千日手に陥ったマンガ〜「静かなるドン」「ベルセルク」ETC
ここに、千日手(せんじつて)とは、将棋用語で、対局者双方とも有効な手を打てず、膠着状態になってしまうことです。
設定が考え抜かれていて、一度はそのマンガの世界に嵌っても、状況が変わらないので敬遠してしまうマンガがいくつもあります。その筆頭となるのが、「静かなるドン」や「ベルセルク」です。
まあ、「ゴルゴ13」ならば主人公はいつまでも屈強な壮年ですし、大体1話完結の形式なので、特に目くじらをたてる必要はないのですが、ここに挙げた2作品はせっかくの設定がもったいない、と言わざるを得ないでしょう。
「静かなるドン」(新田たつお:漫画サンデー:実業乃日本社)は、08年06月現在86巻出ています。このドラマには、2つの糸があり、一つは関東の指定暴力団組長として、ヤクザ社会を乗り切る存在としての、近藤静也。もう一つは、ランジェリー会社に昼間働いている、そして元同僚で想い人である秋野明美さんに恋する近藤静也。
秋野さんには自分の夜の顔を知られまいとする静也でしたが、いつしかその顔は、秋野さんに知られることになります。そして、そのことは(正体を知っていることを)彼女・秋野さんは静也には言いません。
縦糸であるヤクザ社会の有り様と、横糸である秋野さんとの恋の有り様を並列的に見られるかと言えば、そう器用にはできず、横糸である2人の愛の記述は、停滞していると思われます。だいたい30巻目くらいでは、秋野さんは静也の正体に気付いているのですから、なんとも間延びしたラブ・コメであると言えるでしょう。10巻目位までは、コミックスを買っていましたが、今は、ほら、ネットカフェで調べるためのネタにしかなりません。「静かなるドン」は、ヤクザ社会の有り様を現在追及しているのでしょうか?
「ベルセルク」(三浦建太郎:ヤングアニマル:白泉社)の場合は、クライマックスシーンをすでに描いてしまったから、のちの話がそれに追いつけないのかも知れません。現在32巻。
主人公ガッツの友人グリフィスが、かつての仲間たちを「贄(にえ:いけにえ)」にして、魔人に転生するという、ちょっと、読んでみないとわからぬほどすごいシーンでありました。「ベルセルク」の白眉ともいえましょう。この圧倒的な造形美からすると、グリフィスに挑むガッツの、そのあとの悪戦苦闘がこのシーンに追いつかないのは、当然のことなのかも知れません。出合うモンスターたちは、みんなグリフィスよりよほど格下なのですから。
今日のひと言:同じような陥穽(かんせい:落とし穴)に陥っているのが、「犬夜叉」(高橋留美子)です。もう、賞味期限切れかも知れません。
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20061109
「ドラゴン桜」(三田紀房:週刊モーニング連載)も、どうも以上の作品と同様になりつつあるようで、今現在は読んでいません。・・・と言うか、2007年までで、終わりを迎えたようですね。失礼しました。
過去のマンガで、質と量があいまってバランスがとれていて、過不足なかったなと思う代表作が「ドラゴン・クエスト〜ダイの大冒険」(週刊少年ジャンプ)とか「男組」(週刊少年サンデー)でした。
過去ログで取り上げたマンガ、アニメ関係ブログ(抜粋):
エヴァンゲリオン、ベルセルク
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20051211
封神演義
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20051231
課長バカ一代
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20060109
美味しんぼ
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20080110
バジリスク
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20060826
クマのプー太郎
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20061105
サザエさん
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20061207
犬夜叉
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20061109
最上殿始末(手塚治虫)
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20070323
ブラックジャックによろしく
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20070303
ピアノの森・のだめカンタービレ
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20070711
ギャラクシー銀座
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20080117
いじめ――ひとりぼっちの戦い――
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20080317
神社のススメ、フェティッシュ(田中ユキ)
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20080401
もやしもん
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20080421
- 作者: 雁屋哲,池上遼一
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 1997/01
- メディア: 文庫
- クリック: 5回
- この商品を含むブログ (24件) を見る
DRAGON QUEST―ダイの大冒険― 7 (集英社文庫(コミック版))
- 作者: 稲田浩司,堀井雄二,三条陸
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2003/09/18
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (3件) を見る
今日のひと言2:原油とか穀物などの先物取引に、日本人投資家や組織が絡んでいる、という趣旨のことを書いてあるブログの紹介です。
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20080605