ぶ。これは生息範囲を広げるのに有効で、市街地近くの池沼でも観察されることがある。近い仲間のタガメやコオイムシが個体数を激減させているのに対して、比較的現代環境に適応した種と言えるが、環境破壊によってその数を減らしているのに違いはない。
形態からも想像できるように肉食性で、他の昆虫や小魚、オタマジャクシなどを餌とする。優れた飛行能力を有する反面、水中での動きはやや鈍く、水草などに潜んで獲物をじっと待つ。鎌状の前肢で捕らえた獲物には口吻を刺し、消化液を送り込んで溶けた肉液を吸う(体外消化)。消化には非常に時間がかかり、大きな獲物なら時に15時間以上も採餌し続けることがある。吸収した後の死骸はそのまま捨てる。
消化液を獲物の体に注入して、獲物の身をとろかして肉汁を吸う・・・あんまり気持ちのいい話ではないですね。同じような食餌法をとるのは、タガメ、タイコウチ、コオイムシなども共通ですが、彼らはいずれもカメムシ目の昆虫ですね。カメムシと言えば、野菜に群れをなしてたかって汁を吸う害虫として知られますが、この「汁」を吸うという行動が重要です。なんと、あの夏五月蝿いセミもカメムシの仲間なのです。(カメムシ目)。吸汁行動をする昆虫は、だいたいカメムシ目に入り、アブラムシ(アリマキ)、アメンボ、ウンカ(稲の害虫)などもそうです。
そこへいくと、カマキリは獲物をムシャムシャ食べますね、この点も違います。
この種の代表的な昆虫・タガメについて:
タガメ(田鼈、水爬虫)は、カメムシ目・コオイムシ科に分類される昆虫の一種。日本最大の水生昆虫で、日本最大のカメムシ(半翅目)。
背中に高野聖が笈(おい)を負ったような斑点があるので「高野聖」とも呼ばれ、食用に用いる地方もあったが、現在は絶滅が心配される昆虫となっている。(中略)
体色は暗褐色で、若い個体には黄色と黒の縞模様がある。コオイムシに似るが、本種の方が遙かに大型であり、尻の呼吸管があることで識別できる。前肢は強大な鎌状で、獲物を捕獲するための鋭い爪も備わっている。中・後肢は扁平で、遊泳のために使われる。
肉食性で、魚やカエル、他の水生昆虫などを捕食する。鎌状の前脚で捕獲し、針状の口吻を突き刺して消化液を送り込み、消化液で溶けた液状の肉を吸う(「獲物の血を吸う」と表記した図鑑や文献もあるが、体外消化によって肉を食べているのであり、血を吸っているわけではない。
タガメに食べられた生物は、骨と皮膚のみが残る)。自分より大きな獲物を捕らえることが多い。その獰猛さから「水中のギャング」とも呼ばれ、かつて個体数が多かった時には、養魚池のキンギョやメダカ等を食い荒らす害虫指定もされていた。
それが今では絶滅危惧2種に認定されているのは、むしろ人間のエゴを感じます。
カメムシ目の昆虫は、食用に出来るものが多いです。臭いカメムシなども、東南アジア、アフリカで食べる種族がいますし、タガメも東南アジアでの重要な蛋白源ですね(一説にバナナの香りがするという)。セミの幼虫は、私もテンプラにして食べたことがありますが、エビのようで美味しかったです。
過去ログ:http://d.hatena.ne.jp/iirei/20110927
「虫食む人々の暮らし」(書評)・昆虫食の現在
今日のひと言:外観は似ていても、中身は大違いという例が今回挙げた例の他に、植物にもあります。サボテン(正確にはカクタス)とユーホルビア(トウダイグサ科の一種)。どちらも大変まん丸な形態、あるいは柱状の形態をしていて、混同されますが、別種です。砂漠の過酷な環境に耐えるため、形態が似てきたのではないかと言われます。このように、別系統の動植物が環境の類似性から、同じような形態になるのを、「収斂進化」というようです。
子供のころの私は昆虫マニアで、カブトムシ、クワガタムシを始めとして、タガメも飼っていたことがあります。その際、アマガエルをエサにして与えたりして・・・結構残酷な子でしたね。
今日の一句
あでやかに
咲き連なりぬ
昼顔草
イヌの散歩道の川岸に地味だけど、色香漂う昼顔を見て。フランス映画「昼顔」のように背徳的な感じではありません。
(2012.06.29)
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