虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

 「悪人」のスーパーインポーズ


以前、テレビ朝日のお昼の時代劇「三匹が斬る!」を見ていたら、「悪党」が陰謀を図っている折に、「悪党」とスーパーインポーズされて、笑った、笑った。あたかも現在写っている「悪人」に「悪」のレッテルを貼り付けているように見えたのです。


 日本国民は、江戸時代以前からか、「勧善懲悪」の思想に染まってましたからねえ。

ただ、最近のおじいさん、おばあさんは格別です。午後4時に、TBSで再放映されている「水戸黄門」を見ることだけが、彼(あるいは彼女)にとって生きがいだという老人が多いのです。「勧善懲悪」「因果応報」「予定調和」。もしなにかの都合で「水戸黄門」を放映しなければ、「何時(いつ)死ぬかわからんのだから、放送してくれ」という抗議のTEL、あるいは投書が殺到するらしいのですから、すごいものです。
 まあ、「水戸黄門」に出て来る悪党は「代官」「商人」と決まっていますが、善人、悪人の区別もつかない人には、はっきりスーパーインポーズを出してあげるのもいいかも知れません。


 若者の間では、このような「時代劇」を客観的に見る「覚めた視線」があります。
ほりのぶゆき」の「江戸むらさき特急」という4コママンガでは、この悪(悪人)について、正義のヒーローが「この“悪”はオレのものだ」と取り合うシーンが出てきます。「悪」という抽象概念を具現化・擬人化しているわけです。「ほりのぶゆき」の視点は、一度時代劇に夢中になったことはあるけれども、一旦引いて、覚めた目で時代劇を分析しているように見えます。


 ただ、現実社会では、「善」と「悪」の区別は難しいものです。「絶対善」はなく、「絶対悪」もあり得ません。国際社会を見回しても、アメリカ、ロシア、中国などの大国が「善悪」関係なく活動しています。このような場で、「時代劇」の世界を期待するのは不可能であり、有害です。善も悪もないのです。あるのは「非情な駆け引き」です。
 だから、本編の最初に書いた「スーパーインポーズ」は、老人にとって有害だと思います。やらないほうがいいし、できれば「水戸黄門」を見ている暇があるなら、ラジオのロシア語講座でも聞くのがいいのです。



今日のひと言:時代劇と言えば、民放のやる「勧善懲悪」ものよりNHK大河ドラマのほうがスグレていますが、最近は「功名が辻」とか「篤姫」とかの、主役が狂言回し的な役割を演じるドラマが多くなっていて、それほどスグレていないのが実情です。以下を参照してください。



http://d.hatena.ne.jp/iirei/20060930


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江戸むらさき特急 1 (ビッグコミックススペシャル)

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