虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

「コミック乱」と「コミック乱ツインズ」

iirei2008-02-26

 *「コミック乱」と「コミック乱ツインズ」



一十郎とお蘭さま」・コミック第一巻→

 いずれもリイド社が刊行している、時代劇だけを集めて作られた月刊誌です。「コミック乱」は毎月27日発行、「コミック乱ツインズ」は毎月13日発行です。
リイド社ゴルゴ13で有名な「さいとう・たかを」氏のスタッフたちが立ち上げた会社で、「何故、時代劇だけなのか」とTELして聞いたところ、「そこにしか隙間がなかった」との回答をもらいました。
 この「コミック乱」とか「コミック乱ツインズ」は、どこで売られているか調べたところ、セブンイレブン、ローソン、漫画専門に近い本屋などでした。大手コンビニ2社が置いていますね。それなりに販路を開拓しているようです。
 「コミック乱」(今回取り上げるのは08.3月号)の顔は「鬼平犯科帳」(池波正太郎/さいとう・たかを)です。コンビニの店長に売れ行きを聞くと、「「鬼平」の載っているほうはよく売れます」とのことでした。
 

 ほかに載っている(いた)漫画で印象に残っているのは、森鴎外原作の「阿部一族」。藩主が死ぬ際、「追い腹は切るな」と言い残したのにもかかわらず、追い腹を切った・阿部一族の家長。(「追い腹」とは、主君に殉じて切腹をすることです。)その後の藩と阿部一族の血みどろの死闘。このような、現在は存在しないような武士道徳がどんなものか、現在の若者にも知られるきっかけになるといいですね。


 「あおきてつお」の「水の剣 火の刀」。以前スーパージャンプに「緋が走る(ひがはしる)」という陶芸家の女の子を描いていましたが、今は刀鍛冶を修行する女の子を描いています。



 特に興味深いのは「一十郎とお蘭さま」(高見まこ)。高見まこは、ヤングジャンプを以前は活躍の場にしていました。「いとしのエリー」で、高校生と高校教師の女性との性愛を描いていましたが、この作品の場合、南條範夫の原作があり、明治維新の際、佐幕の藩の藩主の側室(お蘭)に付き従い一緒に落ち延びる藩士(一十郎)の関係を追っていくもので、濃厚な色気を感じることができる作品です。



  「コミック乱ツインズ」(08.3月号)の場合、仕掛人・藤枝梅安さいとう・たかを)が中心に来ますが、大河ドラマ級のネタ、「忠臣蔵」とか「私本 太平記」(吉川英治)なども取り上げられています。特に面白かったのは「先生のチョンマゲ〜戦国学童日記〜」(羅李熱斗/ロビン&颯悟)で、戦国武将の幼年期、父兄を伴って面談をおこなう・・・というお話で、そのはちゃめちゃさが良かったのです。
織田信長の場合、武田信玄の場合・・・とお話が進みます。一時代前の「キリング・センス」のようなギャグマンガになっていました。
  

 そして「味いちもんめ」の倉田よしみが、グルメな「水戸黄門〜食いしん坊漫遊記〜」を描いています。水戸黄門がグルメだったのは事実のようですが(ラーメンを食べたという記録があります)、その要素にお馴染みの漫遊記の要素を絡めたような作りになっています。「風車の弥七」も登場しますが、「うっかり八兵衛」は登場しません。思うに、水戸のご老公自身が「うっかり八平衛」の役もかねているからでしょう。


 それにしても、「時代劇」にテーマを絞り込み、そこそこ売れるようにしたのは、リイド社の先見の明ですね。案外、「隠れ時代劇ファン」は多いのかも知れません。戦国の3英傑――織田信長豊臣秀吉徳川家康などを中心にして、歴史ファンの想像の翼を広げさせてくれる試み、大賛成です。がんばれ、リイド社


今日のひと言:以前も書きましたが、NHK大河ドラマで「坂の上の雲」を取り上げるのなら、日露戦争の必要物資だった銅・・・・足尾銅山足尾鉱毒事件も取り上げてもらえたらいいのに、と思います。田中正造をね。